現実.56
一階。信長がどんどん進むので、目の前は暗い。三人とも懐中電灯を点ける。
ゾンビの発光はない。信長がガラガラと音を立てて探す。
真っ暗で危ない。一階には何もない。二階に行く。ミズホさんとヨウジ君は黙って従ってくれる。
二階に行く階段の途中、物で通らなくしてある。
人間が住んでいたか、まだ住んでるか。
バリケードをどかして通れるようにはなっていない。ここからは通れない。他の場所。多分、屋上か二階や三階の窓からでも出入りしてるのだろう。
他にも店舗はある。ここは諦めようとしたが信長が来て、バリケードの物をどんどんどかしていく。
[他の所を探そう]
俺は行った。
[バカやろう。こういう所にあるんだろうが]
信長は言いながら乱暴に物をどかしていく。
[ほら、見てないで手伝え。何の為に来てるんだ?]
ミズホさんとヨウジ君に信長は言う。
信長はもう半分位どかし進んでる。
仕方ない。俺はミズホさん達にうなづく。
信長がどかした物を俺達は下にどかし始める。
二階に発光体はない。信長以外の足跡は付いている。だが何もめぼしいのは無かった。三階の階段はバリケードが無い。信長はかまわず進む。
ゾンビが居ないのが分かってるからだ。
いるとしたら人間。人間相手なら余裕と思ってる。
三階も何も無かった。
俺はトイレや、どかした跡とかを見る。大きな荷物棚の後ろとかに隠す場合が多い。
壁を壊し中に隠してポスターを貼ったり。
そんな可能性のある場所を探す。
不自然な場所に机。机の上にかすかに足跡。
ピンとくる。屋根裏に何かある。
俺は机の上に立つ。天井の壁を押す。開いた。
懐中電灯を照らす。何箱かの段ボール。多分中身が入ってるはず。
俺は段ボールの一つを取る。食料だった。ほとんどがカップ麺。ソーメンやスパゲティの乾麺。信長が、やるじゃねぇか。と褒める。
全部で五箱。充分な収穫だ。
見張りの男も呼び、箱のまま荷台に乗せる。
今はこれだけの量の食料を一回で見つけるのは難しい。
誰もが上機嫌。夜明けまで二時間。俺は宿探しを始める。
荷物を持ってうろつきたくない。
信長が[上がって正解だろ]と自慢する。
信長が本屋に入る。多分、暇つぶしの本を物色するのだろう。
本屋を拠点にしてもいいと思う。誰も奥まで入らない。本屋には食料はもちろん生活必需品は無いからだ。本棚も光隠しやバリケード代わりにちょうどいい。
俺と信長が見張る。他の四人は本を物色し始める。
信長は立ちながら本を読んでる。ヤクザのなんたら。という信長が選びそうな本だ。
俺は辺りを見渡す。ゾンビの発光しか居ない。人間は見当たらない。
他の人間は駅の方を物色してるのか?
物音がした。信長も気付き本から目を離す。
両方の道路から人間が現れた。十数人。どちら側からも同じ人数。
逃げ場所は小道があるが四人はまだ本屋の中。それにこの人数相手では逃げられない。
何個もの懐中電灯を向けられる。
俺は口笛を吹く。四人が戻って来る。
戻って来た時には囲まれた。三十人から四十人。




