現実.55
本当は俺が先頭に立ちたかったが、信長が先に進む。
ゾンビを押しどかし、時には頭を殴って進む。
押しどかしたゾンビは、俺が近づけば逃げるのだが、頭が曲がったり目が潰れたゾンビはその場に倒れる。倒れたゾンビは起き上がろうとあらゆる所を掴むので危ない。
同じ道だが信長の通った場所を通らないようにする。
それが信長の気に触ったらしく、片っ端からゾンビをドライバーで殴りまくる。
感染しちゃえばいいのに。とミズホさんは小さな声で悪態をつく。俺はうなづくだけ。でも信長みたいな人ほどヘマをしない。自然とコツを知っているのだ。
高い建物が見え始める。次の町に来た。
俺は、休憩がてら、望遠鏡で眺める。
高いビルの真ん中辺りにチラチラと灯り。懐中電灯。暗いから小さくても分かってしまう。皆にも見せる。
[決して、窓の方に灯りを向けないように]と注意を促す。
発光体は多い。この高台から俺が見ると、地上に星が散らばってる感じに見える。
けっこうな数。強い発光も、固まってる発光も多い。
ビルが多いほど人間も多いしゾンビも多い。そんな傾向だと思う。
リスクの高い割には収穫は少ないだろう。まだ夜明けまで数時間。
この町は回避しよう。と皆に言った。
信長は反対する。
[次の場所も回避するんか?]と。
それは行かないと分からない。と俺は答える。俺一人なら問題無いが、五人連れではとても守りきれない。
ゾンビだけならまだしも人間にも注意しなければならない。
そんな事を言ったが、ミズホさんも、人間なら大丈夫でしょ。と答えた。
歩き続けて、ただ歩くだけの時間に疲れてるのだ。
信長がニヤリと笑う。
[多数決にしようぜ]
こういう頭のキレはある。
多数決はヨウジ君と俺以外が手を挙げた。
[なら朝方まで探索し、この町で昼を過ごし帰ろう]
俺は言った。
[あの場所と、あの場所。あの場所以外を探索]
[なんでだよ]と信長。
[人間がいるから]
俺の答えに信長は珍しく黙ったまま。何かを考えてる。何を考えてるかまでは分からなかった。
既に何人か人間を見かけてる。若い男ばかり。ゾンビにも慣れてるようだ。だが他の人間のほとんどが単独行動。少しは安心出来る。
[こっちに商店街がある]
と信長が言い勝手に進む。どの人間も考える場所なので期待は出来ない。
それを言っても無駄だろう。
信長は相変わらず、見かけたゾンビをドライバーで殴り倒してる。それが唯一の救い。他の人間への牽制になってるはず。
商店街はゾンビが多い。ほとんどの店舗は入り口が壊されている。
三階建てのスーパー。ここ見ようぜ。と信長。
表に二人見張りを立ってもらう。ヨウジ君は怖がる。信長はサッサと店内に入って行く。店内は信長と俺とヨウジ君とミズホさんで物色し、他の二人に見張ってもらう。
懐中電灯をあまり点けないように注意する。




