小説.67
一生ゾンビのまま。暗い未来。そのイヤな気分を払拭させる為に、志織をホテルに残し、一冬を越せる量の食料を探しに行く。やる事、やるべき事はあるのだ。自分に言い聞かす。
一人なのと疲れが無いので行きは走りっぱなし。スピードに慣れないから走ることに集中する。他の事を考えなくて済む。
志織がいないので、遠慮せずゾンビの腕を引きちぎり喰う。俺は血まみれで走るゾンビ。
俺を見かけた人間は驚く。こんな素早いゾンビを見たら誰だって逃げ出す。
構わなかった。出来るだけ早く志織の元へ帰る。最優先事項。それにノンビリするとまた悲観な未来を想像してしまう。
もし探せなかったら、人間の貯めた食料を奪う事も考えていた。
そこまでの心配は大丈夫な位、食料は探せた。釣り道具もゴルフバッグに入れて持ち帰る。リュックにゴルフバッグ二つ。全てのポケットにも。これで充分。
志織と二日かけて辿り着いたホテルまで、俺一人だと八時間で行って探して戻ってこれる。
帰りにゾンビを引きずってきたので、一人ならもっと早く往復出来ただろう。
摂取も、志織が見てない所で裸になりゾンビを貪った。
歩いて十五分の所に川がある。魚もいそうだ。なるべく川下に進んで身体を洗う。
冬は快適だった。相変わらず栄養は偏ったが秋に果物ばかり食べていたから大丈夫だろう。と浅はかだが判断した。ダメでも食べ物はこれしかない。
ゾンビが集まらないか心配だったが、何故か大丈夫だった。色々と原因を考えたが分からないままだった。
雪も降り続き本格的な冬になるも、風呂を沸かし続け寒さは凌げた。使ってないテーブルやフスマ。机。燃やすのはたくさんある。
ビニールシートで覆うとスチームサウナにもなる。が志織はあまり利用しなかった。
ゾンビに水をかけて野外に放置すると一晩で凍りつく。
凍ったままのゾンビを喰べると汚れないのが嬉しかった。
汚れても裸で雪に埋まれば汚れは落ちる。
アカギレや凍傷にはなるみたいだが、一秒足らずで治っていく。
人間も来ない。ゾンビも増えない。近辺も探索し土地勘もできた。
欲しいのは明かり。電気だった。がそれは贅沢な部類。
ノンビリ平穏な冬を俺達は過ごした。
来年もこんな場所で過ごせる事が分かったので安心できた。
安心は退屈を産み、退屈は不安を呼ぶ。




