志織の小説.9
九州はほとんど回収し尽くされていた。
多分、ポピュレーターが大きなグループを組み、回収し回ったようだ。
人間はほとんどいない。ゾンビの数も明らかに少ない。でも暖かい地方だけあり、果物で食事は事足りた。
十年かかると見極めた私の予想は外れた。日本に思ってた以上にポピュレーターがいると考え直す。
また北の方へ戻るか、このまま中国の方に向かうか悩む。
九州にいたポピュレーターはきっと中国に向かってるはずだ。人口の一番多い国、中国。次にインド。桁が違う。中国、インド共に十三億人。その次はアメリカだが三億人しか居ない。
九州で拭き残した水滴のような少ないパーティクルを回収する日々。
九州から沖縄へ渡る新港に着く。
このまま日本にとどまりヒロと過ごす事でも私は構わない。だがヒロは嫌がるだろう。
今までヒロが色々質問をしてくるが、ヒロが避けてる質問を私から言うべきなのだろうか。
[パーティクルを全て回収した後の事を知りたくない?]
私は聞いた。ヒロは無言だったが、拒否もしなかった。私は口を開いた。
[私はヒロとずっと居たい。何千年も何万年も。その術は知っている]
ヒロは私を見たまま続きを待ってる。
[それにはたくさんのパーティクルを回収しなくてはならないの。今の私だと多分二、三百年は身体は持つ。でもその後はAZの元に還る]
[AZに還る事は死ぬ事ではないのよ。ただ意識が無くなるだけ。ヒロと一緒に眠りについて目覚めたら何百年か何千年か経ってたと思うだけ。感覚は一日寝て起きたような感じ。少しも長く感じないわ]
[ずっとこのままでいたいなら?]
ヒロは聞く。もちろん私はそれを言うつもり。
[もしお互いの意識を持ったままを維持するには、パーティクルをたくさん回収すればいい。それには大陸に向かうしかないわ]
[行こう]
ヒロは即答した。
[何百年も意識を保ったまま生きるのは辛いわ。でも…ヒロと一緒なら]
そう、独りは辛い。辛かった。たとえ人間と一緒に暮らしても百年後にはまた独り。でもヒロとなら。
[俺は志織をずっと守る。それは俺が志織と居たいからだ]
私の気持ちは決意に変わった。
ヒロといつまでも生き抜く。




