#01 始まりのサイト
放課後だった。
「人生攻略サイト!?」
「しっー!クラスの皆に聞こえちゃうでしょ!」
信じられないと言わんばかりに声を荒げてしまった私の口元を友達の真里が掌で押さえつけた。
「これクラスの皆に知られたら私自慢の秘密情報収集スキルに終止符打っちゃうの!もう大声出さない事。オッケー?」
私は手でオッケーの形を作ってサインを出し、真里もそれを見たと同時に掌を外してくれた。
私は少し深呼吸した後に、少し小声で真里に話しかけた。
「で、結局何なの。その人生攻略サイトって」
「その言葉通りらしいよ。人生を攻略するためのサイトなんだって。登録すれば自分に合った攻略ページが出てくるとかなんとか...」
記憶があやふやなのか、目を閉じて眉間にシワを寄せながら話している。
「そんなの絶対嘘だよ。人生なんて攻略できるもんじゃないし、そもそもその言い方だど調べてないでしょ」
「うん、調べてないよ」
おい。
「だって怖いじゃん!人生の攻略サイトだよ?なに起きるか分かんないじゃん」
「じゃー何で私なんかい話したの」
そう私が言い捨てると、真里が急に手を合わせて頭を下げてきた。
「そこで!暇な時に調べてきて欲しいのです!」
ほれ出たそこでお決まりのお願いしてくるパターン。
「嫌だよ面倒くさいし」
「そこを何とかお願いします!優しい舞様舞様」
こういうお願いをする時、いつも真里はこのポーズをとる。こうなると、了承しない限り絶対止めないのは長年の経験で十分承知だ。なので、私の選択肢は一つに限られていた。
「分かったから!調べてくるよ。だからそのポーズ止めて」
私が溜め息混じりに言った途端、真里は勢いよく顔を上げてきた。余程嬉しかったのか、顔に満面の笑みを浮かべていた。
「ホント!?有り難う!それじゃ私部活あるからもう行くね!お願い聞いてくれて有り難う!また明日」
真里はそういうと急いで教室を出て行った。そそっかしいな...いつもの事だけど。
「それじゃー私も帰りますか」
私は鞄を肩に掛けると、少しだけ急ぎ足で教室を出て行った。
「宿題終わったー!」
私は大きく背伸びをすると、勢いよく椅子の背もたれに寄っかかり、壁掛け時計に目を移した。意外にも時間がかからなかったのか、針は丁度十時を指していた。
「お風呂入ったし、歯も磨いたし...寝るのにはまだ早い気がするし...」
私は一人ただ何をするかに迷っていた。すると、ある一つの言葉が浮かんだ。
「人生攻略サイト...。暇だし調べてみるか」
机の上に有ったパソコンに手を伸ばし、勢いよく開いた。電源を付けたままだったのか、液晶画面が光っていた。
私はキーボードに手を置いて検索欄に早々と打ち込んでいく。
「よし、それじゃ検索っと」
検索の結果、意外にもそのサイトはすぐ見つかった。
少し恐怖も覚えつつも、私はそのサイトをクリックした。
すると、出て来たのはごく普通に見かけられるサイトが映し出されていた。
「なんだ...普通か」
私は少しながら安堵の表情を浮かべた。てっきりもっとドスの効いたサイトかと思っていた数分前の私が馬鹿らしく思えてきた。そんなことを思いつつ、私はサイトを下に下げてみた。一番下まで下ろすと、少し大きめに”新規登録”と書いてあるボタンがあった。
「あったあった。試しに登録してみよ。どうせまた普通のが出てくるし」
私はサイトを少し馬鹿にした後、迷わすボタンを押した。すると出て来たのは本当によく見る登録画面だったので、思わず「空気を読めこのサイト」と呟いてしまった。
私は早々と登録画面の空欄部分に個人情報を埋めていく。これもまた至って普通だったのだが、最後の空欄部分があまりにも難儀な質問に手が止まった。
「”このサイトをどのように活用したいですか”...って言われても...」
登録するだけして、後は放置しておく筈の私にはとてもじゃないが埋められない質問だった。
だが、よく見ると必須項目ではないことがわかった。
「それならこのまま登録するか」
私は登録ボタンを押した。
すると突如出て来た言葉に...私の時間が停止してしまった。
人生攻略サイトへようこそ
これから私はあなたに世界の現状についてお伝えします
何が起きたか最初は訳がわからなかった。
ただ、これだけは一瞬で理解してしまった。
私は何かまずい事に巻き込まれてしまった...と。