現実.68
満月の夜の遠征探索。気温も低く風が冷たくなってるらしい。
けっこう歩いていたのだが、志織も男も上着を羽織る。汗をかいていない。
[やっぱり鈍ってるわぁ]
と志織は元気に言う。男達は志織に話したりする。が、俺には必要な事以外は話かけてこない。
タオの居る町よりかは、はるかに小さな町で捜す事にする。
築は古いがブロック塀で囲まれた木造の寮みたいな家を拠点とし物資の散策。
発電機に無線機。重いのであまり遠出は出来ない。
俺だけが外に出て、電柱に登る。さすがに高くて怖い。
辺りを見渡す。ゾンビや人間がどれくらい居るのかを捜す。
そこそこ居るが、想定範囲内。
電線を走って渡る?とても出来ない。どれだけ練習したら出来るのか?
今の身体で高いマンションをベランダ伝いで登る事は出来る…はず。ベランダから中に入れるのは利便がいい。
明るくなれば屋根から屋根へも移動出来る。
走りまわり、だいたいの店舗を把握する。
やはりマンションに人間が住んでるのだろう。マンション周りにゾンビが多い。
拠点に戻り男二人と志織を残し、ヨウジ君と二人で電気屋に行く。
発電機はあるが無線機はない。やはり特殊な機械なので置いてはいない。
携帯電話、使い捨て充電器、バッテリー。片っ端からバッグに詰める。乾電池は全くなかった。
ヨウジ君はノートパソコンを箱から開けている。どうやら中のバッテリーが使えるらしい。俺にはよく分からない。
適度に他の店舗も散策をする。民家は全員で探索するつもりだった。
食料が無い。あってもカビが生えたり食べられない。
かろうじて持っていけるのは、芽の出たジャガイモ。種芋になるらしい。
家庭菜園売り場も視野に入れる。多分、種とかはあるはずだ。三浦家なら育てられる。
発電機は外に出して、車の間に隠す。持ち帰るかは後で判断する。
二時間で夜が明ける。俺達は拠点に戻る。
戻ると志織が外に出ていた。何かあったのだ。
[どうした?]俺は慌てて質問する。
[ヨシさんとリョウさんが殺された]
志織は言った。落ち着いている。
[志織は大丈夫?怪我は?]
志織は首を振る。急いで部屋に戻る。二人が倒れてる。だが血は見当たらない。外傷も見当たらない。苦しんだ顔でもなく、寝ているようにみえる。
[何があった?]俺は聞く。
[突然、倒れたのよ。そして動かなくなったの]
触ってみる。まだ硬直してない。体温は分からない。ヨウジ君に触ってみるようにお願いする。彼は冷たい。と答えた。イヤな予感がする。
[とりあえず、ここを出よう]俺は言った。
またゾンビの発生かもしれない。
荷物を急いで積みながら、志織に詳しく聞くも、突然倒れた以外は分からないとの事。
あと一時間で夜明け。人気のない山道むで小走りで急ぐ。
発電機は置いていく。仕方ない。
気配を拡げるが落ち着かないせいで、全く分からない。
早足になる気持ちを抑える為に志織を前に歩かす。
ゾンビの動向は変わらない。人の気配は見当たらない。人間を一人でも見つけたかったが捜す余裕はない。
山道に入る時にゾンビが六体ついてくる。志織とヨウジ君目当てだ。
突然死ぬ。今まであり得ない。あの後ゾンビになるのだろうか?
血が出てるワケでもなく首が折れた形跡もなかった。
何故、志織だけ無事だったのか?
志織は、殺されたと言った。誰に?




