プライド Side`吸収´の魔王
Side`吸収´の魔王
気持ちが悪い。
王を殺すためにわざわざここまできて、王の側近の振りをして、`キュー´とやらを見て思ったのがこれだ。
前、討伐に来た異世界人と、同じ様な魔力。
なのに何かが違う。気持ちが悪い。
この予感とも言える直感は、すぐに当たった。
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`キュー´とやらが、王の前で王宮の一部分を消して、辺りをギラついた目で見回し始めた。
このとき、我はキューとやらが我の正体に気付いていることを悟った。同時に逃げられないことも。
ならば、打ち砕くのみ。
魔王としてのプライドが、そう思わせた。
我の師匠、魔王のトップだった`魔´の魔王は、人類との共存を望んだ。
まあ、それを出来ずに寿命で死んだのだが。
師匠はプライドなど無かった。
それは配下が居なかったことから失望されていたことが伺える。
だが、我は勝つ!ここの王にも、異世界人にも!
「フフフ、ハァーッハッハッハッハッ!気付かれたようだな。そう、我は`吸収´の魔王。その名は……」
「せい、やっ!」
「ぐはぁぁ!お、おい、まだしゃべっている途中だろうが!」
「あぁ、死ななかったぁ。後ぉ、何回でぇ死ぬのかなぁ?
ふっ、たったぁ!」
「げふっ、ぐ、うぁぁ!さ、さすがだ。異世界人よ。魔王である我をここまで打ちのめすとはな。」
「まだまだ死なないでよねぇ?死なれちゃぁ困るもぉん。
はっ!たっ!」
「ちっ!たぁ!ふぅ、漸くこのスピードに慣れてきたか。避けられるようになったな。」
「へぇ。じゃあ、もっともッと遊ぼうじゃあないかぁ?」
「いや、ここでお前は終わりだ。我の本気、見せてやろう。《HPドレイン》!《MPドレイン》!」
「効きませんよぉ?たぁ!」
「ぐ、ごふっ!な、何故だ。何故効いていない!」
「簡単な事ですよぉ?僕が異世界だからです。」
「意味が解らん。がふっ!」
「うぅ~ん。やっぱ弱い……」
体が動かない。
我は死ぬのか。
逃げておれば、良かっ、た。
`吸収´の魔王はこの世を去った。
恵一は、無傷で魔王に勝った。
結局、恵一の徳である。