小説.73
プロパンガスを乗せる荷車を見つけた頃、俺は穴に落ちた。人間が作った落とし穴に。
ご丁寧に下にピアノ線を張り巡らせた仕掛けがあり、俺の下半身は身体の重みで二つに裂けた。
血を急激に失うと意識が遠のくのは分かっていた。急いでよじ登ろうにも、足に杭が刺さって足の力が入らない。
志織がロープを降ろす。だが志織には俺を支えられない。
大きなナイフが落ちて俺の肩に刺さる。
[……切って]と志織。最後の方しか聞き取れないが瞬時に理解する。
胴体を切って引っ張りあげてもらう。
[首から切って]と今度ははっきりと聞こえた。
俺の腹から腸や内蔵が溢れてる。顔にロープを巻きつけ、口に咥える。しばし躊躇するも、思い切り首を切る。
意識が遠のくのが分かる。骨を切らないと頭は取れない。
骨が切れたか分からないうちに、俺の意識はなくなった。
気がついた時には、俺は何かを喰べていた。すぐ生き返った事に気付く。
俺は志織がいないと生きていけないのだ。と思った。
荷物は全て取られ、俺の頭だけを持って逃げたと志織は言った。
また一からやり直し。だがこれが当たり前の日常なのだ。
意識がない時は、本当に何にも意識がない。天国とか走馬灯とか全くない。
最後に思ったのは、骨が切れたかどうかの心配だけだった。
人間が人間を襲うようになった。それはつまり食料が少なくなってる事。




