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事故

初めてSFに挑戦します。

会社帰りにいつもの寄り道をする。

とは言っても店や公園ではない。

お目当てはいつもガードレールの下にいる。


「おっ‥いたいた!」


いつからか分からないがそこには白い猫が丸まっている。逃げる訳でもないが近寄っても来ない。

そこが“お気に入り”なのだ。


「ほれほれ〜」


喉の下をくすぐってやると気持ちよさそうにゴロゴロと鳴き声を上げる。

はじめは軽く撫でたりするだけだったが、今ではこの通りだ。


「毛並み良すぎだろ」


独り言を呟きながら白猫に構い続ける。

後方からは巡回バスが早めにライトを付けて走って来る。


緩やかなカーブを曲がろうとした時にバスタイヤの前輪一つが勢いよく飛び出した!


ギギッ〜〜!!


車体を地面に擦り付けながらブレーキをかける。

何とかストップさせて運転手が状況を確認する。


幸い乗客に怪我人はいないようだ。

だが走っていた斜め向かいの方向にスーツを着た男性と白猫が倒れていた‥


更にその奥数百メートル先には脱輪したタイヤがグワングワンと回転しながら外壁にぶつかっていた。











「‥洋二‥聞こえるか‥」


微かに声がする。

ゆっくり目を開ける。


何だここは!

どうなってる!?



一面が真っ白い無の世界と言うべきか‥

とにかく全てが白く眩しい。

かろうじて“床”がありそこに倒れている事が分かった。




「お目覚めかな?」

中性的な声で誰かが話しかけてくる。


少し離れた位置には神秘的な男性がいた。

かなり高齢なのか口髭を蓄えている。

着ている服も髪も髭も周りと同じ白い色だ。

肌はかろうじて僅かに赤い。


滝田洋二たきたようじ26歳男性。君で間違いないね?」


「はい‥」


起き上がり正座をしようとするが止められた。


「大層な者ではないから構わない」


老人はそれから自己紹介を始めた。


「私の名はグランデル。魂を扱う者だ」


グランデル曰く人が死んだ場合には肉体と魂は分離するらしい。今の身体は生前の姿を魂に模写しているだけみたいだ。


「あの‥ここは天国ですか?それとも‥」


「否、天国も地獄もないのだ」


「ではいったい?」


「選別場だ」


グランデルの仕事は死者の魂を様々な世界に転生させることみたいだ。地球に赤子から生まれ変わる事もあれば、全く違う世界に記憶だけ飛ばすという事もあるらしい。


この場で適性を判断してから飛ばすみたいだ。

面接みたいなものか。


「君の死因について説明しよう」



バスの脱輪によりタイヤの衝撃で即死。

原因はバス会社の整備不良と判断された。

会社社長と整備士が責任を取らされて幕を閉じた。


「あまりにもコロッと逝きすぎて実感が‥」


「無理もないだろう‥もう一つ耳に入れて欲しい事がある」


「何でしょう?」


グランデルは言った。


「実はバス会社に落ち度は無かったのだ‥」


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