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2話 目覚めは森の中~。チートスキルで初狩りしたらヤバいの来た件~

 ふわり、と草の匂いが鼻をくすぐった。

 遠くで鳥がさえずり、土の湿った香りが混じる。


「……ん、ここどこだ?」

 目を開けた瞬間、悠真は目の前に広がる緑の光景に一瞬で目を見開いた。

 見渡す限り、深い森。空は澄みきった青空。自分が土の上に寝転がっていることに気づく。

「えっ……? これってまさか」

 全身を見渡せば、身体は小さく、手も細くなっていた。顔を触るとすべすべでだ。

「こ、子供!? え、これって……!? 若返ってるじゃん!」

 鏡がないので正確な見た目はわからないが、たぶん10歳くらいの子どもの姿に変わっている。

(え、えーと……死んで、女神様たちに会って、加護をもらって……転生したんだっけ)

 まるで夢のようだった出来事を思い返す。

「うわ、本当に異世界に来ちゃったのか……。」

 これからどうしようか思案する。

 使えそうな物はないかと服のポケットや持ち物を確認する。

 服装は異世界アニメに出てくる旅人のような服を着ていた。

 あと小さなカバンを持っていた。

 カバンの中を確認すると小振りなナイフをみつける。

 どこかで見たことがあるような形をしている。

 思い出したっ!現世のキャンプ用品でみた形状だ。

 調理ナイフで包丁としても使うことができるやつ。

 ナイフ一本で森の中に子供が一人でいる状況。

 これってやばくない?

 チート能力を授けられているはずだけど、水と食べ物がないと死んでしまう。

「何はともあれ水の確保が先か。」

 水場を探すべく森の中をあてもなく歩き出す。

 少し歩くと水の流れる音が聞こえてきた。これはもしかすると……。音のする方に駆け出す。

 すると小さな川をみつけた。水はとても綺麗だ。

 川をのぞき込み水面に映る自分の顔を確認する。整った愛嬌のある顔立ち、銀髪に琥珀色の瞳。

 「お、これは容姿ガチャでSSRを引いたのでは? ありがとう神様!!じゃなかった、女神様!!」

 軽く手を合わして感謝の気持ちを伝えた。

 川に手をつける。冷たくって気持ちがいい。

 水質はとても綺麗だ。これは多分飲料水としても大丈夫。

 手ですくい飲んでいると後ろの茂みで大きな音がした。

 慌てて振り向くとそこにいたのは小型の獣。

 小さなイノシシに似ているが、毛並みは黒く、目は赤く光っていた。

 大きな牙が特徴的だ。水を飲みに来たのだろうか?

 獣は興奮したようなうなり声を上げた。

 現世では大きな獣なんか間近で見たことがない。

 恐怖感で頭がパニックになる。

 反射的にカバンに入っているナイフを掴む。

 すると嘘みたいにパニックが収まり冷静になっていく。

 ナイフをしっかりと握り、悠真は魔物をじっと見据えた。

 するとピコンッという電子音のような音が耳に響き、目の前に淡い光が浮かび上がる。

 

 《スキル:祝福の解体閃刃ディヴァイン・スライサー 発動》

 《対象:グレイボアの子供(下級魔獣)》

 《推定等級:Gランク》

 《弱点可視化:発動中》

 《推奨解体ポイント:左肩関節・頚部後方・腹部皮下ライン》

 

 「うわっ!?なんだこれ!?」

 まるでゲームのウィンドウのように、透明なパネルが空中に浮かびあがった。

 しかも、魔獣の身体には淡く光るラインが走り、まるで「ここを切れ」と言わんばかりに弱点が視覚化されていた。

 (……これが、加護の力?)

 悠真の脳裏に、セレナの顔と「それでは、加護を授けますね。」というセリフがよぎる。

 ナイフが、まるで彼の体の一部になったように馴染んでいた。

 グレイボアの子供が突進してくる。悠真はそれをするりとかわし、刃を光るラインに滑り込ませた。

 驚くほど簡単に斬れてグレイボアの子供が倒れ絶命する。

 「今のはもしかして女神さまの加護?」

 悠真は手に持っているナイフをみつめる。すると頭の中に知識が入ってきた

 

 【祝福の解体閃刃〈ディヴァイン・スライサー〉】

 女神の祝福を受けし万能解体術。

 凝視することであらゆる魔獣の構造を読み取り、最適な部位切断が行える。

 一太刀ごとに魔力が流れ込み、切断部位は加工済みの高級肉状態に。

 戦闘と食の両面において絶大な効果を発揮する。

 成長に応じてナイフの形態も変化していく。


 「おぉー。」

 悠真は感嘆の声を上げた。前世での精肉経験が活かされたスキルだ。

 水場にいることだし魔獣の血抜きをして、解体作業に取り掛かろう。

「幸先のいいスタートだよね。飲み水が確保できたし。食べ物もゲット。せっかく水場にいることだし、血抜きをして解体しちゃおうか。」

 ウキウキ気分で鼻歌を歌う。手早く解体作業をしているとまた背後の茂みで大きな音がした。

 また獲物ゲットのチャンスと笑顔で振り向く悠真。

 しかし、そこにいたのはさっきのグレイボアの子供とは比較にならないほど大きい。

 乗用車くらいの大きさだ。

 黒々とした毛並みに血走った赤い目、大きな牙。

 そして何よりも大きな獣からは明確な殺意を感じる。

 笑顔が凍り付く悠真。

 慌てずにナイフを握り【祝福の解体閃刃〈ディヴァイン・スライサー〉】を発動させて獣を凝視する。

 

 《スキル:祝福の解体閃刃ディヴァイン・スライサー 発動》

 《対象:グレイボア(下級魔獣)》

 《推定等級:E ランク》

 《弱点可視化:発動中》

 《推奨解体ポイント:左肩関節・頚部後方・腹部皮下ライン》

 《現在のステータスでは対応不可能。体力、魔力共に不足。撤退を推奨します。》


「えっ?対応不可能??そんなぁーっ!!」

 悠真は改めてグレイボアを観察する。自分よりもはるかに大きい。

 確かに勝てそうにはないというのが一目でわかる。

 そして逃げようにも足の速さも勝てそうにないのは明白だ。

 「あはは、異世界転生から数時間で俺詰んじゃった??」

 引きつった笑みを浮かべる。

 ダメ元で逃げようとするが、その動きを見たグレイボアは低く唸り声を上げた。

 目の中に殺意の光を宿らせている。もしかしてさっき倒したグレイボアのお母さんかなこれ?

「ガァァァァァっ!!」

 刹那、うなり声をあげてグレイボアは猛烈な速さで悠真に向かって突進してきた。

 その口からは、見た目からは想像できないほど長く鋭い牙が突き出ている。

(マズい……!このままじゃ……!)

 ナイフを構えるも勝てないのはわかる。

 死を覚悟したその時、視界に何か閃光のようなものが走った。

 次の瞬間突如吹っ飛んでいくグレイボアの巨体。

 そして一人の女性が悠真の前に守るように立っていた。


ここまで読んでくださりありがとうございます。


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