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テンプレなんぞクソくらえ!  作者: 夜城 桂月
第1章 邂逅編
9/29

第9話 ゴブリンの上位種

いつもの日課をやり手早く身支度を済ませ、早々にギルドに向かう。


早く出たつもりだったのだが、ギルド内は既に人で溢れかえっていた。



「うへえ……もうこんなになってんのかよ。出直そうかな」



受付には長い列が出来ており、掲示板の前には多くの人がいた。


俺はここで逃げたら永遠に依頼を報告できないと思い直し受付のエミリアの列に並んだ。ループって怖いよね。




20分くらい経っただろうか、そんなに経ってないだろうか、そんな時間に俺の番はきた。


「依頼の報告に来た」


俺は受付に座っているエミリアに向けてそう言ったが、何故かエミリアは少し不機嫌だ。


「あっ……。おはようございます、ジンさん。では、討伐証明部位とギルドカードを提示してください」


なんでそんな事務的な態度なんだ?少しの間だけだったがエミリアはもう少し気さくな感じだったと思うんだが…

とりあえず、言われた通りに討伐証明部位であるブラックウルフの毛皮とギルドカードをアイテムボックスから取り出してるようにみせかけながら、ストレージから取り出す。



「えっ?ジンさんそれってアイテムボックスですか?」


「ああ、そうだが…何かまずかったか?」


俺はまた何かやらかしたかと内心ひやひやしながら訊ねた。


「いえ、アイテムボックスは高いですから。迷宮の宝箱で自分で手に入れたなら分かりますが、かなり運が良くないと宝箱は見つかりませんからね。ジンさんって結構お金持ちなんですね」


「ああ、少しツテがあってな」


なんだそんなことか。まあ見かけによらず金持ちという点では間違ってないと思うぞ。なんたって億万長者だからな。


「あっ…そうですか。………はい、確認しました。これで依頼完了です。こちらが報酬になります」


エミリアはさっきまで昨日の雰囲気に戻っていたのだが、急に思い出したように事務的な態度に戻った。

俺は不思議に思ったが報酬である銀貨5枚を受け取り、聞きたかったことを聞いてみる。


「依頼では15匹だったがそれより多く討伐できたんだ。その素材は買い取って貰えないのか?」


俺は素材も買い取ってもらえるものだとばかり思っていたのが、何も言われずに終わったので聞いてみたのだ。



「……はぁ………。ジンさん昨日説明しましたよ。素材の買取などはギルドを一度出て、ギルドの裏に回ったところにある倉庫で素材の買取を行ってください」


「あ、ああ。そう言えばそうだったな。悪いな」


ごめん。その説明の時寝てたわ。

俺は受付を離れ一度ギルドを出る。ギルドを出て左手に通路があったことを思い出しそこから裏手に回る。

通路を奥に進むと木製のでっかい倉庫があり、倉庫の扉は開けっ放しになっていた。それはもうでっかい倉庫の扉を潜るとカウンターがあり、ギルド内より少ないが人がいた。


カウンターにはギルド職員と思われる人がギルドの制服の上からエプロンを付けており、手には手袋をしていた。

その職員に近づき声をかける。


「すまない、買取をしてもらいたいんだが…」


「はい、どちらのをですか?」


俺はアイテムボックス経由でブラックウルフの素材を残り全て取り出した。


「既に解体されてますね。それに解体がとても上手い…既に解体されたものなのでこれなら少し値段に色がつけられますよ」


「他にもあるのだがいいか?」


「はい、いいですよ」


了承を得ることができたので、ここに来る道中に買った魔物の素材を全て取り出した。


「えっ………ちょ、ちょっとお待ちください。今助っ人を呼んでくるので」


そう言ってギルド職員は2人の助っ人を呼んできた。査定が終わるまで時間がかかると言われたので、ギルドカードを見せ本人確認ができるようにしてから、先に依頼を受けてこようと思いギルドに戻った。




ギルド内はだいぶ人が減り、受付には数人しか並んでいなかった。


俺は掲示板を眺め依頼を選ぶ。

しばらくして、ゴブリンの森に生息するミートボア討伐依頼を受けることにした。


受付に行くともう人は居なく、ギルド内にいる冒険者は俺を含めて数人しかいなかった。



俺はエミリアのところにいき、依頼書とギルドカードを渡した。


「この依頼を受けたい」


「はい、少々お待ちください。………はい、受注完了しました」


そう言って事務的な台詞で営業スマイルをしてくるエミリアに聞いてみた。


「なあ、なんか怒ってないか?昨日より表情が硬いというかなんというか………」


俺がそう言うと思わぬところから返事が返ってきた。


「あー、この娘昨日ジンくんに無視されたって怒ってるんだよ。あっ、私はエミリアの同僚のレシアって言うの。よろしくね、ジンくん」


エミリアの隣に座っていた、エミリアと同い年くらいの黒髪を肩まで伸ばした人間族の美人の女性がそう声をかけてきた。


「ジンだ、よろしく頼む」


「ちょっと、レシア勝手なこと言わないでください!!」


レシアの言葉を受けエミリアは顔を真っ赤にして怒っている。


「だって事実じゃん、ジンくんと目が合ったのに無視された〜って泣きべそかいてたのはあんたでしょ!」


「なっ!?ちょっ!泣いてなんかないです!」


レシアとエミリアは言い争いを始めだした。周りを見るとギルド職員たちはまたかという風な顔をしている。いつもこうなのか。

とりあえずこの状況を納めるために声をかける。


「そうだったのか、エミリア。それは済まなかった。言い訳がましいかもしれないが、あの時は混んでいてまさか俺に気づいているとは思わなかったんだ」


「そ、そうだったんですか…。ごめんなさい、私ったら変なとこで意地張っちゃって……」


エミリアは恥ずかしそうにそれでいて申し訳なさそうに俯いてそう言った。


「あんな混んでいる時に想い人を見つけられるとかエミリアは愛が深いね〜」


「ッ!!レシア!いい加減にしてください!」


またじゃれ合いが始まったので俺は素材の査定が終わった頃だろうと思い、軽く声をかけて倉庫に向かった。まあ、聞こえてないだろうが。






倉庫にいくと先ほど担当してくれた職員が対応してくれた。


「あ、ジンさん。査定が終わりましたよ。全部綺麗に解体されていて、状態も良かったので金額にプラスさせていただきますね。それで査定結果の方ですが、ゴブリンが43体、ミートボアが12体、スライムが6体、ブラックウルフが23体で合計金貨3枚と銀貨4枚と銅貨2枚になります」



結構な額になったな。

俺は買取金額を受け取り倉庫を出た。




***********








現在、俺は昨日と同じように一度宿に戻り馬を連れてゴブリンの森に向かっている。



森の入り口に辿り着き、これまた昨日と同じように街道を離れ、森と草原の境に馬を括り付け結界を張って森の中へ入った。







長い2本の牙を生やした人間の腰くらいの高さの体長を誇るミートボアを狩り始めて、だいぶ経っていた。


ちょうど依頼達成条件であるミートボア20頭の討伐を終える頃には森の深くまで潜ってしまっていた。


マップで帰り道を探そうとしていると近くに1匹だけの魔物が映っていた。

魔物は大抵群れるので珍しいな、などと思いその魔物を鑑定してみる。




ーーーーーーーーーーー


種族:ハイゴブリン ゴブリンソード


レベル:21


HP:240/240

MP:10/10


STR:126

DEF:24

AGI:102

DEX:64

INT:32



スキル:

剣術 Lv3、回避 Lv2、繁殖 Lv2


ユニークスキル:


称号:ゴブリンの上位種


ーーーーーーー




ハイゴブリンだ。称号にあるゴブリンの上位というのからわかるようにゴブリンの上位互換だろう。

種族にハイゴブリンとゴブリンソードとあるがどういう事だろうと思っていると表示が変わった。




ーーーーーーーーーー


種族:ハイゴブリン族 ゴブリンソード種


レベル:21


HP:240/240

MP:10/10


STR:126

DEF:24

AGI:102

DEX:64

INT:32



スキル:

剣術 Lv3、回避 Lv2、繁殖 Lv2


ユニークスキル:


称号:ゴブリンの上位種


ーーーーーーーーーー





なるほど、ハイゴブリンはハイゴブリンでもゴブリンソードという種なのか。ということはゴブリンメイジとかも存在するのだろうか?まあ今はそんなこといいか。

初のゴブリンソードとの戦闘だ、とりあえず行ってみよう。



マップに従い、ゴブリンソードの場所に赴く。

そこには、ゴブリンの身長を50センチ位伸ばし、筋肉がついた錆びた直剣をもったゴブリンがいた。外見的には普通のゴブリンと大差ないが身長や武器が変わっているのでリーチの差があるだろう。


俺はストレージから刀を取り出し、縮地でゴブリンソードの首を横一閃する。ゴブリンソードはこちらに気付き振り向いたが時すでに遅し、刀の斬れ味によって綺麗な断面図を晒す死体と化した。

弱っ!!なんだよもっと強いのかと思ったら一瞬で終わっちゃったよ。まあ、俺が奇襲をかけたから早く終わっちゃったんだろうけど。次あったら正面から殺り合おう。




そう決めていたが、アキータの街に戻るまでにゴブリンソードに出会うことはなかった。





ギルドに入り受付の列に並び、しばらくして俺の番が来た。



「あっ!ジンさんさっきはなんで急にいなくなっちゃったんですか!?」


こちらに気づくと早々に告げてきた。


「いや、一応声をかけたんだがレシアとやり合ってたから気づかなかったんじゃないか?」


「む、確かにそうかもしれませんね。失礼しました。依頼の報告ですよね?」


そう言うエミリアに討伐証明部位であるミートボアの尻尾とギルドカードを渡す。

エミリアは手早く作業を済ませギルドカードと報酬である銀貨5枚を渡してきた。ミートボアは20頭びったりしか狩ってこなかったので追加報酬はない。



エミリアと挨拶を交わし、素材買取所に向かう。



ミートボアの肉20頭分は銀貨8枚となった。

ついでにハイゴブリンの素材を出すと魔石以外使い道がないらしく、銅貨7枚しか貰えなかった。




そのまま宿に戻るとサーシャさんとサリアが出迎えてくれた。


「あら、ジンさんおかえりなさい」


「あっ、ジンさんおかえりなさい」


「ただいま」


2人と挨拶を交わすと食事の準備はもう出来ていると言われたのでそのまま食堂に向かった。


席に座って待っている間、サリアにサリアが聞いてくる。


「ジンさん、今日は何を狩ってきたんですか?」


「ミートボアを20頭ほど狩ってきたな」


「へえ〜20頭ですか。そう言えばジンさんのパーティメンバーって見たことありませんがどういう方達なのですか?」


「いや、俺はソロだぞ」


「……えっ?」


サリアは俺の言葉を受け、素っ頓狂な声をだし、間抜けな可愛らしい顔を晒していた。


「ソ、ソロでミートボア20頭を狩ったんですか!?1日でですか?」


「あ、ああ。そうだが、ああ、そういえば途中でゴブリンソードも1体だけど倒したな」


「「ゴブリンソード!?」」


ちょうど料理を運んできたサーシャさんも料理を溢さないで器用に驚いている。


「ゴブリンソードはそんなに凄いのか?」


「いえ、凄いというか、ゴブリンソードは強い上に追い詰められると声をあげて仲間を呼び寄せるんですよ。それをソロでなんて……」


信じられないという顔でサリアが俺の事を見ている。


「まあまあ、先ずはご飯を食べてからにしましょう?」


そう言ってサーシャさんが料理を並べていき、その後もいろいろと質問攻めにされた。




その日は部屋に戻りシャワーを浴びて、魔法の勉強をしてから床に就いた。





誤字脱字等ありましたらコメントください。

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