現実67
だいたい月に一度、物資を調達しに行くと聞いた。
ツトムさん達の日常はゆるく、男達は農作業と動物の罠を仕掛けに。魚を獲り、山野草を採りに。
子供達は毎日が夏休みだ。女性達は採ってきた山野草を乾燥させたり、魚を干したり保存食作り。そして農作業。
ゾンビもただ置いてるだけで、見かけだおしになっている。
凄く平穏だが生きるだけの毎日。
酒を呑みたいとか退屈とかの贅沢は思ってるだろうが、誰も口にしない。
かと言って誰も町に行くのは行きたがらない。
ゾンビや人間も怖いが、破傷風の怪我や病気の痛みを恐れてる。
信長の鬱屈する気持ちがよく分かる。
変わりばえの無い日々。質素な食事。何が楽しくて生きてるのか?信長はずっと思っていたのだろう。
ただ生き延びる。平和だった時代しか知らない人間は辛いかもしれない。婆さん達だけは毎日楽しげ。多分、戦後を体験したからだ。
毎日、農作業と子供の面倒。家族や親戚とのお喋り。充分満足している。
当たり前の価値観が違う。
俺はこれが毎日続いても大丈夫。志織の安全が高い。
それにやる事もある。運動能力アップの練習。魚を獲る練習も始めた。泳いでる魚めがけて、小石を指で弾く。滅多に当たらない。命中精度が上がれば拳銃まではいかないが、よい武器になる。
道路から見える川で練習し、気配を広げる意識もする。
ミズホさんもヨウジ君もあれから、一回も来ない。
志織だけが食事を持ってくる。
ツトムさん達が出掛ける時に会うくらいだ。
多分、俺がゾンビの身体だとツトムさんは知っている。知っていて知らないフリをしてくれている。
そもそもバレないだろう。と思う事が浅はかだったのだ。
気がつけば一月近く経った。
その間、人間もゾンビも全く見かけない。
代わり映えのない毎日だったが、魚に小石を投げるのが命中し始め、木から木への跳び移りもなかなか上手くなった。
コンビニのゾンビがゼロになり、ゾンビ
の捕獲に町の近くまで男達と行ったくらいだ。
遠征する男達はこないだと同じ二人で助かった。
俺を恐れたりはしないが、距離を縮めようと思ってない態度も、俺は逆にありがたかった。
次の探索の日が決まる。
ヨウジ君とこないだの男二人。いつもの拠点の町から、タオの反対側の方に出向く。
食料と燃料はもちろん、冬に向けての服や布団類。あと出来れば本、教科書。と捜す物が変わる。
志織が行きたがる。危険だし荷物もそんなに運べないし。と俺もツトムさんも反対したが押し通される。多分、退屈してるのだろう。
ミズホさんは行きたがらないらしい。
ずっと会ってはいない。




