現実.96
俺はあいまいにうなづいて笑った。
俺の安易な思い付きにトニは気づいてた。トニは可能と思ってる。単なる思い付きの可能性が高くなる。
一年後にゾンビが消え去り審判の日。それが終わったら人間の世界に戻る。復興は早くて何年後だろうか?多分、百年も経てば元に戻るだろう。
その時、俺はどう生きればいいか?
俺やポピュレーターは人間の血と肉が必要。俺は国に俺の身体を提供する事に決めた。きっと人間は人間の為だけに都合良く俺を利用するだろう。そう俺が仕向ける。その利権で国を争わせる。
そして地球の危機を起こせばいい。
歴史は繰り返してる。繰り返すはずだ。ならなかったら俺が無理やり起こす。
そしたらまた志織はAZの元に還る前にまたポピュレーターになる。俺の役目が出来る。
役目が無ければ自分で作ればいいだけの話だ。
もちろん、それが成るか成らないかは分からない。俺は言葉に出さなかった。パルに気付かれたという事は志織も気付いてる。だが志織はそれに反対しなかった。
反対しない。それで充分だ。
一日足らずで充分な食料と生活必需品をかき集めた。人数が多いと早い。
真夜中にヘリコプターを出す。海上に出て沖縄に向かう。
ずっと見たかった空からの景色。
オーロラの光で海はキラキラと反射して分かるのだが陸は恐ろしい程、暗闇だった。
そこだけ深淵。まるで切り取ったみたいに深黒の世界。灯りが一つとしてない。
本当に人類は復興出来るのか?
そんな事を考えながらも真っ黒闇な景色に見入る。
少し進むと灯りがチラホラ見えたが、それは火事による火の明かりだと分かる。
復興に百年では足りないかもしれない。
やはりパーティクルを回収した方がいいのではないか。
時間はたくさんある。だが答えが出なければ時間はあっても無いと同じ。
ヘリコプターの灯りは最小限に消してある。だが音は鳴り響く。人間が見たら希望の音に聞こえるだろう。他のポピュレーターが聞いたらどう思うのだろう。
日本は他の国よりも危険性が低いと志織が言っていた。
このまま隠れて生き延びれるのか?
宮古島にはゾンビがいるのか?居ないと沖縄へ摂取しに行かないとならない。
燃料はあるのだろうか?
あらゆる疑問が思い浮かぶ。
だが全てなんとかなると思ってはいる。
志織と二人だけではない。トニとパルがいる。
今までとは違いかなり楽になるのは間違いない。




