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ドラハウス☆  作者: 希望
8/10

~レベル8~ゆりな22歳~


取られた手はそのまま握られてて、

私がドア側に座ってるから、多分私が実家に戻ったら、紳士に送り出してくれるんだろうけど。

手があつい。汗かく。どきどきする。


いつからこんなに少女みたいになったんだろう。


「はい、今日は有難う」


ここで帰されたのが良かった。

会いたい気持ちともっと知りたい気持ちが募った。


交換してしまったLINEで、

「またみんなで会わへん?」とくれたのもゆりなにとってはドキドキする内容だった。


「このあとにこのボタンを最大のところで押すんだよ」

「そうなんだ!わ!難しいね・・」

「仲間にどうするか確認したら、軍師とかいるから」

「え何軍師(笑)」


彼氏とはたまに会ってはゲームをして楽しく過ごす。

だけど、どうしてもあっちゃん(温士)と比べてしまう、とゆりなは思ってしまった。

はたからみたら乗換だろうし、あっちゃんの立場からすれば略奪だろう。

だけど、日に日に触りたい気持ち、触られたい気持ちは、あっちゃんに傾いていった。


12月の頭、ゆりなの彼氏はゲームの中で開催されているリーグに夢中になっていた。

「ちょっと待って、試合させて」

「え~私といるのに?」

「ラスト6分張り付きさせてほしいんだ」

最初は、何言ってるんだろうと思った。当時この試合の仕組みをゆりなは把握していなかったし、

彼女といるのにゲームする感覚が良くわからなかった。

確かに楽しいゲームなのは理解をしていたが、ネットでつながった人が私よりも大事なの?

とか、就活もせずにてゆうかこの人なにしているの・・・?

という失望の気持ちがふつふつ沸いてきた。


この人ダメだ。別れよう。

ゆりなはそう思ったものの、スグに行動できるわけでもなく

ただ連絡を前より薄れさせていった。


そしてクリスマスの前、とうとうあっちゃんに呼び出された。

ゆりなが、「彼氏が全然クリスマスとか何も言ってこないの、ひまなんだよね・・さみしいなあ。」

という伏線を張ったからだが、ゆりなにとっては他人の力を使ってでも、違う自分、

違うところにいきたかったからに他ならない行動だった。


呼び出されたのが、名古屋駅の近くのカフェだった。


「あっちゃん」

「ゆりなちゃん、来てくれてありがとう。伝えたいことがあったんや。」


ここからが、ゆりなが忘れられない告白のセリフである。


「彼氏がおるとかわかってんねん。だから返事はいらんし、伝えるのも迷惑かなと思ったんやけど。

伝えなければ俺は、なんも変わらんというか、挑戦する男でおりたいから、結局エゴなんやけど、

伝えることだけはしたいと思ってん。返事はいらんし、短い間に好きになるわけないなんて思ったんやけど、

ずっと考えてしまうし、好きなんや。」


ダメでもいいからという、泥臭い体当たりに、ゆりなは心打ち砕かれた。


彼氏には、「ずっと一緒にいるのを考えられない」

と半ば強制的に別れ、あっちゃんと付き合うことになったのである。


ただ、ゆりなのドラリーへのハマり方は、リアルで近くにゲームをする彼がいなくなったからこそ、深まったと言っても過言ではない。

彼以外にわからないことを教えてもらううちに、女の子らしく、ゲームのアバターを着せ替えで楽しむことも知ったし、

テクニカルな事、や試合の見方も多角的になりどんどん覚えていったのだ。


ただ、ゲームにはおたくというか、妙にテンションが高すぎて実態が見えない人も多くいた。

また、やはり男性が多いゲームで、特にリア友同士がやっているチームでは馴染むことが難しかった。


そう、もう時は5月。1か月毎にチームを移籍してたどり着いたのがHANAのチームだった。

HANAとゆりなの出会いは3月だった。ゆりなが当時所属していたチームにHANAが1週間遊びに来たことがあったのだ。

それ以来連絡を取り合うことはあまりなかったのだが、HANAの友好関係が広がる中、ゆりなを見かけたHANAが公開の語りの場で声をかけたのだった。それ以来HANAとゆりなはドラゴン内の公開語りで仲良く話していたのだが、それを見た同じチームメンバーから、そこに移籍するの?

がんばってね、等と声がかかってしまい、気まずくなったゆりなをHANAが引き受けたのであった。


何よりよかったことは、HANAはゆりなと同じような感覚の持ち主だったことである。

1人だとさみしいとも思うし、誰かにワガママなことも言いたいし、甘えたり、つんつんもしたい。程よい距離感でOPENに付き合いたい。

その感覚で言葉を発していることがゆりなにはよく分かった。そして何よりもHANAは好きな人にとても好意的だった。

ゆりなの会話は必ずキャッチするし、時にはじゃれあった。イン率で言うとHANAはゆりなの3倍程度高かったが、

きたときに頑張るメンバーをHANAは信頼していた。HANAはチームメンバーを信じ、好きで言動をしていた。

ゆりながHANAのチームに入って数人移籍をすることがあったが、全員がHANAはいい団長だよ、と言って去って行った。

去る理由は色々あるが、チームの問題ではないなとゆりなは思っていた。

自分で暴走して自分で辞めていく人たち。

戻ってきてほしいと思わない人たち。

多分HANAも同じことを思っていたと思う。団長として、出来ることはHANAは全部していた。

しつこすぎない絶妙なOPENさはまぶしかった。そして、自分たちの居心地の良い王国を創っていくと。

女性は少ないチームだったが、ゆりなはこのチームが好きだった。


ゆりなにとって、あっちゃんは生活の一部となったし、ドラゴンも、間違いなく生活の一部となっていた。


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