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救いの守護者様


「わ、分かりましたから…あ、あんまりその鉄パイプみたいなもので殴らないでください…」


「本当に勘弁してくださいよ…あんまりこの事周りにしれると失望する方もいらっしゃいますから」


二匹のドラゴンがやり取りを見る限り

どうも俺は修羅場から辛くも脱出したようだ

既にフェルディとかって奴には失望させられているが


「そ、それでここに来た理由は?」


「部下を集めて会議を行うと言っていたのにも関わらずこんなことをしていたのでは…」


なんだか先程とは引け腰なフェルディに対して黒い体色のドラゴンが言い放った、

こんな事を黒い体色のドラゴン…グラウと聞いたドラゴンの言伝から

最初はピンとこない様子だったがやがてフェルディは青ざめたような表情になっていき


「あっ!!そ、それをすっかり頭の中から忘れさせていた…待たせるのは不味いですね!」


「急いでください。こちらは私が"健全"にお守りいたしますから」


「ぐっ!…」


あっあのとんでもドラゴンさん図星着かれたな…

ま、当然だ。俺にあんな恥辱を与えた奴にはお似合いの言葉ってもんだ。


「うむぅ…不満は残りますが…グラウしっかり見張っておいてください」


「…承知いたしました」


フェルディは物足りない未練が残っているような顔が浮かべながら俺のいる場所から

立ち去り、それにグラウと言われるドラゴンが答えた。

その台詞がどこかの某ドラマを思い出してしまったのは秘密。


「…立ち去ったか」


代わりに俺の見張りをすることとなったドラゴン、グラウがそう呟きながら俺の方に顔を向けた。


見た感じ俺と同じぐらいの大きさでドラゴン特有の尖った顔ももちろん持っている。

とはいえどちらかと言えばこちらの方が鱗が付いていないとはいえ

今の俺やあのとんでもドラゴンさんより一般的なドラゴンっていうイメージが強い姿をしている。


体色は全身が黒で所々ベージュみたいな色が付いているようで

角もみると一般的な硬そうなものだ。

なによりそのイメージを決めているのが翼だ。

オーソドックスな蝙蝠のような大きな翼がそのドラゴンを纏とうかのように迫り出していた。


正直、第一印象はこちらの方が怖い。

もし二択でフェルディとグラウからかつあげされたらグラウの方がよりまで恐怖を感じるだろう。

実際は前者の方がいろんな意味で恐怖であり、怪奇なのだが


「すまないな…あいつ気に入ったドラゴンがいるとこういう事するもんでな…

 俺の立場じゃ無理やり止める訳にもいかないから。大丈夫か」


「えっ?ま、まあなんとか」


そんな彼が先程と比較して、くだけた口調になりつつも俺に気を使った言葉を交わしてくれたのでありがたかった。

あんまり精神的に大丈夫って感じでも無かったがな。


しかし、先程の様子から見るとフェルディに対する呼び方があまりにも変わりすぎなような…


「あ、あの変た…フェルディっとかって奴との関係は」


「ああ一応、彼の守護者…簡単に言えば用心棒ってところかな…」


「けれど今そっちはフェルディの事"あいつ"って呼んでいたような…仮にもそれは失礼なんじゃ」


まあ、実際のところ"あいつ"扱いですんでいるだけマシなような気もする

本当ならド変態ドラゴンだのドスケベドラゴンだの…あぁ!!さっきまでの悪夢の光景が蘇ってくる!

今は取り合えずその事は考えない方がいい!


「どっちかというと幼馴染って関係の方が長いけどな」


「へぇ…幼馴染ねぇ…幼馴染!?お前今まで大丈夫だったのかよ!!」


お、幼馴染だとは…なんで"あいつ"呼ばわりなのか理解は出来た

でもそうとなるとこいつは今まで大丈夫だったのだろうかという心配が出てきた

今でこそこいつあいつをびびらせるほどの雰囲気を持っていたようだが

それこそ幼い頃の時とか大丈夫だったのだろうか…ってそんな時から目覚めていたらまずいか


「えっまあ幼いころはそんなでも無かったからなあいつ」


「…なんださすがに幼いころからは…ってそのあとは?」


「…何度もやられかけた」


「何度も…おまえまさか」


「いや、大丈夫…あいつの扱い方は知ってるからな… 

 伊達に幼馴染やってるわけじゃないからな」


こいつ…なんていう猛者なんだ

あんな重度の患者って言っていいほどのドラゴンの猛攻撃をことごとく交わしていたとは…


「今度あいつの苦手なものとか教えといてやるから活用してってくれ」


「おうっ、ありがとな」


なんとかまともな話ができる相手を見つけられたのはかなり嬉しい要素ではある

まだここの事について知らない事が多すぎる

ここで思いっきりいろいろと聞いたほうがいいだろう


「ちょっと聞きたい事があるんだが…」


「んっ?どうしたなんでもいいから話してくれよ」


先程はいきなり眠らされて

聞き出すことには失敗したがここはやはり鉄板ネタの…


「実はさ…俺頭打ってしまったのかよくわかんないけどどうも記憶が…抜け落ちていてさ

 この世界の事だとか魔法の事だとか…わかんなくなってしまって」


「えっ?そっそれって…まさか記憶喪失っいう奴?」


「うん…多分そういう類のものだと思う…」


「…」


俺がいまこの世界に関することで分かっているのは

生態系が狂っているというレベルを通り越しているようなものであること

明らかに人から離れた容姿の生物が言語を巧みに操ること。

なんだか魔法らしいものを使っているということ。


これではあんまりにも情報が少なすぎる

もし魔法が使える世界なのであれば是非とも習得したい

あのドラゴンがセクハラした際の対抗手段をして使えそうだし…


「な、何があったかは知らないが…分かった。お前の記憶が取り戻せるように協力するから」


「悪いな。いきなりで話を飲み込めないかも知れないかもって思ってたけど

信じてくれてありがたいよ」


「ああ。あっそうだ腕と足の拘束解いてやるから…それ以上はあいつとの交渉次第だから勘弁してくれ」


「おぉ、どうもな」


どうやらグラウでさえも腕と足の拘束ぐらいしか勝手に解けないらしい

まあ、そんなことするとフェルディが鬱々しく言ってきそうだし…


「まずこの世界がどういう世界なのか分かるか?」


「記憶無くなって二ヶ月ぐらい…経っていると思うんだけど…

 あの洞窟の周辺のことぐらいしか分からなくて…」


「あぁ~こりゃ大分ひどいな~~結構1から教えてやらないと」


「ああ頼む…」


「まず、お前が今いるのはアンフェイラインというのでな…早い話鉄道ってところだ…

 って分かるか?」


「あぁそれなら分かるよ。分からないものと分かるものがあるみたいで…」


「そうか…そこら辺も含めて教えておくか…」


グラウからこの世界の事について大体の事を教えてもらった。

まず、この世界の事をここの住人は「イルジーオネ」という名で読んでいるようで

ドラゴンや獣人、知能の低いクリーチャー等前の世界には無かったものが存在しているようだ。

そして…


「あと人間とかもいて…」


「えっ!人間がいるって!!」


「おっおい…どうしたんだよ急に」


人間がいるとは思わなかった

今まであの洞窟周辺でしか生活していなかったせいか人間の存在だなんて

一瞬でも考えたことないよ…


「いや、何でもない」


あわててグラウに気取られることを恐れた俺は

先程の話題をもみ消そうと否定の言葉を繰り出した。


しかし、物は考えようだ。

もしかすると俺のように前の世界からこっちに来てしまった人間というのが

存在しているのかも知れない。


ある程度自分でこの世界を動き回れるようになったらそういった情報を集めた方がいいだろう

…といってもそれがいつになるか分からないのが正直なところだけども…


「そして、お前さんが今いるところはランディルン州ってという所でこれからリィディヒトという都市に向かっているんだ」


「リィディヒト…?」


「ええっと…リィディヒトは北部最大の都市で500万人の集まる街で避暑地として有名な所さ

 まあ、冬はアホみたいに寒いが…」


そんな説明を聞くと何故か親近感が湧く

おそらくそれは自分が人間だった頃に住んでいた町に似ていたからであろうか

避暑地というのも自分が住んでいた町の自慢として、聞き慣れたフレーズだし

冬がくそ寒いことだって大分共通している。


しかし、人口は200万ほど差がある

こっちは300万人ぐらいなのでそこら辺は差がある

今まで脅威の大自然というものしかこの世界では味わったものが他に無い俺にとっては

いきなりの大都会…大丈夫だろうか…


というかまて?

人口って聞くと違和感が…

だってこんな世界なんだから大都市に住んでいるのが人間だけとはあまりにも考えられにくい


「なあその都市って俺らのようなドラゴンって住んでいるか?」


「おいおい…住んでいるも何もそこに住む王族とかもドラゴンなんだぞ…てかドラゴンの比率が結構高いぞ

 こりゃ激しく頭ぶつけたなぁ…」


「本当に何から何まですまねえな…んでさ、なんで人口ってひとくくりにするのかなぁって。 

 それって人にしか使えないんじゃ…」


「それは…ただ面倒なだけという理由で統一してるだけって聞いたなぁ」


「…それで良いのか?」


「いや、俺だってなんか違和感湧くときはあるが…大抵昔の奴らがいい加減だったで納得するんだよな」


「そういうものなのか…」


なんかしっくりこないのだが…

そこはあんまり触れないでおこうか

なんだがややこしくなりそうだし、控えておくのが賢明な判断かと


「まあ、納得しておくわ…他にそこについての情報ってないか?」


「えぇっと…そうそう、これが一番重要だな!大体の都市に王族の血筋を引く者が置かれているが

 リィディヒトにいる王族はラフィルカ様といって、フラトス族の者なんだ」


「フラトス…あっフェルディが言ってたやつだな。お前はフラトス族とかなんとかって」


「そうっ。そして、ラフィルカ様はフラトス族の者を優先的にリィディヒトに集めているんだ。

 『少数民族保護都市』ってやつに指定されているからな」


『少数民族保護都市』か…おそらく文字通りの意味なのだろう

少数民族の者を優先的に集める都市といったところだろうか


そして、俺はこんななりだからその『少数民族保護都市』に連れて行かれる

といったところか


まあ、話している雰囲気からして、手荒な扱いを受けるということは限りなく少ないだろうか

どこかの例外を除けばなんとか命の危険を被るなんてことはないだろうか


「まあ、そこまではいいんだが」


グラウの顔がやや渋ったような表情になったのを見て

それまでの楽観視した思考を中止し、怪訝な気分で尋ねたくなった


「…なんか不都合でもあるのか?」


「さっき言ったラフィルカ様には当然継承者…息子がいるわけなんだがその息子ってのがな…」


「どうした?」


「それがさっきあんたに…」


ラフィルカ様とかいう息子が一体どうしたのか、自分とどんな関係があるのかと

疑問が頭の中で駆け巡ったときに


「あがぁ!」


突然視界に一匹の竜が右から左へと高速で飛ばされ

列車の床に叩きつけられ、先程までの講義が無理やり中断となってしまった。

俺が見たことの無い奴だったから多少身構えてしまっのたは仕方がないと思う…多分。


「お、おい…大丈夫か!?」


「グラウ様…やつらが何時の間にここに紛れ込んでいたようで…」


「!?そうか…フェルディ様を狙ってか!!」


少しの間にグラウがそれまでの一匹のドラゴンとしての立場から

フェルディ…もといあのドスケベ野郎の守護者に立ち戻ったように感じられた

俺は個人的に様付けだなんてごめんだ


「…確か名前はブロウだったな…」


「あぁ、そうだけど…そっちはグラウっていう名前で良いんだよな?」


そういえば名前のやり取りを一度たりともやったことが無かった。

何故か名前のやり取りをしないまま、話にふけてしまったのか

不思議なものではあるが…


「この緊急事態だ…拘束を解いたところであいつが愚痴をこぼすとは思えないから

 全部外しておく」


「ホントか!?ありがとな…」


「ただ…その代わりといってなんだが…」


「…へっ?」


喜びも束の間いきなり条件付きという内容にちょっとした戦慄が体に走るのを感じた

このような条件付きの話はろくでもないことが多い。

会社勤めのときに上司からこんなうまい話を出されて喜んだ後、その《条件》のせいで

結局プラマイゼロな気分になってしまうことが多かったのだから戦慄が走ることは当然だ。


だが今回はなんだがそんな比じゃないものがきそうな予感がする。

戦慄だなんて言葉がやさしく感じられるくらいに…


「魔法の事は…ぶっつけ本番で教える!」


「えっ!ちょっ!それって不味いんじゃないんですか!!」


プラマイゼロじゃないむしろマイナスだろこれじゃぁ!

これはいくらなんでも無茶振りすぎる


「簡単な魔法なら戦いながら習得できるから!」


とっても清々しい言い回しで言われると

こっちとしても断りにくい


しかし、いくらなんでもやはり無茶だ。

命いくらあっても足りない。

何とかして断ろう。断ろう。断ろう…


「分かった」


断りきれませんでした。情けないですね~俺

まるで会社勤めの前世の頃、そのまんまじゃないですか。


だが、よくよく考えてみろ。こんな所で縛られていた方が危険じゃないか

敵がここに来たら一巻の終わりだ。

それならまだ、戦ったほうがマシってという判断に辿り着く。


「ありがとうなブロウ!今残りの拘束の解いてやるから」


最初はその太い手でてっきり引き千切るようなものを想像していたので

グラウが器用に結ぶを解いた時にはちょっとした驚きをしてしまった。


久しぶりの体の自由。

本当ならゆっくり感傷に浸りたい所だが

今までのやりとりからするとそんな暇は持たせてくれないようだ。


「いくぞ、ブロウ!」


威勢の良い声が黒い体色のドラゴンから聞こえたのを感じて

こちらも自然と身が引き締まる。


「よぉし…なるようにしかないか!」


俺は何時の間にか先程の見たことの無いドラゴンが飛んできた方向へと

グラウと共に自らの足で駆け抜けていった。






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