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感情無き妖狐 ーレイー  作者: 谷崎 馨
第一章 噂
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噂の真相

「やっぱ気味悪いのは戻っても変わんねぇな…。」

「うぅ…本格的に暗くなってきたから冗談無しで怖くなってきたよ…。」

「同感…。」


 神社に戻ると先程見た光景と何も変わっていなかった。少年達が直した地蔵も、落ち葉の絨毯(じゅうたん)も何も変わっていなかった。

 少年達は拝殿の方に足を運んだ。そして拝殿の前の階段で寝る事に決まった。


 “じゃあ、おやすみ。”


 ***


 どれだけの時間が経ったのだろうか。秋の夜は冷える。寝るには寒すぎる。これでは寝ようにも寝付けない。少年達はただ寝転んで目を瞑っている。


 ―――シャン、シャン―――


 どこからか鈴の音が聞こえる。少年達は飛び起きた。どこから鈴の音が聞こえるのだろう。否、その前にこの神社には誰もいなかったはずだ。少年達は必死に頭を動かす。


「おい、聞こえてるよな、?」

「さすがに聞こえてなかったら僕の耳おかしいよ…。」

「噂はまじだったのか…?」

「でもさっき見た時はいなかったよね…?」


 ―――シャン、シャン―――

 ―――カサッ、カサッ―――


 今度は歩く音も聞こえてくる。鈴の音はどんどん少年達の方に近づいていく。少年達は恐怖で身を寄せ合う。


「ハァッハァッ…」


 身を潜めるために息を殺そうと必死なのに、少年達の息は荒くなっていく。

 すると、鈴の音が聞こえなくなった。そして目の前にある影が現れた。少年達は恐怖で何も出来ない。ただ少年達の荒い息が聞こえるだけだった。目の前に現れた影はじっと少年達の前で止まっている。1人の少年は恐る恐る影に目を向けた。


(女…?いや、え?)


 少年は目を疑った。何故ならば頭部だと思われる所に獣耳らしき形があったからだ。少年は少し、ほんの少しだけ興味を持った。そして、勇気を振り絞って腹を括ったようにその影から伸びる本体を見る。


(き、きつね?)


「おい、ちょ、見上げてみろよ。なんか、き、きつ、ねが…いや、きつねと人間のハーフ?」


 小声で少年はもう1人の少年に言った。もう1人の少年も恐る恐る目をあげる。少年達が目にしたのは紛れもない、妖狐だった。腰まで伸びる乱れたボサボサの金髪、破れた着物らしき服、いや巫女?そんなのはどうだっていい。顔は長い前髪で隠れて見えない。ただこれだけはわかる。

 ―――感情がない―――

 少年達はやっとの思いで口を開いた。


「な、なぁ。あんたが噂の…」


 そこまで言って固まった。なんて言えばいいのか分からなかったからだ。化け物と言っていいのか?化け物と言ってしまえば、傷ついてしまうのではないか。ぐるぐると考えを巡らす。


「あの、あなたは一体…?」


 今度はもう1人の少年が口を開いた。


「………」


 妖狐は何も答えない。だからといって、危害を加えようともしない。

 すると、妖狐は鈴を持った右手を挙げた。そして

 ―――シャン―――

 鈴を鳴らした。するとどういうことなのだろう。どこから出てきたのか分からない霧は少年達を覆う。妖狐の姿が見えなくなっていく。


「あ、おい!ま、待て!」


 少年は声をあげた。少しすると、霧が晴れる。少年達は目を見開いた。村だ。少年達の村が見えたのだ。


「帰ってきてる…。な、なんで?」

「はァ!?」


 1人の少年は声を荒らげる。そりゃそうだ。さっきまで山の中にいて、妖狐に会って、鈴を鳴らした途端、霧が自分達を覆って、気づいたら自分達の村に帰ってきていたのだ。


「なぁ、これって…。」

「うん。もしかしたら、あの妖狐は僕達を助けてくれたのかもしれないね…。」

「じゃあ化け物とか悪い奴じゃねぇじゃん、あいつ。普通に良い奴じゃん。なんであんな悪い噂立てられてんの?」

「……知らないよ。とにかく今日はもう帰ろう。怒られちゃうからね。」

「そうだな。じゃ、おやすみ」

「うん、おやすみなさい」


 あの妖狐は一体誰だったんだろうか。その真相は現地に行って自身の目で見た少年達も、誰も知らない―――。




第1章 噂 [完]

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