志織の小説.16
奥の方にエイが立っていた。
前に見た時より更に重厚そうな雰囲気を身にまとってる。一目見て巨大なミサイルを見上げてるような攻撃力を感じる。
先に進んでいたトニとダビまでもが、エイの隣に立つ。
[裏切ったのか?]パルの言葉に[悪いな]とトニが真顔で言った。
ポピュレーターを操るのは接触しない限りカーリーでも不可能。つまりダビがトニを操った。エイの為に。
[要件はなんだ?]
私は言う。もし私達のパーティクルを奪うのならとっくにしてるし、私達は拠点に入った時点で蒸散してる。その力はエイにある。
[その男をよこせ]
エイはヒロを見て言う。
[絶対に断る]私は即答する。
[もう必要なかろう。後腐れないようにパーティクルと交換してやろう]
[絶対に断る]私は強く言う。目的は私達のパーティクルではなくヒロと分かる。だが何故ヒロなのか?
[なんでだ?ただのパペットだ。貴方が固執する必要はないはずだ]
私は言いながら考える。ヒロに何かあるはずだ。エイの欲しがる何かが。パルに気配を送る。時間稼ぎをしてくれ。と。
[俺のでどうだ?]
パルが私の意図に気付いて言う。パルのパペットが一歩前に出る。
パペットが壊されても本体のポピュレーターは何も変わらない。
ただ予備の身体が無くなるだけ。
[ダメだ。その男をよこせ。断るなら殺すなんて甘い事はしないぞ。閉じ込める]
私達ポピュレーターは、タールコールやコンクリートに埋められるのが一番困る。パーティクルが全て無くなるまで動けない。AZと同じようにただ考えるだけしかなくなる。眠る事も出来ない。何百年もそのまま。
[なんで俺のはダメなんだよ]
パルが食い下がるが無視される。
[その男をよこすのだ。お前に価値は分かるまい]
もう少し考えを練りたかったが仕方ない。私は全神経を集中させる。
話し方から言い回し。エイとの会話の間の取り方すら気をつける。静かに息を吐いてから言った。
[分かるわ。でも渡したら貴方は終わり]
下から覗き込むように言った。
[何故だ?]
[何故かしらね。でも私には分かるもの。絶対に貴方はおしまい。貴方はアズィの元へ還る事が決定するわ]
上から落とすように言う。
[何故だ?]
間を空けずに言った。
[私、違う人と取り引きしたからよ]
[誰とだ]
私は一つ息を吸ってから言う。ここが勝負どころだ。
[バイよ。貴方、昔、バイにちょっかい出した事があるでしょ。かなり根に持ってるわ]
[何故、私達が飛行機に乗っていたか分かる?]
私は言葉をたたみ掛ける。ダビが[嘘だ]とエイに言う。が、エイが黙る。
[ヒロは渡せないわ。その代わり一緒にバイを倒すのを手伝ってあげるわ]
私は言った。最初の爆弾を落とす。
[お前がバイを倒せるものか]
エイはせせら笑って言った。
[あら、なんで分かるのかしら?なんでバイが私を襲わずに取り引きしたか分かる?私が力を持ってるからよ。それでも私だけじゃバイは倒せない。貴方が加わるなら…ひょっとして]
私は自信満々で笑う。倒す秘策があると思わせる。
[私としてはバイだろうがカニだろうがエイだろうが、構わないのよ。でも貴方だけは強引だから考えるわね]
[望みはなんだ?]
[ポピュレーターなら誰もが望む大量のパーティクルよ]
私は腕を組み言った。この間で決まる。
深く考えさせず、かと言って浅い考えを持たせてもダメ。




