第13話 邂逅
ようやくヒロイン登場です。
迷宮から出ると西の空に沈みゆく夕陽の陽が木々の間からこちらを黄昏色に染め上げていた。
陽が沈み始めたことで辺りはより一層、暗さを帯びていた。
俺は今日はここで野営する事に決めた。何故かここら一帯には魔物が近寄って来ず、野営するにはちょうどよかった。
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次の日、いつもの時間に起き、いつもの日課を済ませ、身支度を整え、道無き道を進んでいく。
道中では、オークソードやオークファイターなどのオークの派生種に度々遭遇した。恐らくここら辺にオークの集落かなんかがあるのだろう。
走りながらも立ち向かってくる魔物を倒し、目的地に向かってひた走る。
しばらく進んで、昼を過ぎた頃マップに森が途切れているのが映った。そのまま進むと一面草原の場所に辿り着いた。
遠くには小さな森が転々としているのが見える。
マップを見てリルクルの街の方角を再確認する。少し行くとリルクルの街へと続く街道があることが分かったので一先ずそこへ向かうことにした。
草原にはのどかな風が流れ、陽射しもとても穏やかだ。
街道に辿り着き、しばらくリルクルの街へ走って向かっていると森が見えてきた。街道は森の中へと進んでいるのでそのまま進んでいく。
森の中へ入ってしばらく進んでいるとマップに3つの赤い点に囲まれた6つの緑の点が映った。また盗賊に襲われている商人かと思ったが数の比率がおかしい。そのまま走って進んでいくと3体のオークに囲まれた馬車が見えてきた。
どうやら魔物に襲われているだけのようだ。しかし様子がおかしく護衛と思われる冒険者も存在しない。すると1体のオークが馬車に繋がれた2頭の馬のうちの1頭を手に持った棍棒で殴り飛ばした。
馬は倒れたまま動かなくなった。
すると御者台から1人の男が降りてきて馬車の中から1人の女の子を呼び出した。
その女の子は銀髪を腰の辺りまで伸ばし、お尻のあたりから銀色のフサフサの尻尾が垂れている。頭の上には犬耳らしきものが乗っかっている。
ここから見えるだけでも相当美人だろうと思われるその女の子は薄汚れた服を纏っただけの格好でオークに立ち向かった。
だが、その女の子はどこか危うくふらふらしていて疲労の色が濃く見える。
だからだろう。1体のオークが振りかぶった棍棒をまともに食らって吹き飛び、木にぶち当たってそのまま崩れ落ちた。
御者台から降りていた男は、女の子がやられたことで尻餅をつき震えているようだった。
俺はこれは危ないと思い、身体強化をして突っ込んでいった。
腰から黒鉄石製の黒鉄剣を抜き放ち、背中を向けているオークの内の1体の首を斬り落とした。
そのことに気付いた残り2体のオークの意識は完全にこちらに向いた。
「助太刀する!下がっていろ!」
俺が尻餅をついていた男にそう声をかけると、男は馬車の中に声をかけ、中から4人の人が出てきてその者たちとともに離れていった。
俺はそれを横目で見て前にいるオーク2体に意識を集中する。
いつもはソロだったため刀を使っていたが、今は周りに人がいる。そのため今はダミーで腰に下げていた黒鉄剣を抜いている。剣術レベルは4のままなので正直油断するとやられる可能性がある。慎重に戦うべきだろう。
オークの1体がこちらに駆けてきて棍棒を振り下ろす。俺はそれを紙一重で避け、胴に一撃たたみ込む。だが、剣は分厚い肉によって途中で停まってしまった。オークは苦悶の声をあげながらも棍棒を握ってない方の右手で右ストレートを放ってくる。俺は一度剣から手を離し、一歩下がる。オークの腕が伸び切るところで掌をオークの拳に当てジャンプする。オークが右ストレートを放った時の力を慣性の法則の要領で利用し、回転するように受け流す。俺は宙に浮いた身体を伸ばし自ら回転を加えることで力を逃し、着地する。
プロも顔負けの前方伸身宙返りだ。
綺麗に着地できたところでもう一体のオークが棍棒を振り下ろしてくる。俺はそれを懐に潜り込むように躱し、土手っ腹に身体強化した拳をめり込ませる。体格の差から上に向かって打ち込む事になり、オークの身体は2メートルほど宙に浮き上がり、そのまま背中から落ちていった。
それ横目で見ながらすぐさま振り返り、最初のオークと対峙する。
オークは腹に黒鉄剣が食い込んでいることでだいぶ体力が減っているようだ。
俺は縮地を使い一気に懐に潜り込むと腹に刺さっていた剣を抜き、抜いた時の力を利用して回転するようにオークの背中を斬りつけ、オークから離れた。
オークは剣を抜かれたこと、背中に一撃をもらったことで血が大量に溢れ出している。
その隙にちらりとさっき殴ったオークを見ると泡を吹き、白目を剥いてピクピク痙攣していた。
あれは放っておいて大丈夫だろうと思い、目の前のオークに向き直る。
オークは先ほどよりも弱々しくなった棍棒による攻撃を放ってきた。
俺はそれをまたまた紙一重で避け、棍棒を持っていた腕を斬り落とした。俺はそのまま叫び声をあげているオークの首を斬り落とした。
痙攣していたオークにもとどめを刺し、一息つく。
そういえば、攻撃を食らっていた奴がいたな。生きているのか?
俺は先ほど吹き飛ばされていた銀髪の女の子の元に駆け寄る。
近くで見るとより一層可愛い美少女だとわかる。歳の頃は16歳くらいだろうか。少し汚れている銀髪も少し手入れをすれば、もっと美しくなるだろう。
銀髪の女の子は口から血を流して朦朧としているが意識があるようでこちらを宝石のような青い瞳で見ていた。
「…生きているようだな。今回復させてやるから待っていろ。聖なる光を持って彼の者に癒しを与えん、ハイヒール」
俺は念のため魔法書に書いてあった呪文を詠唱し、光魔法で銀髪の女の子を癒した。
「……あ、ありがとうございます」
銀髪の女の子は今だに状況が分かっていないらしく、戸惑いながら礼を言ってきた。
俺が銀髪の女の子と話していると後ろから声をかけられた。
「あ、あの、先ほどは助けていただきありがとうございました。私は奴隷商を営んでいるフラーメルと申します」
先ほどの男は奴隷商人だったようだ。フラーメルの後ろには馬車から出てきた4人がいた。4人は年齢はバラバラだが全員女性で皆揃って薄汚れた服を着ていた。
奴隷商人というからには、フラーメル以外は奴隷なのだろう。しかし、奴隷がいるのは知っていたが想像していた奴隷とは全然違うな。
手足に枷があったり、首輪がつけられていたり、貫頭衣のようなボロ布同然のような服を着ていたりするのが奴隷だと思っていたが。この者たちが着ている物は少し汚れているがどこにでもいる普通の服装だ。
「ジンだ、冒険者をやっている。それはそうとお前は奴隷商人なんだろ?何故護衛をつけていない?」
「それはですね、ここからそう遠くない所にある村から奴隷となる者を仕入れてきた帰りだったんですが、護衛を雇うにも少なくないお金がかかります。ですが、今回仕入れてきた中にはユニークスキル持ちの戦闘をできる者がいたのですよ。有事の際にはその者に任せればと思っていたんですが、ご覧の有様でして……」
「奴隷を仕入れる?ユニークスキル持ち?」
「はい。奴隷を仕入れた村は今年の作物の収穫が例年に比べて少なく、貧困に陥って食料を買うお金がありませんでした。その為村の娘たちを奴隷として売ってお金を得ようとします。それを私たち奴隷商人が買い取る訳です。そして今回買い取った中にユニークスキル持ちがいました。それがこのイリスです」
なるほど。よくある話だな。
しかしユニークスキル持ちか。たしか図書館の本に書いてあったが生まれつきユニークスキルを持って生まれる子供がいるとかだったな。後は特殊な称号を得ることによってユニークスキルを取得できるらしい。そしてこの銀髪の女の子、イリスがユニークスキル持ちらしい。
ステータスを見てみる。
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名前:イリス
種族:獣人族 銀狼種
性別:女
年齢:16
レベル:12
HP:150/150
MP:21/100
STR:80
DEF:51
AGI:112
DEX:76
INT:87
スキル:
気配察知 Lv2、嗅覚鋭敏 Lv2、聴覚鋭敏 Lv2、短剣術 Lv2、跳躍 Lv1、気配遮断 Lv1、水魔法 Lv1
ユニークスキル:
加速思考
称号:
奴隷
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なかなか強いな。獣人族は人間族より身体能力が高いと聞いていたがこれ程とはな…
名前通りだとは思うがどんなユニークスキルなのか見てみるか。
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加速思考
時の流れが遅く感じる。思考が加速する。
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まあ、概ね予想通りだったな。
しかし何気にかっこいいスキルだな。少し羨ましい。
「なるほど、それはすごいな」
「もしよろしければ、今回ジン様にはご恩ができましたのでお安くしますよ」
ここぞとばかりにフラーメルが勧めてくる。商魂逞しいな…
「んー、どうするか……」
「このイリスは獣人族の中でも飛び抜けて身体能力の高いと言われている銀狼種です。おまけに見た目も良く性奴隷としても使えます。もちろんまだ確認はしてませんが契約の時に処女だと言っていましたので性病の心配はございませんよ」
処女か、それは中々ポイントが高いな。なにでも中古というものは嫌なものだ。俺は処女厨なのだ。ビッチは帰れ!
「んー……ん?処女だとどうやって確認するだ?」
「はい。本来は買い取ってから商店にいる女性従業員に確認させ、村には後日お金を届けに行くという形を取っています」
「なるほどな」
なんだ、お前が確認したのかと思って嫌悪感が湧いてきていたよ。
「どうですか?普通なら最低金貨70枚はしますが、ジン様ですので金貨60枚で提供させていただきますよ」
「んー……じゃあ金貨40枚でどうだ?」
金貨60枚は流石に高い。金は持っているがそんなにポンポン使っていたらすぐに失くなってしまう。一人暮らしは生活資金のやり繰りに必死なのだ。
「それは流石に………では金貨50枚で如何でしょうか?」
「うーん………それなら……じゃあ買った」
「毎度ありがとうございます!あっ、ですが今は契約書やお釣りが必要な場合手持ちが無いのと街の外で大金を持ち歩くのも怖いので街についてからの契約でよろしいですか?」
「ああ、それでいいがどこの街に向かうんだ?」
この街道は今いるところは一本道が続いているが途中で迷宮都市へと続く道と王都へ向かう道、そしてリルクルの街、辺境伯領へと続く道の3つに別れているのだ。
「リルクルの街でございます」
「そうか、じゃあ目的地は同じだな」
こうして俺は初の奴隷を買うことになり、フルーメルとイリスと残りの4人と共にリルクルの街を目指すことになった。
それと何気に俺をタダで護衛につけたこの奴隷商人は中々侮れないと思った。
次回はイリス視点でお送りします。
誤字脱字等ありましたらコメントください。




