準備
俺とシロは男女別の更衣室に通された。
更衣室やロッカールームと言えば狭い場所をイメージするかも知れない。だが本部の更衣室は違った。
一人一人のロッカーが大きく間隔が空いているのだ。
見た事の無い設備もあるが‥
床を見ると“洋二”と書かれた電光掲示が矢印を引いている。迷子にならずに済む訳だ。
道に沿ってロッカーに着いた。
ウィーン‥カシャン!
いきなり自動でトランスフォームし始めた。
左右に分かれたロッカーの中には制服やシャツ、簡易糧食、靴、鞄、武器‥必要な物が一式揃っている。
「滝田洋二、案内に従い作業して下さい」
近くのスピーカーからAI音声が聞こえる。
それに従って俺は着替えた‥
同じ頃シロもロッカールームの前に来ていた‥
「ニャニャ!脱ぎ方が分からないニャ!」
転生されて意思疎通に問題は無くなったが人間の生活における常識などが身についていないシロ。
「今から自動脱衣モードに入ります。両手足を広げて下さい」
「分かったニャ」
シロが広げるとロッカー周辺から機械が飛び出した。
目に見えないレーザーを一秒掛からずに照射した。
パサパサ‥
今まで着ていた白いセーラー服は綺麗に切断されて丸裸にされた。
「すごいニャ!」
「案内に従って制服を着用して下さい」
かなり時間を掛けながらシロは着替える‥
ようやく着替え終わった俺は姿見を見て驚いた。
制服は密着型のスーツに近いがシャツやパンツは下に着用している。問題はそこでは無い。
「なんか精悍になってる‥」
自分の顔や体型が以前よりムキムキになっているのだ。転生マジックか?心なしか瞳にも力が宿っている。
「滝田洋二は更衣室から退出して下さい」
案内に従って外に出る。
既にシャールが待っていた。
「来たようだね。君の相棒は時間がかかるが大目に見るしか無いな」
「猫ですからね」
それからシロが来るまで雑談をした。
「先輩は地球人ですか?それとも違う世界から?」
「私は並行世界から来た。文化的には地球人とあまり変わらない。それからシャールで良い。敬称も不要だ」
「そうですか‥シャールは何故この仕事を?」
「私の故郷は時空犯罪によって消滅してしまった。たまたま転生出来たから成り行きだね‥」
「やはり時空犯罪は為政者に接近して‥」
「そんなところだ。文明が内輪揉めで滅びる姿を見て酒をあおる連中さ‥」
「彼らは組織なんですか?」
「私の知る限り、“ゲドー”という集団が悪さしている」
ちょっと笑いそうになる。
“外道”そのまんまじゃないか。
堪えながら話を続ける。
「これから訓練ですか?どんな事をするんです?」
「この施設を使って武器や制服の使い方をマスターして貰う。安心してくれ‥筋トレやマラソンよりもセンスが大事になる」
「そうなんですね‥」
女子更衣室が開いた。
「ニャニャ、遅れたニャ!」
それから三人は訓練所へ向かった。