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1話 死んだら女神にハズレ扱いされた件~。でもなぜか二重の加護をゲットしました~

初めまして。霧乃遥です。前回は「婚約破棄された令嬢、年下王子を支えて覇王に導きます」を連載していました。

今回は新シリーズの「異世界肉屋の俺、安全に億万長者目指します!~最強家族に囲まれて無自覚チート料理で成り上がる」の連載を開始します。

楽しく読むことが出来る物語を書くことを目標として頑張っていきます。

「残業、残業、また残業。もちろんサービス残業だよ~。」


 軽快なBGMが聞こえるスーパーのバックヤードで肉を切りながら男が呟いた。

 小林悠真、32歳の男で独身、彼女なしの特徴のない平凡な男。

 悠真はスーパーマーケットに勤めている。

 悠真は、肉が好きだった。

 スーパーに入社して精肉部門に配属されてからは、肉の部位ごとの特性

最適な切り方、鮮度保持の方法、さらには美味しく調理するためのコツまで

知識を吸収した。休憩時間には、ネットで話題のレシピを調べ、試作に没頭することもあった。

特に、売れ残りの肉をいかに美味しく、そして安く総菜として提供できるか

その開発に心血を注いだ。お客様が

「今日のこのお惣菜、美味しかったわよ!」

と笑顔で言ってくれる時だけが、唯一の救いだった。


 しかし、現実は非情だ。

 どれだけ心を込めて仕事に取り組んでも、利益と効率を追求する会社は

 悠真の情熱を搾取するだけだった。

 サービス残業は当たり前。

 売上目標未達は個人の責任。給料は上がらず、貯金は増えない。

 夢は、「安全で安心なお金持ちになり、幸せに暮らすこと」

 せめて心穏やかに、美味しいものを好きなだけ食べられる日々が送れたら、と願うばかりだった。

 悠真はフラフラになりながら会社を出て、夜の街を歩いて帰路についた。

「もう限界かも……」

 体が重い。意識が朦朧としている。そんな時だった。

 キキィィィィ――ドンッ!

 大きな音と共に、世界が真っ暗になった。

 

 ※ 

 

「……ん?」

 気がつくと、悠真は真っ白な空間に立っていた。

足元も壁も天井も、全てが眩いほどの白色に包まれている。

 「あら、目覚めたのね。どれ履歴は……。」

 振り返ると、そこには美しい女性が立っていた。

長い金髪を無造作に束ねている。青い瞳に整った顔立ち。

 どこかギリシャ神話を思わせる、白い服をまとっていた。

「え、えっと……」

 困惑して声を出した。

 悠真の声には反応せずに女性は光るタッチパネルのような物を操作しながら興味なさそうに返答する。

「私は転生管理課の女神よ。あなたは小林悠真ね、32歳。スーパーマーケット勤務。趣味は料理と漫画やアニメ……」

 女神は空中に浮かぶ光る映像をみながら独り言をつぶやいている。

そしてだんだん表情が険しくなっていく。

「特技は……肉の解体?ふーん、まあそれなりね。これでいいか。学歴は……普通。職歴も……普通。恋人は……いない。友人は……少ない。特に目立った功績も……ない」

 女神の声が次第に冷たくなっていく。

そして最後に、ため息をついた。

「はぁー。また外れ人材か」

「が、外れって……」

「あのね、転生者って基本的にはエリート枠なのよ。英雄になったり、世界を救ったり、そういう大きな功績を残してもらうの。でもあなたは……」

 女神は悠真を上から下まで見回して、明らかに失望の表情を浮かべた。

「まあ、決まりだから聞くけど、転生する?それとも成仏する?どっちでもいいわよ」

 あまりにも適当な口調に、悠真は唖然とした。この扱いはひどすぎる。

「あの、もう少し詳しく説明を――」

「面倒ね。成仏でいいわね。多分天国に行って楽しく過ごせるわよ。知らないけどね」

 そう言い、腕を悠真の方に伸ばす。

「えっ!?ちょっと待ってくださいっ!」

 その時だった。

「先輩!それはさすがにひどすぎます!」

 新たな声が響いた。振り返ると、もう一人の女神が現れた。こちらは先ほどの女神よりも若く見える。

 肩くらいまで長さの金髪に青く澄んだ瞳の小柄な女神だ。申し訳なさそうな表情を浮かべている。

 「あー、セレナね。まあ、後のことは任せたわ」

 先輩女神はそう言い残すと、光の粒子となって消えてしまった。

「本当に申し訳ありませんでした」

 セレナと呼ばれた後輩女神は、深々と頭を下げた。

「先輩は最近忙しくて、少し疲れているんです。決して悪気があるわけではないです。」

「い、いえ、大丈夫です」

 悠真は慌てて手を振った。

 この女神は先ほどの女神とは大違いで、とても優しそうだ。

「改めて説明させていただきますね。私は転生管理課の女神でセレナといいます。あなたは不幸にも事故で亡くなってしまいました。でも転生の権利が与えられています。」

 セレナ様は丁寧に説明を続けた。

「転生先は異世界になります。そこは魔法が存在し、人間と魔族が長い間争いを続けている世界です。もし転生を選ばれるなら、女神の加護。いわゆるチート能力をお授けします」

「チート能力……。」

「はい。新しい世界で生きていくための、特別な力です。でも、転生するかどうかは完全にあなたの自由です。無理にとは言いません」

「もし転生しない場合はどうなりますか?」

「それは私にはわかりかねます。私たちは異世界で亡くなった方の魂を召喚して呼び出しているんです。転生されない場合は、召喚した魂を元の場所に戻します。おそらく元の世界のことわり通りに魂が処理されると思います。」

 セレナ様の言葉に嘘はなさそうだ。漫画やアニメが好きな悠真の気持ちはもう決まっている。

 異世界転生どんとこいっ!前の世界では散々だったが、新しい世界なら違う人生を歩めるかもしれない。

 「転生したいです。」

「ありがとうございます。それでは、加護を授けますね。」

 セレナ様は手を悠真の額に当てた。温かい光が体を包み込んでいくのがわかる。

 しかし、セレナ様の表情が少し曇る

「あれ?おかしいな。えーっと。」

「どうしましたか?」

「あ、いえ何でもないです。他の女神が召喚した魂に加護を付与するのって実は初めてで……。」

 セレナ様が照れ笑いを浮かべた。ドアップの女神さまの笑顔は癒される。

「悠真さんの経歴にあった加護を授けました。新しい世界でのご活躍を――」

 悠真の体が光に包まれていく。

「がんばってくださいね!」

 意識が遠のいていく中、悠真は最後にセレナ様の可愛らしい声を聞いた。

 

 ※


 転生の光が消えた後、セレナは一人残された空間で呟いていた。

「先輩の召喚した魂の扱いは難しいわ。先輩の召喚の構築式って癖が強くて……。」

 先輩は効率と速度重視で仕事が適当だ。

 加護にしたって、弱すぎたり強すぎたりでいい加減だ。

 小さなため息をはく。

 気を取り直して送り出した悠真の魂の追跡探査してみる。

 「あれ?座標がずれてる。安全な街中に転移させるつもりだったのに。加護はきちんと付与できているよね?」

 慌てて確認する。

 「加護は大丈夫っ!付与されている。けどこれって……。」

 セレナの顔色が変わる。

 「え、ええええ!?先輩が既に加護を付与してる。私がそれに気づかずにさらに加護を授けちゃった……?」

 通常、一人の転生者には一つの加護しか与えられない。それが二重になってしまったということは……。

「と、とんでもないことになっちゃった……」

 セレナは震え声で呟いた。

「で、でも多分大丈夫よね?少し強くなるだけよね?……よね?」

 不安そうに呟きながら、セレナは記録を隠蔽するかどうか悩み始めた。

 一方、転生した悠真はまだ自分にとんでもない力が宿ったことを知る由もなく、新しい世界への旅路についていた。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

今回の主人公は男性です。よくある異世界チート物作品です。

話のストックをせずに走り出したのでどれだけのペースで連載できるかわかりませんが頑張っていきます。

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