現実.87
トニは白い黒人を操っている。
ポピュレーターの語源は分からないが、パペットは確か操り人形の英語だと思う。
[小説は実話だったんだ]
俺は実物を初めて見てやっと実感した。
[半分ね]
志織は屈託無く言った。
[どう説明したらいいかしら]
志織はトニに聞いた。
[左手と右手を無意識に動かせるだろ?そんな感じで自分の身体を動かしながらこれも動かせるんだよ]
トニの説明。
[余計分からなくなる説明しないでよ。ポピュレーターはもう一つの肉体を動かせるのよ]
志織の説明。
[まぁ色々あるのよ。とにかく、ヒロは単体。私は操れない]
志織はトニに言った。
[ウソだ。操れるはずだ]
トニの言葉に志織は目を伏せる。
[操りたくないのよ]
目を開けて志織は言った。
[なんで?]
トニの言葉。
[んー。愛着が湧いたから?]
志織は笑って言った。俺には照れ笑いに見えた。俺は嬉しくなる。
[ふーん。でも俺に教える事なんかないよ。操り方は分かるけどな]
アロハのトニが言い、黒人のトニが近寄る。
[俺はゲーマーだったんだ。対戦格闘ゲームが好きだし、パペットを操る事にも対応が効く。だからかなり強いんだ。バトルでは負けねぇ。それにこの身体は強いし、壊れにくいんだ]
[ちょっと戦ってみるかい?ただしサードアイへの攻撃は無しだぜ]
[サードアイって後頭部のここに松果体という脳の一部があって、脊髄と繋がってる部分の辺りよ]
志織が説明し後頭部を指で指す。
[道具もありで?]
俺は聞く。
[なんでもあり。サードアイの攻撃だけ禁止。いいか、本気でやれよ。俺と組むならせめて俺と同じ位の強さがないと安心できやしねぇ。はい、スタート]
とアロハのトニが言った瞬間、パペットの黒人のトニが体当たりをかましてきた。




