志織の小説.14
ヒロがそこそこ強くなった頃に、
[秦の始皇帝を倒そうよ]
とトニが静かに言った。
[エイか。絶望的に無理だろ?]
パルが反対する。
ヒロが私を見たので説明する。
[莫大な量のパーティクルを持ってるポピュレーターはカーリーと言うのよ。カーリーで有名なのは、マヤ文明の王ウキト。それからアステカ、インカの王達を操っていたバイ。エジプト時代のファラオやクレオバトラを操っていたカニ。そして秦の始皇帝を操っていたエイ。この三人がポピュレーターなら誰もが知る有名なカーリー。生贄を求めてた時代はカーリー達の全盛期だったの]
[他にも居るの?]
ヒロが尋ねる。
[居るけど表には全く出てこないな。名前すら分からん。ドラキュラや天狗とは呼ばれてるのは、俺達だけど]
トニが答える。
[ポピュレーターならたくさんいるわ。人間が知らないだけで]
[エイなら倒せそうじゃね?]
トニがまだ言う。
[タゥオーが居ても無理だな]
ダビが答える。
[タゥオーってそんなに強いの?]
ヒロが口を開く。
[はるか昔から居る中国暗殺の元祖よ]
ダビが答えた。
[ゾンビじゃなかったんだ]
ヒロが呟くように言う。
[ゾンビって死人が蘇った肉体の事だろ。AZはパーティクルで生きたまま脳を固める。死んだ人間は誰も動かせねぇよ]
トニが答えた。
[何の為に?]
ヒロが聞いた。
[そりゃAZにしか知らないよ。俺達も人間に聞きたい。人間は何の為に生きてるのかを。なっ、答えられないだろ]
[AZを見た事は?]
ヒロが質問していく。私に聞けばいいのに。と思う。私がずっと隠し事をしていたから信用してないのかも。少しだけ悲しくなる。
[心の中に色々な自分が居るのをヒロは分かるだろ。右に行くか左に行くか、まっすぐ行くかを悩む時。実はそれぞれが独立した自分なんだ。それを統一してるのが心。それがAZ。AZは見えないが確かに在る]
ダビの答え。
[言葉じゃ難しいな]
トニが言う。ヒロ以外は納得した顔。ヒロは分かってくれただろうか。
[これから人間はどうなるのですか?]
[審判の日が終わると、それぞれの国の権力者が国をまた復活させるさ。最初だけはAZが操るだろうが、また人間に任せる。だからまた人間が増えるだろう]
[AZは支配しないのですか?]
[アリの世界を人間が支配してるか?]
ダビが逆に質問した。それが答え。
私は黙ったまま。私に聞いてくれたらいいのに。
[地球は皆の物だ。地球の危機の時だけAZが動く]
[今まであったのですね]
[マヤ文明がそうだった。ただ、あれはバイが悪い。知識を教え過ぎた]
とダビ。
[ダビはカーリーですか?]
ダビは首を振りながら言った。
[なりたいとは思ってる]




