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小説.60

自転車も梅雨の雨と夏の太陽でサビだらけ。車やバイクの爆発音は聞かないが、炎天下の放置だから爆発する可能性もある。車内の使い捨てライターが爆発する事だってあるのだ。


ゾンビも怖いが、人間の造った便利器具も今や脅威になっている。


まだ一年も経っていないのに動かない車や冷凍庫がこんなになるとは。

なにもかも風化していく。アスファルトの道路がデコボコ。下から生えてくる草木のせい。車が通らないから伸び放題になっている。

人間の遺体が栄養になってるせいもありそう。

ゾンビのだす汚物も草木には関係なさそうだ。そこを苗床にし、伸びている雑草がある。


地球は誰のもの?と聞かれたら、ゾンビと草木のもの。と答えても納得できそう。それ位、人間は見かけない。


ノラ犬やノラ猫も見かけない。虫は見かける。遺体からハエがもっと発生してると思ったがそれほどでもない。


魚は分からない。川は沈んでる白骨が見えてたりするので近寄らない。


歩きながら、周りを観察する。それしかやる事がないからだ。気配を察知出来るように神経を張る練習をしてる。

夕暮れになる前に寝泊まりする場所を探す。そんな毎日が続く。


他の人間が俺達を見たらどう思うのだろうか?

一人は長ズボンに長袖、手袋にフルフェイスのヘルメットの男。もう一人はハーフパンツと大きなTシャツを着て、頭に大人用の大きな麦わら帽子をかぶった女の子。

その二人がゾンビの合間を縫うように歩き、後ろからゾンビがゾロゾロと付いてくる。


ゾンビがいるから、俺達は人間に見つかっても襲われない。


志織は後ろの付いてくるゾンビを見て言う。まるでゾンビの王様だね。と。

ゾンビは志織を襲おうとついてくるのだ。

命令を聞かない家来は要らない。と俺は返す。志織は笑う。笑ってくれる。


昼間まだ暑いはずなのに、文句を言わず歩き続ける。


どこかに落ち着きたいとは思うのだが、とりあえず関東に行こう。と志織は先を促す。

無理は絶対にしないで欲しい。俺はそれしか言えない。


夜歩いた事もあるが、人間が俺達を無視しない。荷物を襲おうとする。

幸いにも相手は一人だったから、なんとかなったものの。これが五人、十人で襲われたら無理。

だから暑くても昼間歩く事にしている。


毎夜、どこかしらで必ず人間の声が聞こえてくる。どれも喧嘩している。喧嘩というか殺し合いに近い奪い合い。痛がる声もたまに聞こえてくる。怪我の度合いは分からないが、長い間痛がっている声や助けを求める声を聞き続けた夜もあった。

朝には聞こえなくなったのはゾンビに喰われたからだと思う。


靴だけは、いい靴を見つけ次第取り替え履いた。衣服は使い捨て。燃えてない家に入れば間違いなくある。





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ゾンビサバイバル.番外編も書いてます。
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