プロローグ 「与えられた記憶」
これが初投稿になります。らみです。
どことなく暗め、シリアスめの学園ADVのような雰囲気を
醸し出していければいいなと思って自作しました…。
とにもかくにも初めてですので、何も…。
希少にも読んでいただいた方々、
至らない点、アドバイス等よろしくお願いします;
それでは、どうぞ。
~プロローグ~「与えられた記憶」
――――――――どうしてだ。
どこで間違えたんだろう。
まわりは際限なく透き通った白い空間。
浮いているような、沈んでいるような。
何からも干渉を受けない。
そんな空間だ。
頭の中も然り。
記憶というべきものが全くない気がする。
気がする、ということは「記憶が元々あった」という事だけは覚えているのだろうが。
ない―――。まるで誰かから、何かから与えられたような記憶しか。
基礎的な語彙や、知識だけが植えつけられているようで。
一般に「思い出」とでも呼ぶべきものが一切備わってない気がする。
自分の名前さえ教えられてはいないみたいだ。
ただひとつ。
特別に与えられてわかっていることがある。
――俺は、死んだ後で、ここにいる。
それだけで。
いつ、なぜ、どうやって死んだのか。
生前の記憶は。
―――――――――――――――――――――――――――。
それらがわからないことが苛立たしいというか。
非常にいたたまれない。
どうにも不可思議な気分だ。
他でも、そうならない人などいないだろう。
人は一生を終えれば、跡形もなく消えるものだと思っていた。
まさか、生前の記憶だけ抜き取られて未だ存在しようとは。
―――生きているわけじゃないのに「存在」だなどと言えるのかもわからないが―――。
とにかく、意識はある。思考力も。
もし、今この瞬間、全ての生前の記憶が戻ったとして。
だからって何になるんだろう。
こんな誰も、何もない空間にいたところで。
記憶なんていくら持ち合わせていようがいまいが何にもならない。
そういう意味で最低限しか与えられていないのかもしれない。
となると――。
取るべき道は一つしかないことになる。
なぜだか、わかる。
次はこちらの記憶がなくなることも。
またここに戻ってきてしまいそうなことも。
それでもこうしなければいけないってことも。
「さて、行くか――」
嘆息まじりに小さく呟いた後、重くなる瞼をそのまま素直に閉じて。
それまでの白い空間はいつしか闇に染まり―――。
記憶が一つ一つ抜き取られるのを感じ、やがてそれさえも感じなくなって――。
俺の全てが、深い闇に沈んでいった――――――――――。