第6話 アキータの街
マップを確認しながら、盗賊のアジトへ向かうと切り立った崖のしたに洞窟があり、洞窟の前には見張り役だろう盗賊の男2人が立っていた。
俺は洞窟近くの茂みに隠れながら、マップにて敵勢力の確認をする。
「レベル10未満が7人、残りはレベル12が2人にレベル13が1人………レベル20がいるな、こいつがこの盗賊のボスか」
盗賊のボス以外は大したこともなくステータスも低いが盗賊のボスは厄介かもしれないな。
ボスは斧術スキルがレベル5でなかなか手強そうだ。
とりあえず無闇に突っ込んでも、人数が多いのでこっちがやられる可能性がある。なので作戦を考える。
洞窟の中は4つほど部屋があり、右側の部屋に2人、左側の部屋に3人、中央の部屋に5人と盗賊のボスが入る。中央の部屋の奥にもう1つ部屋があるがこれはおそらく宝物庫だろう。
「まあ、気付かれない各個撃破するしかないな」
俺は気配を殺しながら洞窟に近付き、見張りの2人首筋を狙って2本の短剣を投擲した。
この森に入って数度の戦闘の末、レベル4に上がった投擲術のおかげか投げられた短剣は2本とも狙った場所に突き刺さり、声も無く見張りの2人は倒れた。急いで近づき死んでることを確認するとストレージにしまい、洞窟の中に入った。
洞窟に入ると壁に松明が焚かれているが少し暗かったので目を凝らすと暗視スキルを取得できた。暗視スキルを使いながら少し進むと道が三叉に分かれており、真ん中の道の奥からは酒の匂いと笑い声が聞こえてくる。
とりあえず人数の少ない右の部屋から片付けることにした。
忍び足、隠密、気配遮断をフルに使いながら進むとベッドがいくつか置かれており、その上に寝てる男が2人いた。
そのまま近寄り、ストレージから短剣を取り出し首を掻っ切り死体をストレージにしまった。
今ので短剣術のレベルが上がったようだ。
来た道を戻り、左の部屋にいくと右の部屋と同じような感じで3人の男がベッドで寝ていた。同じ手順で始末し、中央の部屋に向かった。
壁隠れて部屋の中の様子を確認するとどうやら酒盛りをしているようだ。
まだこちらの存在に気付いている様子はない。
人数が多いので俺は魔法で始末することにした。
俺は竜巻をイメージして風魔法を発動させた。放たれた風魔法は部屋の中を掻き回し無数の真空刃が吹き荒れた。
竜巻が収まると全員倒れていたがボスだけは近くにあった斧を持って立ち上がろうとしていた。
わざわざ立ち上がるのを待つのも面倒なので蒼いファイアーボールを当ててやった。
すると下半身が消し飛び絶命したようだ。
「ふぅ、テンプレだとボスに苦戦するんだろうがなんか楽勝だったな」
ボスが持っていた斧を鑑定してみると黒鉄石製だと出たので一応回収しといた。
死体を放置し奥の宝物庫に向かう。
だが一面壁で宝物庫へと続く道はない。しかし岩で上手く隠してるつもりなのだろうマップがある俺には何の意味もなく簡単に宝物庫への入り口を発見した。
岩をステータスにモノを言わせどかすと身体強化スキルを得たようだ。何故今更このスキルを取得したのか分からないがとりあえず宝物庫へ入っていく。
中に入るとそこには大量の武器や宝石、食料や酒などがあった。
片っ端から収納していると目が飛び出すような代物を発見した。
さまざまな剣が大量に入ってる樽にそれはあった。
ーーーーーーー
暴食の宝魔刀
持ち主が斬れば斬るほどに斬れ味と耐久力が増していく魔刀。持ち主が変われば斬れ味と耐久値は元に戻る。古代秘宝。
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「うぉおおお!!刀だ、刀!こんなご都合主義あっていいのか!!」
俺は飛びつくようにその刀に近寄った。
黒塗りに細く紅い筋が入った鞘に納められた柄まで真っ黒なそれを少し引き抜くと吸い込まれるような漆黒の刀身に赤い波紋が波打っていた。一目で業物だと分かる逸品だ。
俺は腰に下げていた鉄の剣をストレージにしまい、新たに手に入れた魔刀を腰に佩びた。
宝物庫の中を空にし、宝物庫を出る。
中央の部屋に散らばっている死体を見て考える。
「ほんとは冒険者ギルドとかに報告した方がいいんだろうが面倒くさい事になりそうだし、ここで始末しとくか」
俺は街道で回収した馬車の中身以外のものとこの洞窟で回収した盗賊の死体をストレージから取り出した。
中央の部屋は死体と馬車の残骸で埋め尽くされた。ちなみに冒険者や盗賊が持っていた武器や防具はストレージの中に入っている。
俺は洞窟の各部屋からベッドをストレージを使い中央の部屋に集めた。
宝物庫で回収したアルコール度数の高そうな酒を少しかけ火を放った。
そのまま洞窟の入り口まで戻り、土魔法で洞窟に蓋をした。土魔法で作った蓋に少し穴をあけ、風魔法で一気に大量の風を送り込む。しばらく送り込んだら穴を閉じ、土魔法で洞窟があったというのが分からないように完全に隠蔽した。俺みたいにマップがないとここに洞窟があるなんて気づかないだろう。
そのままアジトを離れ、馬が待ってる場所に急いで向かった。
馬が待っている場所に着くとまだ結界は残っていた。俺は結界に近づき結界を解いた。
「待たせて悪かったな」
俺は馬車の中身にあった木の桶に水魔法で水を張り馬に与えた。
馬は水を飲み始め、俺はその間にステータスを確認した。
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名前:ジン・トウドウ
種族:人間族
性別:男
年齢:17
レベル:17
HP:490/490
MP:352/700
STR:293
DEF:168
AGI:286
DEX:224
INT:321
スキル:
経験値獲得上昇、異世界言語理解、気配遮断 Lv4、商売 Lv2、剣術 Lv5、魔力操作 Lv3、属性魔法 Lv3、生活魔法、MP回復速度上昇 Lv3、MP消費減少 Lv3、魔力上昇 Lv3、知力上昇 Lv3、遠目 Lv3、聞き耳 Lv2、隠密 Lv3、忍び足 Lv3、回避 Lv3、気配察知 Lv4、索敵 Lv3、跳躍 Lv2、縮地 Lv6、体術 Lv6、短剣術 Lv2、棍棒術 Lv1、投擲術 Lv4、調教 Lv1、暗視 Lv2、身体強化 Lv1
ユニークスキル:
多重領域
能力習得簡易
能力成長速度上昇
複合魔法
称号:
異世界人、巻き込まれた異世界人、大賢者
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ステータスが全体的に伸びているな。
っていうか基礎能力がかなり高くなっている。大賢者さまさまだな。
ステータスの確認が終わると水を入れた桶を収納し馬車の中にあった馬具をストレージから取り出し馬に取り付け跨った。
<スキル乗馬を取得しました>
早速、乗馬スキルを使い街道を馬で進んで行った。
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西の空がオレンジ色に染まる頃、途中で魔物に襲われることもなくアキータの街に辿り着いた。途中で馬に乗ったからかアキータの街には予想より早く着いた。
アキータの街はそれ程大きい街ではなく5メートルくらいの外壁に囲まれた街だった。
馬から降り検問の列に並んだ。
検問の列に並んで待っている間に剣術、身体強化、魔力操作、生活魔法、索敵、乗馬スキルを残し、それ以外のスキルを全てと異世界人の称号を隠蔽した。
俺の番がきたようだ。
手綱をひっぱり馬と一緒に兵士に近寄る。
「身分証を提示して下さい」
門番は淡々と身分証の提示を求めてきたが、俺は異世界人で身分を証明するものなど持っていない。
「身分証を持っていないんだが…」
「でしたら入街税に銀貨一枚頂きます。それとこちらに触れてください」
そう言って王都を出るときに見た水晶をこちらに向けた。
水晶に触れると隠蔽されたステータスが水晶に映し出された。
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名前:ジン・トウドウ
種族:人間族
性別:男
年齢:17
レベル:17
HP:490/490
MP:592/700
STR:293
DEF:168
AGI:286
DEX:224
INT:321
スキル:
剣術 Lv5、魔力操作 Lv3、生活魔法、索敵 Lv4、身体強化 Lv1、乗馬 Lv2
ユニークスキル:
称号:
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「…………確認しました。どうぞお通りください」
門番は少し驚いた顔をしていたが何の問題もなくすんなり通ることができた。
検問にいた門番におすすめの宿を聞き、風見鶏亭というところを勧められたのでそこへ向かう。
アキータの街並みは王都とは違い、道は石畳ではなく、剥き出しの地面で、露店なども王都に比べると少ないがそれなりに並んでいる。
風見鶏亭に着くと建物は3階建ての宿だった。馬を外で待たせ中に入ると13歳くらいの茶髪を肩まで伸ばした可愛らしい少女が出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ。何泊のご利用ですか?」
「とりあえず8泊で頼む。」
「8泊ですね。1泊朝夕食付きで銅貨8枚ですので、えっと…………」
「銀貨6枚と銅貨4枚だな。それと外に馬がいるんだが…」
指をおりながら必死に計算する少女に合計金額を教え、それにしても王都の宿と比べると安いな。宿の規模や質もどちらかというとこの宿の方が良いのに。などと考えながら金を渡す。後になって知ったことだが王都にある宿は大体高いらしい。この宿はこの街ではかなり高い宿の部類にはいるらしい。
「あっ……す、すみません。ちょうどお預かりします。馬でしたら後で裏の厩舎に繋いでおきます。ではお部屋に案内します。あっ、私この宿屋の娘のサリアと言います。よろしくお願いします」
「俺はジンだ。よろしく頼む」
頰を赤く染めているサリアと自己紹介を済ますと階段を昇り部屋に案内された。
「ここがお部屋になります。食事は一階の食堂ですので時間までに来てください」
サリアはそう言うと鍵を渡し、階段を降りていった。
部屋に入ると王都の宿と同じ内装でシャワーもちゃんとあった。装備をストレージにしまいベットに腰掛けると盗賊のアジトで得た戦利品を調べる。
金は金貨12枚、銀貨67枚、銅貨106枚、銭貨151枚、石貨254枚か。他にも金になりそうな宝石や装飾品類があるな。
ん?白金貨?鑑定してみるか。
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白金貨
貨幣。白金貨1枚で金貨100枚と等しい価値が
ある。豪商人や国が取り引きのときに使うだけであまり世に出回ることはない。
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金貨100枚!!すげえ高いな、それが2枚もある!
俺は異世界で億万長者となったのだった………
じゃなくて!これで当分金に困ることはないが何があるか分からないし金を稼ぐ手段は必要だろう。明日冒険者ギルドに行って冒険者登録するか。
他にも調べているとアイテムボックスなるものがあった。
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アイテムボックス
空間魔法の付与された袋。最大積載量は3トン。
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アイテムボックスかストレージがある俺には必要ないがこの書かれ方だとアイテムボックスはそこまで珍しいものじゃないみたいだしバックを背負うよりは楽か。
アイテムボックスを取り出し、刀を下げる方とは反対の右腰に付ける。
どんな感じなのか試しにストレージから刀を取り出しアイテムボックスの中に入れてみる。
ポーン
<スキル空間魔法を取得しました>
空間魔法を取得できたみたいだ。空間を断つ魔法とか使えるんかね?
とりあえずそれは置いといてアイテムボックスから刀を取り出すと袋の口が勝手に広がりスムーズに取り出すことが出来た。
これは便利だな。
アイテムボックスの他にも武器が大量にあり、剣、槍、短剣、斧、槌、弓矢、杖などそれぞれ100個近くあるものや100を優に超える数あるものまであった。
食料はあまり数がなく干し肉ばかりだったが、開けてない酒樽や酒瓶は大量にあった。
戦利品を調べ終わると、俺は一回の食堂へ向かった。
席につくとサリアが俺に気づき料理を運んできてくれた。
「黒パンとボアのステーキとシチューです」
「ありがとう」
「い、いえ!…あっ、ジンさんは冒険者なんですか?」
俺が礼を言うとサリアは顔を真っ赤にして俯きながら質問してきた。
「いや、明日登録しようと思っているところだ」
「そうなんですか、頑張って下さいね!」
目を輝かせて応援してくれているサリアに礼を言うとまた顔を赤くし仕事に戻るといって行ってしまった。
?どうしたんだ?
夕食を食べ終わり、シャワーを浴びてベットに腰を掛ける。
ストレージから魔法書を取り出し、今朝読まなかった部分や一般的な魔法の知識を増やした。
ふと時計を見ると時刻は20時を回っていた
1時間ほど読んでいたようだ。
今日はもう寝ようとベットに入る。
今日は1日中動き回っていたが、疲れる様子はなかった。恐らくステータスが高くなったからだろう。
だが、目を瞑ると自然と眠気に襲われその日はそのまま眠りに落ちた。