現実.88
俺はまともに体当たりをくらった。黒人の頭が顎に当たり顎が外れ、肋骨にヒビが入った。折れたかもしれない。
掴まれそうになるのをなんとかかわす。
上半身がおぼつかない。
掴まえに来る黒人の膝を蹴りながら後ろに下がる。間が空く。黒人はジリジリとつめよる。肋骨と顎を押さえる。そんな事をしても早くは治らないが、意識しないと動きが鈍る。
黒人が蹴る。俺はジャンプし避ける。黒人は蹴りながらも、空中に避けた俺の胸元を掴もうとする。俺は身体を反るがシャツを掴まれ、そのまま引き寄せられ思い切り投げられる。
背中を地面に叩きつかれる前に身体を反転させ、両手両足で衝撃を分散させる。
黒人が頭めがけて蹴り降ろすのをよけて、俺はその足を掴み体重をかけて折りにかかる。
黒人が拳を振り下ろす。俺の背中に強い衝撃。
その衝撃も利用して黒人の足を折った。
転がった俺の上に乗ろうとする黒人を足で蹴り再び離れる。半歩だけ下がる。離れるフリをして黒人に勢いをつけて飛びかかり背後を取る。俺は首を折ろうと思い、羽交い締めにした。黒人は立ち上がり俺を後ろにぶつけようとするが、足が折れてるために転ぶ。倒れる最中に目潰しをくらい視界が見えなくなった。俺は両腕の力を込める。黒人は頭をわし掴み潰しにかかる。意識が遠のく。が黒人の首の力が抜けてくのも分かる。頭の圧力が和らぐ。もう少し。
[そこまで]
志織の声で、俺は力を抜く。危うく黒人の首を折るところだった。もしくは俺の頭が砕けてた。
[おい、サードアイへの攻撃は禁止だったろ]
[トニだって頭潰そうとしたじゃない]
志織が言い返す。
俺は暗闇のまま立った。黒人が立った音が聞こえる。
[おい。もし背後を取れたら首を絞めるのではなく、嚙みつけ]
トニは俺に言った。そうか、噛みつくのも出来たんだった。
[強ぇじゃねえかよ]
トニが俺に言った。
[いや、トニ、あんた弱くない?]
志織が答えた。
[どうせ道具で戦うだろうさ。身体は頑丈な方がいい]
トニは言い訳めいた言葉を口にした。
俺は何も見えないまま、志織達の会話を聞いていた。




