異世界のとんでもドラゴンと駐車場の厨二病患者
フェルディ・ヴェント…
なるほどこんな感じか名前の方は
いきなり魔法で風みたいなもの飛ばしてきたりといろいろとあれな奴だとは思うが
ちょうどいい。この世界の事を知るにはいい機会だ。
だが…こいつさっき言ってたな。
同属のドラゴンがここらへんにいるという噂を聞いたって
つまり俺のことを探していたという事になる。
だけども何故「俺」なんだ?
ドラゴンなんて俺が今まで見た中でも結構な数がいたはずだ。
噂になるような事は俺自身はしていないはず…
「ところでそちらの名前の方はどうなんです?
こちらの方に言っておいてそちらが名乗らないのはどうかと思うんですが」
そうだそうだ
俺が名乗れ!みたいなニュアンスで言ったもんな。
こっちの方も名乗ってやんないと…
…しまった名前考えてなかった。
もし名前名乗らなかったらどうなるんだろ。
多分怪しいやつだと思われて変なとこ連れて行かれて拷問…
やめろやめろ!最悪なケースを考えるな!
そうだ落ち着け!名前を考えればいいだけの話だ
落ち着いて考えれば…
「どうしたんですか?早く答えてください」
ちょっと黙ってろあんたは!
いかん。こんなことで集中力切れてる場合じゃない…
早く思いつかないと…
さっきものの見事にこのドラゴンに吹っ飛ばされたんだよな
んっ?確か吹っ飛ぶって英語でいうと…
うん。語呂もいい感じだし、違和感も無いだろう。
「ブロウっていう名前だが…よろしく」
英語で吹っ飛ぶという意味の言葉「ブロウ」
中々語感が良くて我ながらよく出来たのではないか
よし、これで一件落着…
「ん?下の名前の方は…」
「あっ…そっちは」
…下の名前の存在の事をすっかり忘却していた
ここで言葉を詰まらせているのはおかしく思われるだろうと思い。
「悪い…覚えてないんだ」
異世界に来てしまった奴の常套手段ってものを使った
さすがに下の名前を考えるために間なんて置いたら不味いだろうし
もう上の名前の方は言ったのだから大丈夫だろ。
「なるほど…身寄りがいないということですか…」
ヴェントというドラゴンがやや憐れんだ表情で俺に向かって言った。
どうもあいつの言動を見ると下の名前が無いということは
家族や親戚が無く身寄りがいない者を指すのだろうか…
こっちの世界に面識のあった奴なんていないし
あながち嘘はついてないだろうからまあいいだろう
むしろ昔の事とか聞かれて面倒なことになるリスクを考えればむしろそのほうがいい
「まあ、そういうことになるな…
ところでさっき俺を探してるって言ってたが何の為になんだ?」
「あぁ…そのことですか」
名前のことは一応のところは解決したということでいいだろう
あとは…このヴェントとかというドラゴンが何故俺を探しているのかだ。
こんな何にも無いような所までわざわざ来るようなことでもあるのだろうか
その苦労を想像すると余計気になる。
もしかして、俺がこんなへんてこな世界に来てしまったことと関係があるのだろうか
「…」
「早く答えてくれないか?何がなんだが分からなく…あっれ…」
"何だこの感覚。急に体が…だるく感じて…"
「ちょっとここで話すのも難なので来てもらいましょう。それまでぐっすり眠っていてください」
「なっ…ふざ…け…んな」
"駄目だ…完全に意識が…
くそ…何使った…んだあの野郎…"
なんとか急に倦怠感を覚えた体を保とうとしたのだが
努力の甲斐もなく力無く倒れこんでしまった。
よく似た姿のドラゴンが倒れこんだのを注意深く見て、ヴェントは起き上がらないのを確認した。
ブロウに掛けた低い魔力でしかない詠唱を必要としない睡眠魔法だっためか多少不安のようであったが
彼が深い眠りに誘われ、容易に目覚めないような様子を見せると安心しきったのか
安堵の表情を浮かべた。
「…もしかしたら例の者たちにばれているかもしれませんし、さっさと運びましょうか」
あまり長居は出来ないと闇夜の中で思い巡らしていた。
本当の所こんな辺鄙な所に同じ眷属がいるとは思ってはいなかったのだろう。
ヴェントからすれば自分を含めて数少ない似たような姿の眷属がこんな所にいること自体
ブロウに出会うまで有り得ない考えだった。
「さて、少し運び出すのが面倒ですが…例の所まで運んでいけば
後はそんなに手間が掛からないでしょうから…」
眠り込んだブロウをどこかに連れこもうとしていた。
例の所までという言葉にいささか引っ掛かってしまうのだが…
「もう運び出すんですか?さすがに気にしすぎなだけのようにも…」
「お前は黙っててください…」
「すみませんでした」
何処からか全身黒色のドラゴンが現れたかと思うと
ヴェントの気が早い行動に諫めようとしていたが
その行動は徒労に終ってしまったようだ。
「先程の様子からすると目覚めた時に暴れる可能性がありますから
ちょっと縛っておきましょう」
「縛るのですか?」
「まあ万が一ということですよ」
そう話し終えるとどこからともなく強度の強そうに見える
太い縄を取り出した。
「これで取り合えずやっておきましょう…グラウ手伝ってください」
「はあ…分かりました」
(縛るのはまあいいとしても…縛り方が…)
ヴェントからグラウと呼ばれた黒いドラゴンは彼からそう指示が出されたのを確認すると
呆れるような思いで眠りこけてるドラゴンを縛るのを手伝おうと決心した。
「当然でしょうがまずは手と足は縛っておきましょう…」
そんな事を言い放ちながら
器用に鋭い爪を持つ手を動かしながらヴェントは自分に良く似た姿のドラゴンの手を縛り、
そのドラゴンの太く発達した足の方もグラウが縛り付ける。
「う~ん…これだけでは心細い」
「これで十分なのでは?」
足と手を縛り、もう十分と思われた中で
ヴェントはこれでは何か足りないと思ったのか
「なんというか物足りないんですよ。分かりませんか?
このままだとこっちの物欲センサーに引っ掛からなくてですね…」
「…はいっ?」
何を言っているのだこのドラゴンは
明らかに正気の沙汰ではないことは確かだ。
必要最低限の拘束は行ったはずだがこの先も行うとなると…
…ヴェントの趣味の領域になるのは言うまでもない
「いやいや…奴隷や捕虜であったらまだしもそれ以上必要の無いことをするのは…」
「分からないですか?このドラゴン…いじめがいがあるじゃないですか」
「はあっ…」
もしここに100人ぐらいの聴衆がいるとすれば
100人中100人がヴェントの事をアレなドラゴンというだろう
というか物欲センサー等の発言といい、そんな風に思わないほうがおかしいだろう。
「さて…どう可愛がってあげましょうかねぇ」
(はあ…こうなってしまうのか)
グラウは呆れ顔で問題発言をかましたドラゴンの方に目を見遣った。
彼との付き合いは長いほうであるのだが
今日までに彼の常軌から外れた行動のせいでいろんな者たちの犠牲を見ており
そのたびに恥ずかしい思いをしていた。
そして、今日もそんな彼の『お遊び』に付き合わないといけないかと思うと
またしても呆れた表情になっていた
「今回はどうするんですか?あんまりふざけている場合では…」
「さてどうかわいく仕上げますかね~」
「駄目だ…もう既に俺の踏み込める領域じゃない…」
どうやら彼の制止など意味を成さないほどのものまで
ヴェントの思考はあまり周囲には晒すことが出来ないようなもので埋めつくされているようだった。
「最初にこの耳にかわいいものでもつけますかね」
(あぁ…始まってしまった…)
頭を抱えながらそっとグラウはヴェントの方に向けて目を向けてみると
なんだが女物に使うような衣装生地を手にしていた
どうみてもふりふりなリボンだとかに使われる代物のようだった。
「~♪」
それをドラゴンの太い手を器用に扱いながら
綺麗に結んでブロウの耳に飾り付ける
「もうそれくらいに…」
「次は真っ白い腹に…」
「…」
もはや怪しげな妄想をその手で実行させていく彼に静止の声は聞こえてないのだろうか
その生地を持つ手を止めることなくブロウの体を飾りつける
頭に中に一体どんな妄想が広がっているかは…それを覗く勇気は無い…
「ふふ…中々いい眺めじゃないですか」
「…起きたらどうなるのやら…」
いつの間にか腹以外にも腕や足にも巻いて
ブロウの格好が人前に晒せないようなあられもない姿になっていた
グラウからすれば目の前の悪趣味な格好をした熟睡ドラゴンの姿が視界に移ってしまい
目のやり場に困ってしまうもの
だがそんな光景もフェルディにとっては望んだものそのものだ
一方では悪趣味な格好をしているドラゴンとて彼からすればいろんな意味で望んだ姿に見えている
「さっさと運びましょう。さすがにこの重さでは空を飛んで…っというのも無理ですから
例の場所に急いで行きましょう」
「あの…これする必要は…」
「少し黙ってなさい」
「すみません」
散々繰り返してきた蛇足気味なやりとりがまた再び2匹の間で繰り出された。
「変な事尋ねてないでさっさと運びましょう」
(散々こいつを弄りまくったお前に言われたくねぇよ…)
なんとか悪趣味な格好をされたドラゴンを2匹でせっせと運び出し
闇夜の中に消えて行った…
…
あれ…
どうも大分寝てしまったようだ
なんだが変な夢を見ていた気がする
そうだそうだ俺がへんてこりんな世界で変な化け物になっていた夢だ!
嗚呼びびった!
あれが現実だったら心臓飛び出すところだよ・・・
それこそポルなんとかさん状態になるって!
周りを見てみるといつもの俺の寝室の光景が映し出された
もう亡くなってしまったカリスマ経営者の生み出したA社のスマートフォンと音楽プレーヤーが机に置かれ
安物のネットブックがその机の大部分を占めている
その机に接するように設置されている本棚には専門書もあれば、漫画や小説もあるような
なんとも言えない状態になっている
…一人暮らし故の素敵な本の事はあえて言わないでおこう
どこぞの家具屋で安く買ったベッドから起き上がると
職場へ行く準備をする。
しかし、交通事故が原因であんなへんてこりんな世界にいくだなんて洒落にならんな、はは
車の運転には気をつけろってことだな多分…
まあ夢の中のように雪が降るだなんてここしばらく無いだろう
ここ最近の予報じゃ高気圧に覆われるから心配はいらない感じだし…
一応スマホで確認してみますか…
"今日のS市の天気 雪"
…
うん…こんな日もあるさ
天気予報がまったく当てにならないことなんてあるさ
今日は朝飯はどうしよう…
昨日自炊したんだしどっかで食べて大丈夫だな、うん
さっさと車のキーを取って車に乗り込もう
いや~予想以上に雪降ってますね
これは確実に国道混むよね。
…
車に向かっている途中でなんだか不安に成ってきた
なんだがあの「夢」の時のような状況と似ているのだから
俗にいうデジャブという奴だろうか
どうしましょう。
嗚呼どうしましょう。
今日は最初から国道を使わずにあの裏道を通っていって
「夢」の事故の時間帯を避ければ大丈夫…
まあ取り合えず早く車に乗りましょう
そそくさとアパートの駐車場に着き
自分の4WDの車に辿り着いて車のキーを車に向けて…
「ほう…これが現実逃避という奴か」
なんか俺の車のボンネットの上に15あたりの女の子が乗っているんですけど
なんだが訳が分からないんですけど
なんで勝手に人の車のボンネット乗っているんですか?
「まったく…自分の今見ている夢を現実と思っているとは…情けない」
あんたの方が見ていて情けないよ!
まったく最近の子供はどうなってんだよ…
まあ、見ると容姿は中々の物だと分かるよ。
端正な顔でそのまま順調に育てばお調子者の男から次々ナンパされるだろうとは思えるよ
俺だって一瞬戸惑ったぐらいだからな
だけどなぁ…
「まあ、あんたは逃げてばっかの臆病者でしか無い人間っぽいけど」
どういう口に聞き方をしているんだこいつ!
車のボンネットに乗るといいどうかしてるぞこの人
「どういう神経してるの?………まさか、ね…。これじゃとてつも無い闇に捕らわれてしまった者の成れの果てみたいだね…」
自虐でもしてんのかこいつ…?
厨二病な台詞を発して自爆してるなこの人…
そういうの今のうちに直しとおかないと後で恥ずかしい思いしちゃうのにな~
ここは素っ気なく退散して貰いましょう
「はいはいお兄さんの邪魔になるからどいてどい…」
「申し訳ないけどあんたは職場にはいけませんよ久我 直樹さん…いやブロウ」
…
なんだこいつ
俺の名前を知ってやがったぁ!?
しかもご丁寧に夢で化け物だった時に名乗っていた名前まで
もしかして名刺を何時の間に俺は仕事の癖で…
いやいやこんな変質者に限りなく近い人に見せたりする馬鹿は俺含めていないし
それはナイナイ
だとすればますます不気味の思えてくる
何故俺の名前を知っている
「どうして俺の名前を知っているんだ?」
「あんたはあんたが夢だとおもっているあの世界にとって必要な者。「終末の時来る英雄」みたいなものね。
把握しておくのは当然でしょう」
え…英雄?終末?
いやだからそういう聞いてて痛く感じてしまう単語の連発はやめましょうって…
一体過去に何があったかは知らないけど
「つまりあんたは逃げられない運命に面してるってこと。
だけどもあんたはそれから逃げようとしているの。恥ずかしいと思わない?」
…
聞いててイラついてくる。
あの世界?俺にとっては何の関係も無いだろ?
たまたま今日見たカオスな夢の想像上の世界でしか無いだろ?
「…昔からそうだったらしいけどね…今いる所こそが夢の世界なんだよ!」
黙れ
仮にあれが本当の世界だったしても俺には関係無い。
まったくもって無関係。
俺はこういうところで平和に暮らすのがいいです。
平和主義って奴です。
「他人は全てあくまで自分がよりよく生きるための手段…そんな下種な考えが見える」
「そうだろ
普通はそんなもんだろ
あんたのような厨二…げふんげふん子供には分からんだろうけど
そう思わないとこれからの人生辛いぜ?
"他人に思いやりだとか憐れみだとか?"
"ましてや他人の中にお互いに分かり合ってくれる人がいるとでも?"
おう…気持ち悪い気持ち悪い
一人でいるのが怖い自意識過剰な人が言う台詞でしょそれ
孤独感に《必要以上に感じる》人が言う台詞だよな~
所詮そんなもの妄想ですよ妄想」
学生時代は暗い青春を送った訳でもなく普通に友人と馬鹿やったりしていた訳だし
別に俺は人と接するのが嫌なわけでもない
ましてや話すことは嫌いじゃない。
どちらかというと飲み会等ではよく喋るほうだぜ俺。
でも人に同情したりだとか頼ったりするのはどうなの?
んなもんは必要ナイナイ。
人生のモットーは自分がいかに快適に過ごすかだ。
他人の心だとか眼中に無いです。つーか興味ありません。
仕事にいりますかねそんなもの。
俺のことを全て分かり合える人なんていないし、俺だって分かりあう気ありませんですし
「…なんかあんた何回か彼女出来てもヤる前に別れて未だにどう…な男にしか見えな…」
「ぐわぁぁぁ
それを!それを言うなあアアアアア」
…彼女に関しては上記のことは多少抜きにして考えているつもりです…
実は俺にはちゃんと女友達も普通にいるにはいるのだが
上記の俺のぐだぐだな思想の影響もあって面倒くさいのか未だに友達の領域を超えたことが無い。
この女の言っていることはこれに関しては正しい。
何故そんなことまで知っているかは未だに真相は不透明だが
「彼女が出来ていないことにについては…まあ、気の毒だがまずは置いといて…
未だにここが現実だと思っているとでも思っているのかあんぽんたんが!?」
「誰があんぽんたんじゃボケ!!あんたいい加減にしないと警察に…うっ!?」
突然俺の視界が真っ白になった。
小さい頃よく見た地吹雪よりも遥かに激しい白の背景が目に焼きついた
あまりにもの眩しさに思わず視力を奪われまいと目を閉じた。
(何が起きた…まさかやくざとの抗争で閃光弾が炸裂したとかはないか…)
しばらくすると光が弱まってきたのが見えた。
もう少しで目を開けていられる強さになるようだった。
よし、1、2、3、で目を開けよう
1、2、3…
…
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
「おれは 突然光に包まれていたと
思ったら いつのまにか目の前の女がドラゴンになっていた」
な… 何を言っているのか わからねーと思うが
おれも 何が起こったのか わからなかった…
頭がどうにかなりそうだった… 怪談だとか都市伝説だとか、
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
もっと恐ろしいものの片鱗を 味わったぜ…
「ここが現実の世界であればこういうのはナシなはずでしょ!」
俺が夢…だと思う世界で見たような化け物になっていた。
2.5mぐらいの大きさぐらいあって二足歩行っぽい
体色は全身ちょっと薄めの桃色でんで鬣は水色な感じだな
んでなんかとっても長い毛がついている
…あんな毛のついているドラゴンなんてありなのか?
まあいい、そこも気にすべきなんだろうけど…
爬虫類…では無いのだろうかドラゴンって
いくら女…雌という言ってもさ
なんか胸が膨らんでいるのはどうかね
生物学的におかしいんじゃないかね
だってあんな中々いい上物の…ドラゴン相手に何考えているんだ
人間の時には考えられないような…こう豊満という言葉が似合いそうな体だ
だって人間の時は貧…
「さっきからあんたの心を読んでみてるけど…」
おいおいおいおい!!
心読まれているだなんて詰んでるじゃないか
雌ドラゴンの顔が完全に切れてる顔だ
怖い怖い
そんな目で睨み付けないでください
あぁ…早くなんとかしないと
「すみません!この度は不適切なことを思ってしまい…」
「中途半端な敬語で謝れば事が収まると お も っ て い る の?」
その直後そのドラゴンの手が俺の首を掴んでいた
正直この時は命の危険を本気で考えました
「あぐぅ…ぐるじいぃ…」
呼吸が苦しい
せっかくへんてこりんな夢から覚めてまともな日常に戻れたっていうのに
こんな事で死ぬのは…
「むっ大分手加減したつもりだけどこれでもキツイのか…もう少し力抜こう」
「ぐぅ…はぁはぁ」
どうもあちらも力を入れすぎたと思ったのか力を緩め
呼吸が苦しかった先程と比べると幾分か楽になり体の硬直も収まった
あれ…
まてよ今こいつかなりの力で掴んでいたというのにほとんど痛みが残っていない
かなりの力で掴まれたから何かしら痛みがあるはずなのに…
てことはここは本当に…
「そろそろいい加減夢から醒めて貰わないといけないね」
「何が夢だ!ここが俺の…リアルなんだよ!!」
なんでリアルだなんてかっこつけたんだろうね俺
いずれにせよここは俺の住むべき場所
あんなへんてこりんな世界とは…
「じゃ、あんたのいうリアルな世界で私がいるか70文字で説明できる?」
「うっ…」
そうだよそこだよ矛盾は
こんな生物学を無視している生物がなんでこんなとこにいるんだよ
そうだあれだ
俺は自分の住んでいる所の夢を見ているんだ
夢から醒めたと思ったらまた夢だったというパターンだ
そうとなれば今度こそ目覚めたら元の暮らしが待ってるはず
「ふ~んそう思っているの?私はあんたの言うへんてこりんな世界に戻るだけだと思うけど」
「おっと心読めるんだっけ、残念だけどそれは無いと思うぜ。なんなら賭けるか?もしあのへんてこりんな世界で目覚めたらあんたの勝ち
元の世界に目覚めたら俺の勝ちだ。いいよな」
「何を勝手に…まあいいけど」
なはは俺の勝ちだな
あんなへんてこりんな世界に俺は一生縁が無いでしょう
会社行くのはつらいけど文明的なオサレな生活に戻るのが目覚めたあとの絶対的な展開だ
あいつも馬鹿だのう…
「あんたのお望みどおりにちょっとすぐに寝てもらうよ…」
この賭け事は無駄だな
俺の勝ちが決まっているようなもの
このドラゴンが自分が外れたことを知って居た堪れなくなってへこむ姿が目に見えるぜ
ははは…無駄無駄無駄む
「むぐっ」
一瞬理解が出来なかった
先程首を掴んだ姿通りの行動を見せた彼女からは想像が不可能な行動。
何時の間にか彼女はその長い顔を俺の顔に近づけ…
俺の口内にドラゴンの舌が入り込んでいた
自分の口の中を弄ばれ思わず体が反応してしまう
その舌に大量についていたドラゴンの唾液がさらに感覚を敏感にさせる
彼女はその唾液を俺に飲ませようと舌を能動的に動かす
俺もなんとか格闘し、飲むものかと抵抗したものの
成すすべも無くその唾液は喉を通り食道の奥へと消えていった。
「…私の唾液には即効性の睡眠作用があるからすぐに…あっもう眠たくなっている」
俺の口から舌を引き、彼女が呟いた直後に
強烈な眠気が襲って来た。
「これで…賭けの結果が…分かる…な」
そんなに間をおかず俺は眠りについた
これで本当の夢オチだって分かる
さて明日の仕事は…頑張りましょう
「まだその事いってたの…」
ドラゴンの呆れたような声を聞きながら
俺は再び深い眠りについた。