表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
テンプレなんぞクソくらえ!  作者: 夜城 桂月
第1章 邂逅編
8/29

第8話 初依頼

今回は少し長めです。

人の多さに嫌気がさした俺は冒険者ギルドで何をする事もなく外に出た。



ギルドを出て道の端にいく。

あの人混みの中に長時間いるのは俺には無理だ。人混みに酔うことのできる俺には難易度が高すぎる。多分早朝ということで依頼を受けに来るやつやら昨日の依頼の報告とかでゴッタ返しているのだろう。昼頃にはだいぶ空いていることだろう。その時にもう一度来ればいいか。

どうしよう…。暇になってしまった。何かやっとかなきゃいけないことは……っと、そうだ!ストレージの中に料理を溜め込んで置こう。露店にあるやつを片っ端から買い占めればいいか。今日だけでこの街の露店の売上げ総額が過去最高のものとなりそうだな。まあそんなことはどうでもいいか。せいぜい目立たないようフードを目深く被って気配を消せばいいだろう。こういう時のためにわざわざフード付きのローブを買ったんだから。ああ、あと服もいくつか買い足しとくか。

俺は街に繰り出した。










************






買い物を済ませ、昼食を取り終わった頃そろそろ空いたかなと思った俺は再び冒険者ギルドに来ていた。

ギルド内は今朝とは打って変わって閑散とした雰囲気だった。酒場の方には朝の時にいた奴らが未だに酒を飲んで馬鹿騒ぎしていた。

正面カウンターの受付には朝は4人の従業員がいて受付全部が埋まっていたのだが、今は2人しかいない。



俺は受付に向かおうと歩を進めるが突如、歩を止めた。




ーーーーー受付には猫耳を生やした20代くらいの茶髪の美女がいたのだ。





ケモミミ!!!尻尾もあるのか!!?話に聞いてはいたが本当に獣人っているんだな!


俺は外面は無表情だが内心では狂喜に打ちひしがれていた。今までの旅程で獣人は見かけなかった。まあ、王都なんで殆ど観光もせず、抜け出すことだけしか頭に無かったからもしかしたら捜せばいたのかもしれないが。とにかく獣人が存在するという事実だけで俺は充分だった。



冷静になれ、平常心だ、平常心。俺はいつだってクールだ。あれ?俺ってこんなキャラだったっけ?異世界来てからだいぶ変わったような……

などと考えながら俺はその獣人の受付嬢に話しかけた。



「すまない、冒険者登録をしたいのだが…」


「…………は、はい、冒険者登録ですね。……ではこちらに必要事項を記入してください」



獣人の受付嬢は俺の顔を惚けた顔で見ていたが俺が話しかけていることに気がつくと慌ててカウンターの下から紙を取り出した。紙と言っても真っ白な現代日本にある紙ではなく、茶色がかった羊皮紙だ。

それには、名前、種族、年齢と主な戦闘方法を書く欄があった。

俺は今までの旅程でファミリーネームがあるのは貴族だけで平民はファーストネームしかなかったのでファーストネームだけを記入し、同時にステータスの名前も変えておいた。

種族、年齢と記入し、戦闘方法は剣を使うと書いておいた。

紙を受付嬢に返すと記入内容を確認した。



「…………はい、確認しました。ジンさんですね。私はエミリアと申します。登録の際には銀貨1枚を頂きますがよろしいでしょうか?」


エミリアに銀貨を渡す。


「はい。では、ステータスを確認しますのでこちらに触れてください。ステータスを確認するのはこの初回登録の時だけですのでご安心ください。ステータスを確認することで冒険者の実力を知り、実力に見合った依頼を受けていただくということが目的です。冒険者にとって手の内を明かすのは生命線に関わることですからね」


そう言ってエミリアは街に入る時に触った水晶をカウンターの上に置いた。

俺はなんのためらいもなく、水晶に触れる。すると、偽装したステータスが現れる。よかった今回もちゃんとできたみたいだな。

だが、俺は詰めが甘いことを思い知らされる。



「えっ!!?………………あっ、すみません」


急にエミリアが大きな声をあげ驚愕を露にし、大きな声を出してしまったことを謝罪するが声は尻すぼみし俯いてしまった。俺は何かまずったかな?と思いながら水晶に映るステータスを見るが特にこれといって驚く内容はない。何故だろうと思いエミリアに驚いた理由を聞いて見ることにした。



「……えっと、何かまずいことでもあったのか?」


「い、いえ!……た、ただ、レベルの割にステータスが異常なまでに高かったのでそれに驚いたんです」


「………」





不覚だったぁぁあああああ!!!!

確かに大賢者の称号のお陰でレベルアップした時の上昇率が異常なのは分かってたけど、そこまで気が回らなかった!!普通の人に比べても圧倒的に高いことは明らかだっただろう。何故気付かなかった…。どうしよう、なんて言い訳しよう……。


俺が弁明の言葉を考えているとエミリアが喋る。



「まあ、たまにレベルの割にはステータスが高い人はいますからね。……まぁ、さすがにこれは異常かもしれないけれど……」


「……そうなんだ。遺伝みたいなもので父親も母親も兄弟みんなレベルの割にステータスが高かったからな。別に珍しい事でもない」


なんとか弁明の言葉を絞り出した。

あとエミリア、最後の聞こえないように言ったつもりなんだろうがバッチリ聞こえているからな。


エミリアは紙に俺のステータスを書き写し終えると、カウンターの下から赤色の鉄製と思われる10センチほどの板を取り出して渡してきた。


「こちらがジンさんのギルドカードになります。それに血を垂らすとギルドカードがジンさんを認証し、登録完了となります」


俺はギルドカードと一緒に渡された針で親指を刺し滲んできた血をギルドカードに塗り付けた。すると、ギルドカードが一瞬光り、光が収まるとそこには俺の名前、種族、年齢、それとDランクと書かれていた。



「これで登録完了です。それが身分証明書となります。それを街の門番さんに見せれば入街税をを払うことも無く、鑑定石の結晶でステータス確認をする必要もなくなります。それは登録した本人が手にした時でないと効果がないので悪用はできない仕様になっています」


なるほど。それはずいぶん画期的な身分証だな。犯罪者が入り込む余地がないな。

しかしあの水晶、鑑定石の結晶っていうのか。



「ではギルドの案内に移らせていただきますね。まず、冒険者にはランクがあることをご存知かと思います。ランクにはF、E、D、C、B、A、Sの7段階あり、Sが最高ランクです。登録したばかりの大抵の冒険者はFランクから始まります。それとギルドカードはランクによって色が変わります。Fなら緑、Eなら青、Dなら赤、Cなら茶、Bなら銀、Aなら金、Sなら黒といった具合に色分けされています。ジンさんは赤のDランクからです。理由はDランクに見合った実力があると判断されたからです。実力の見合わない低ランクにすると依頼主などからの信用を損ねますし、何よりギルドにとっては損失しかありませんからね。ーーーここまではいいですね?」


「………あ、ああ」



な、長いよ、説明長いよ。もうテンプレ通りです!で終わりで良くね?違うのはランクごとに色分けされたギルドカードくらいでしょ?なので聞き流します。ごめんなエミリア。職務に真っ当な奴に申し訳ないが正直苦痛でしかないわ。








「ーーーーーっといった感じですかね。何か質問などはありますか?」


「…………」


「…あの…ジンさん?」


「…んあ?…あ、ああ、概ね大丈夫だ」



やっべ気付いたら寝てたわ。エミリア美声だから子守唄聞かせられてるみたいなんだよ。



「では、今日からジンさんは正式に冒険者です。冒険者の街の外での活動は自己責任ですから気をつけてくださいね。ギルド内で問題を起こすと除名または降格などの処罰が下されるのを肝に銘じといてくださいよ?あと依頼を受ける時は私の所に持ってきてくださいね?絶対ですよ?」


「ああ、分かった」


ったく、エミリアはしつこいな。なんでここまで念を押してくるんだ?まさかっ!寝ていたのがばれてたのか?そして最後の何?どういう事?俺が寝ている間に何があった…。


「あと、睡眠不足は集中力を低下させますから、戦闘を行う場合はしっかりとした睡眠を取ってからですね………」



おう、ばれてーら。

エミリアは今、生徒に言い聞かす先生みたいになっていて非常にめんどくさい。もう僕帰って良いですかね?






「ーーーーってなわけです!分かりましたね!?」


「あ、ハイ」


「では、ギルドはあなたの健闘を祈っています」


エミリアは定型文のようなことをいって締め括った。それが言いたかっただけだろ?

俺はエミリアから逃げるように依頼書が貼ってある掲示板に向かった。



ん?マップがーーーーーまあいっか。




どの依頼を受けようか掲示板を眺める。


ーーーーーーー


ランクC オークの討伐


依頼内容

深淵の森に生息するオーク3頭の討伐

討伐証明部位は鼻


報酬

金貨1枚


依頼者

冒険者ギルド アキータ支部


ーーーーーーー

ーーーーーーー


ランクD ブラックウルフの討伐


依頼内容

ゴブリンの森に生息するブラックウルフ15匹の討伐

討伐証明部位は毛皮


報酬

銀貨5枚


依頼者

ゴキータ商会


ーーーーーーー

ーーーーーーー


ランクD ミートボアの討伐


依頼内容

ゴブリンの森に生息するミートボア20頭の討伐

討伐証明部位は尻尾


追記

素材を持ち帰れば報酬増額


報酬

銀貨5枚


依頼者

ゴキータ紹介


ーーーーーーー



以上の依頼が妥当なそれでいて楽そうなものだった。これ以外のものは遠くへの採取依頼だとか護衛依頼だとかとにかく近場で済ませられるものがなかった。

まあ受けるとしたら下2つだな。ゴブリンの森とは俺がアキータの街に来る前に通った盗賊のアジトがあった森だ。深淵の森とはこの街からさらに北西に行った所にある侯爵領に面した森らしい。この街は王国が管理する領にあるが深淵の森は侯爵領内に有るのでマップに表示されない上にこの街から馬車で3日程かかる距離らしく初依頼をこれにすると物凄く面倒くさい。更に深淵の森はその名から分かるように広大で一旦迷うと相当運が良くない限り2度と戻ってこれないらしい。しかも出てくる魔物もそれなりに強く、深い森なので未知の場所が多いとこなんだとか。侯爵領に行くには普通は深淵の森を迂回して行くくらい恐れられているらしい。よってこの依頼は受けることはないだろう。別に金に困っている訳じゃないしな。



ってなわけで先にブラックウルフの依頼を受ける為に依頼書をエミリアの所に持っていく。エミリアは笑顔で受け応えしてくれた。



「この依頼を受けるんですね?では、ギルドカードをお渡しください。……はい、ありがとうございました。ジンさんなら大丈夫でしょうけど十分に気を付けて下さいね?」


ギルドカードを渡すとエミリアはカウンターの横に置いてあった魔道具と思われるものにギルドカードを触れさせて、何かを操作してから返してきた。

ギルドカードの裏を見ると依頼受注中と書かれておりそこに依頼内容が記されていた。

おお、やっぱりこの異世界進んでるな。石鹸があったり、宿にシャワーがあったりと妙なところで便利だな。

俺は過保護なエミリアに礼を言い答えた。


「ふふっ、エミリアは心配性だな。俺はあの森を通ってこの街に来たんだぞ?心配なら不要だ。だが、心配してくれる気持ちは嬉しい、ありがとう」


「っ!!?べ、別に私個人が心配したわけではなく、ギルド職員として心配しただけです!」


エミリアは急に顔を真っ赤に染め上げ、そうまくし立てた。

全く結構いい年齢の筈なのに何故そんなに初心なのか…異世界の女性は純真な人が多いのか?


「そうかい。…じゃあ、行ってくるよ」


そう言って俺はエミリアに背を向けギルドを出て行った。



「あっ…私のバカっ!年齢イコール彼氏いない歴の行き遅れなのにこんな事じゃ、せっかくタイプの人を見つけたのに嫌われちゃうよ…」


ギルドを出て行く時、俺の耳にはエミリアが小さな声でボソボソと呟いているのが聞こえたが、何て言っていたのかは分からなかった。




************




俺はギルドを出た後、一旦宿に戻り馬を連れて街の外に繰り出していた。


正直今のステータスだと馬に乗るより走った方が断然速いのだが疲れる上に面倒くさいので馬に乗って行くことにしたのだ。



馬に乗って2時間くらいでゴブリンの森が見えてきた。街道を離れ、森と草原の境目の所で馬から降りる。馬を近くの木に縛り付け、結界を張った。


「すぐ終わらせてくるから少し待っててくれ」


俺はそう言い馬の頭を一撫ですると森の中へと駆け抜けていった。走りながらマップでブラックウルフを探す。するとすぐに7匹で固まっているブラックウルフが見つかった。

その場所へ向かう途中にブラックウルフの1匹を鑑定する。



ーーーーーーーーーーー


種族:ブラックウルフ


レベル:16


HP:130/130

MP:15/15


STR:82

DEF:21

AGI:102

DEX:63

INT:75


スキル:

牙術 Lv2、忍び足 Lv1、統率 Lv1


ユニークスキル:


称号:


ーーーーーーーーー



これが7匹の内の一番強い個体だ。

中々強いな、俺たちを召喚したあの王女より強いかもな。だとすると、レイシアはレベルの割にスキルレベルが高いんだよな。召喚魔法レベル5だったし。あっ…そういえばあの魔法書で先天的にスキルを持って生まれる子もいるとか書いてあったな。生まれつきスキルレベルが高かったのか。だから他のスキルレベルは低かったのか。まあ一応王女だからか作法のスキルレベルは他と比べると高かったのが印象的だったな。


などと考えていると例のブラックウルフの群が遠目スキルを使用している目で見えた。


ブラックウルフは一体一体は弱いが集団で狩りをするため、厄介なことで有名だ。っとエミリアが言っていたようないなかったような。

まあ、狼だから群れるだろうな。1匹狼もいるだろうが…。あっ…ここにいました。

誰が1匹狼じゃ!




陳腐なノリツッコミを1人でやっているとブラックウルフ達もその鋭敏な嗅覚などで俺の存在に気が付いたようだ。



俺は早速刀をストレージから取り出し試し斬りをする事にした。

無魔法の身体強化魔法と身体強化スキルを併用してブラックウルフたちに急接近した。

ブラックウルフたちはゴブリン達とは違い、こちらの動きについて来ようとしていたがそれも虚しく、刀による横薙ぎで一瞬で屍と化した。


「うおおっ!?なんだこれ、斬れ味が良すぎて手加減が難しい」



俺は上手く手加減しないと討伐証明部位である、毛皮が取れなくなると思い、いい塩梅を探しながら戦闘を続けていった。







************






30分ほどで少し多めの23匹のブラックウルフを狩り終えた俺は馬の背に跨ってアキータの街を目指していた。



ブラックウルフは今まで戦ってきた魔物よりもレベルが高く多くの経験値が貰えた事により俺のレベルは19に上がっていた。



また2時間ほどかけてアキータの街に着く頃には夕暮れ時だった。


宿に馬を置きに行きギルドに向かった。





まあ、分かっていたよ。俺には分かっていたよ。この時間帯が混むだろうことは分かっていたさ。


俺はギルドの入り口に立って辟易していた。

ギルド内を見渡せば辺り一面、人、人、人、人。実際はもっとすくないのだろうが、人混み嫌いな俺には余計に人が見える。誰だ俺に闇魔法ファントムトリップをかけたやつは!?因みにその魔法は幻覚を見せるという使い方によっては凶悪な魔法だ。もちろん俺は使える。



少し待ってみたが一向に空く気配がない為、明日依頼の報告に来ることにした。ギルドから出る時、エミリアと目があった気がしたが気のせいだと思い、宿に戻った。






宿に戻るとサーシャさんが夕飯ができていると教えてくれたのでそのまま食堂で食べてから部屋に戻ることにした。今回の夕食も昨日と全く同じ感じで大した感想はない。唯一語れることがあるとしたら、食事中にサリアが来て冒険者になったこととか初依頼について質問攻めにあったことくらいだ。目を輝かせながら、俺を尊敬する眼差しで見るサリアはどこか恍惚としていた。




その日は部屋に戻ってシャワーを浴びてから、魔法の勉強をして眠りに就いた。






なんか微妙なフラグを乱立させ過ぎて回収するのを忘れてしまっている。




誤字、脱字等ありましたらコメントをください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ