40.発売記念SS・三人寄れば三種の珍味①~生野菜サラダ
本日無事書籍が発売されました! ありがとうございます!!
ふんふん、と鼻歌混じりで片付けをしていると、シンバが不可解そうな顔を向けてくる。確かに今日はちょっとうるさかったかもしれない。鍋を置いて、ごめんな、とその小さい頭を撫でてやる。
「明日は休みだから好きなもの作ってやるぞ。お前は結局肉が好きだよな。デニスさんがハニーベアを獲ってきてくれたからなあ、煮るだけだと芸がないし、たまにはもっと……角煮をするには醤油がないしなあ、醤油探しの旅に出ないと……」
うーん、と悩みながら片付けを進めていたときには気付かなかったのだが、店の鍵を閉める前にちょっとイエロービスで休憩を……と座り込んだ途端、突然体が重くなった。
さすがに疲れたか。瓶の蓋を開けると、プシュッと軽快な音がして、シンバが「ミッ」と顔をしかめる。イエロービスを喉に流しこむと、ゴクゴクゴクと自分でもびっくりな勢いで飲んでしまった。
「……喉が渇いてたのか。動きながら飲んでるつもりなんだけどな」
なんたってラバックスを使うと暑い。ついこの間まではラバックスを使うと店が暖まっていいな、だったのに、異世界の春も過ぎ去りつつある。
「でも去年の夏は過ごしやすかったなあ。毎年あんな感じだといいんだけど……どうした?」
なんて一年前のことを思い返していると、ぴょいとシンバが膝に飛び乗ってきた。悪いけどシンバ、いまちょっと暑いぞ。いいんだけど、でもちょっと暑い。
シンバはそのまま、ぐいぐいと鳩尾に頭をめりこませてくる。甘えたいのか? 俺が構おうとするとどっか行くし、アンネさんに抱えられると迷惑そうな顔をするくせに、本当に気分屋だな。
「分かった分かった、店が開いてからずっと忙しかったもんな。たまにはどっか出掛けてみるのもいいかもな……っていっても、結局狩って作って食うだけなんだけど……」
――なんて呑気な話をした次の日、なんと、目を覚ますと全身が痛かった。
こ、これは……。無事に手に入れたベッドの中で、なんならシンバが腹に乗っかった状態で愕然とする。覚えがあるぞ、倦怠感とセットのぼんやりとした筋肉痛、これは……疲労!
「……今日、定休日にしててよかった……」
ほっと一息……なんてついている場合ではない。なにせ店が開いてまだほんの数週間、楽しい盛りに突然の臨時休業なんてして堪るか。ちゃんと飯を食って栄養をとって体を休めなければ!
「……というわけでシンバ、どいてくれないか?」
「ミィ」
不満そうな顔で起き上がったシンバは、クシクシクシクシッと素早く顔を擦ると、頭で窓を開けて出て行った。今日もシンバは自由だ。
「なにか食べやすい食材を探して飯にしないとな……」
でも昨日でストックは空にしたんだよな……。調達してこないと何もないな……。グライスはまだ余ってたからいいとして……餃子の野菜スープなんて作れたらいいんだけど、餃子の皮をこねるのはちょっと疲れるな……。
そんなことを考えているうちに意識が飛んでいた。
私は今日から熱を出しました。リューガとおそろいです。




