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やっぱり私はヒロインでした!  作者: 神月ひかる


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第七話

「申し上げます。カンパニュラ様、合格。リラ様、合格です。ご入学おめでとうございます」


 玄関ホールにて、学園からの使者が膝をついて封書を読み上げる。


 ジャケットのボタンをしっかり閉めた使者は、使用人たちに見送られて重々しく玄関を出ていく。


 玄関扉が少しずつ閉じていき、最後の隙間がバタンと閉まった瞬間、私はほうっと息を吐いた。


「やりましたわお義姉様!」


「当たり前よ。大丈夫だと言ったでしょう?」


 思わず抱きつこうとした私を軽くあしらってお義姉様は言う。


「だって、もしもお義姉様たちにご迷惑がかかったらと思うと……」


「貴女はそこそこ優秀だもの。学科試験もあるのに落第することはないわ」


「学科試験があって良かったです」


 私は涙ぐんで頷いた。


 伯爵家に来てマナーの基礎は覚えたけれど、お義姉様のような優雅さとなると一朝一夕には身につかないのだ。


「さあ、これで入学の準備を始めなくちゃね」


 お義姉様は言う。後ろを振り返ると、見守ってくれていたお義母様が頷く。


「明日お針子を手配しているわ。制服を仕立てなければいけないわね」


 学園の制服は元となる形が決まっていて、そこに家の色を足して自分に似合うものを仕立てる。


 翌日、私たちは屋敷にやって来たお針子と、フリルの例を見ながらああでもないこうでもないとデザインを考えた。


 一見冷たく見えてしまうお義姉様はレースやフリルをたっぷり使って女の子らしく。


 私は元の見た目が華やかなのと、妾の子ということで制服のデザインはシンプルにすることにした。


 出来上がった制服を着て、離れの母に会いに行く。


 私を一目見るなり、「まあまあ!」と母は目を輝かせた。


「学園に行くのね。リラは頭がいいから、きっと伯爵様みたいに素敵な人になれるわ」


 優しくる微笑む母の目は、はっきり私を見ていた。


「ええ。ありがとう」


 そう答えた私の視界が淡く滲んだ。




 入学式当日は晴天の式典日和だった。抜けるような青空の下には早咲きのバラが咲き誇っている。


 壮麗な講堂、座り心地のいい椅子に座って理事長の話を聞きながら、私はクスッと笑った。理事長のお話が始まってから何度も時計を確認しているのだが、針はちっとも進んでいない。


 背景が変わっても、これは前世から変わらないのね。


 離れた席に座ったお義姉様が目だけ動かしてこちらを睨む。私は慌てて澄まし顔を作った。


 壇上で新入生代表の挨拶をする王弟殿下はその金色の瞳で、惜しげもなくカリスマ性を振り撒いている。


 その隣に控えるのは真紅の瞳を持つルージュ公爵家の長男、黄緑色の瞳を持つジョンヌ公爵家の近縁の少年。


 青担当のシアン公爵家は見当たらないが、キラキラしい美少年たちが集まった。


 これは、乙女ゲーム本編の始まりね。


 私はきゅっと口元に力を入れた。


 昨日の夜、方針は考えておいた。私は王子様と結婚したいわけではない。むしろ騒ぎを起こしてお義姉様たちに迷惑をかけるのでは困るのだ。


 全力でイベントフラグを回避する。そして手に職をつける!


 とりあえずメインヒーローの王子には、目の前で転ばなければ大丈夫。淑女教育で鍛えられた我が足腰の出番である。


 何事もなく入学式を終え、教室に向かう。


 クラスは騎士科、文官科、教養科の三つに分かれている。


 騎士科、文官科は読んで字の如く、職業人を育てる学科だ。多くのご令嬢が教養科に向かう中、私とお義姉様は文官科の教室に向かった。


 教養科と言うのは淑女教育科とも呼ばれ、文学、音楽などの教養や家政を学ぶところだ。貴族女性の将来といえばいいところに嫁いで奥方となるのが鉄板。


 しかし育ちが特殊な私に関してはいいお家から婚約話が来るとは思えないうえ、ヒーローたちの攻略もしない。その代わり、文官科に入り一人でも生活できるよう手に職をつけることにした。


 そしてヴァイオレット伯爵家唯一の正式な後継者であるお義姉様にもまた、文官の素養が必要である。


 教室に入ると、案外華やかなドレスのご令嬢が多いことに気がついた。


 文官科は男子ばかり、女子がいても男爵令嬢くらいだと聞いていたのだが。


 高位貴族のご令嬢たちはどこかソワソワしている。一人の男子生徒が遅れて入ってくると、いっせいに華やいだ声が上がった。


「王弟殿下と共に学べるなんて嬉しいです」


「よろしくお願いいたしますわ」


 口々に囀る令嬢たちに、「ありがとう」と人好きのする笑みを浮かべて殿下は進む。


 殿下は最前列の真ん中の席に着いた。


 なるほど。コレが狙いか。


 最後列の席から、殿下の綺麗な金髪を眺める。


 殿下には、まだ婚約者が決まっていなかったはずだ。あわよくばその席を狙って文官科を希望した女子生徒がいたのだろう。


 殿下の隣の席に控えるジョンヌ家の少年もいるから、そちらが目当ての者もいるかもしれない。優秀なジョンヌ家の男ならば最上級の入り婿となってくれるだろう。


 お義姉様が黄緑色の髪を見て僅かに眉を吊り上げる。お義姉様も彼を狙っているのだろうか。私はその辺のことは知らないのでお義姉様任せだ。


 頑張ってください、お義姉様。陰ながら応援しております。


 担当の先生が入ってくる。


 乙女ゲームではお助けキャラだった、グレイヘアの優しげな紳士だ。


 お年を召して引退したが、若い頃は王城でバリバリ文官として働いていたらしい。


 華やいだ集団をよそに、私は先生の話に集中した。最初の一週間はオリエンテーションが主になるが、友人を作ったり学園の施設になれたりする大事な期間だ。


 学園でできる限りのことを学ぶつもりでいるので気は抜けない。友達も何人かはほしいし。


 何せヒロインだけあって、私の頭はすぐに知識を吸収できるのだ。真面目に勉強すれば学年上位を取ることもできるのではないかと思っている。あくまでペーパーテストでは、だけれど。

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