志織の小説.8
四国に渡る前に、私の知らないポピュレーターがいた。パペットは狂っていた。
私とヒロに襲いかかる。ヒロにとっては初めての実戦。
ヒロは相手の人間離れしたスピードに最初は戸惑い防戦一方だったが、なんとか倒せた。
トドメを刺す時にヒロが躊躇する。それが命取りになる。ヒロの頭が潰れた。
てっきり私に襲いかかるものだと思っていた私は遅れた。
ヒロの意識がなくなったので、私はヒロと繋がる。私はソイツの頭を潰し返した。
ヒロの霧散してくパーティクルを回収する。が既に消散して集めた量ではこの身体を操るには足りない。
物凄く悩んだが、私のパーティクルを加える。
ヒロの頭の中でヒロに会う。
[分かる?]
[ここは?]
[ヒロと私の世界よ]
[どうなった?]
[ヒロは私を助けてくれた。アイツは還っていったわ]
[還るって?]
[AZのところよ。私もヒロも今の男もAZも全ては一つなのよ]
[ヨシオがいるよ。父さんも母さんも]
[えぇ、皆一つなの。この感覚を忘れないで]
[離れても一緒なんだ]
私はうなづく。
[ヒロは私の物でもあるし、私はヒロの物でもあるのよ。AZもパルもトニも。人間もゾンビも同じ。全ては一つなのよ]
[さぁ離れるわね。しっかり気を張っててね]
視野が明るくなり私の目の前にヒロがひざまづいていた。
頭も血まみれだが修復され元に戻っていっている。
ヒロが立ち上がり私を見る。
[俺の意識は?]
[しっかりしてるわ]
[違う。俺の考えや俺の想いは?]
ヒロは少し混乱していた。自我が出ている。
[もちろん、今思ってる事はヒロの考えよ。もし私やAZの考えなら、そんな事は決して言わないわ]
[ヒロはしっかりと自分の考えで行動しているのよ。もしヒロが嫌なら私を捨ててもいいのよ]
[イヤだ]
[その否定は誰の思い?私?]
[違う。俺がイヤだ]
[ほら、ちゃんと自分の思考じゃない]
そう、この問題は誰もが通る道。
操られてる。一度疑うと、自分を見失う。必要以上に疑心暗鬼になり、自我が崩壊する。言いなりの方が楽なので、自分を放棄してしまう。
[ヒロは何をしたい?]
[志織を守る]
[それは私が命令してるの?]
[違う。俺が守りたい]
このヒロの気持ち、態度、想いが私にはとても嬉しい。
私は血まみれのヒロを抱きしめた。




