現実.98.2
タンクに水を容れるのかと思ってたら、トニがゾンビに近づいた。それで俺はトニの言った意味が分かった。俺達の摂取。食事の事。
俺はトニ達がどうやって摂取するか興味が湧いた。
[志織に教わらなかったのかよ]
と言いながらも説明してくれる。
トニはゾンビの両肩を掴み肩を外した。
[まず血を出さないように両腕を使えなくする。そして首筋から噛みちぎる。脳味噌は容れなくていい。容れるのは血液と骨髄。ある程度の肉と骨]
食事の事を俺は摂取と言ってたが、トニは容れると言った。パルは補給と言っていた。
トニは後ろから首筋にかじりつく。そして血を飲む。
[背骨も噛みちぎり、骨髄の中の血を容れる]
口から血をボタボタと垂れ流しながら言う。
噛んだ箇所からゴクゴクと血液や髄液を呑んだ後、頭をネジ千切り、無造作に食べ始める。
[アバラや鎖骨は食べなくてもいい。背骨は食う。心臓は…食っといた方がいい。内臓は要らない]
バリボリと骨を噛み砕き肉を引きちぎる様は、ケモノのようだった。
途中で骨や異物をブッと吐き出す。
硬いスイカを食べてるようにも錯覚する。
パルも似た感じだった。
二人とも口から胸元は血まみれ。
俺には慣れた光景。
黄色い脂肪の色も、ドス黒い血液も白い骨も。
だいたい心臓下辺りまで摂取し、残りは地面に放った。
[チョコが食いたいね]
真っ赤になってる口の中を見せながらパレットである黒人のトニが笑う。
人間が見たらおぞましく、嫌悪を通り越し畏怖を感じるだろう。
川の水を飲みに来たのか、豚を見つける。パルが石を投げて殺す。即座に首を切り落とし解体する。解体と言っても大雑把に胸元から腹の肉を切り落とし肉の塊を取っただけ。
志織の食料。
この暑さだと保存が効かない。
パルも既に血まみれ。
四人、血まみれ。足下には四体の喰われたゾンビ。人間の形をしていた肉の塊。そして流れてく豚の死体。
[身体洗って行こうぜ]
トニが言う。早く洗わないと血液がなかなか落ちなくなる。服も取り替える。
上半身裸で薄青いカーテンをシャツ代わりに羽織る。
パルはアロハシャツを着た。
船に戻るとパルのパペットが焚き火をしていて、本体のパルが持ってきた豚肉を細かく切り焼き始めた。




