志織の小説.15
結局エイを倒す話はウヤムヤになり飛行機でインドへ向かう。
向かう途中にトニが運転したいと、言い出しパルからトニへ変わる。
しばらくしダビが行き先が違う事に気付く。
操縦しているトニの様子がおかしい。
トニの目や挙動からトニ自体の意思が見えない。うつろだ。誰かに操られてる。
[エイだ]
ダニも気付いたようで言った。
ヒロ以外が座席から立ち上がる。
まさか?と思いつつも、エイにいつ気付かれた?と記憶から違和感を探し出す。
[お前らに話がある]
トニが言った。声がいつものトニの口調ではなかった。
話しかけるがらトニは一言も返さない。
陝西省西安の驪山で飛行機が降りた。エイの拠点地。
物凄いパーティクルがこの辺りを渦巻いている。
[この量はすげーな]
パルが周りを見ながら言う。
私はダビに、逃げよう。と目で訴える。
[攻撃的でないから様子見だな。それにトニをこのまま置いてはいけない]
ダビは言う。
今は観光の名所になってる施設。地下墓所の奥の方にトニが躊躇なく進む。
以前は周りに何千体もの兵馬俑と呼ばれる土人形があった。だが、そこには現在の人間が並んでいる。それも何千人も。全ての人間はパーティクルで包んである。多分、この地下にもたくさん集めてるはずだ。
[エイの保存用だろう]
ダビが正解を口にした。
[こんなにパーティクルを閉じ込めておけるなんて]
パルが驚いて言う。
誰も死んではいない。自然死したわけではなく、エイに生かされている。この人間のパーティクルはポピュレーターにしか回収出来ない。
ここはエイのパーティクル保存用の場所。エイ以外誰も来れない。エイに襲われるので近付く事すら出来ない。
私も人間にパーティクルを保存した事がある。が、数体だけでも蓄えた大量のパーティクルを使う。効率がすこぶる悪い。
指令が発動された時に各々が持っていたパーティクルは全てリセットされる。だがリセットされない違う場所にパーティクルを保存しとけば。
カニもバイも同じ事をしてカーリーになった。それは桁違いのパーティクルを持っているカーリーにしか出来ない。




