第13話
勉強会の次の日である日曜日。昼食を食べ終えた俺は、出かける準備をしていた。
「あれ?お兄ちゃん、今日も出かけるの?」
「ああ。まあな」
「最近、日曜日になると外に出てるよね?ちょっと多くない?」
市菜の指摘を聞いた俺は、最近の日曜日を思い返してみる。……うん。確かに出かけすぎかもしれない。
俺は日曜日の2週間に一回、美保とまるちゃんに会いに療心学園を訪れている。その事実を知らない市菜からすると、俺は出かけすぎに映るかもしれない。
「そ、そうか……?」
「うん。絶対多いよ。なにしてるのかな~?って感じ」
だが俺は、誤魔化すことを選んだ。市菜に知られても問題ないとは思ったのだが、やはり俺だけで話すことを決めるのは違う気がする。
当人である、美保とも話し合ってからの方がいいだろう。俺だけで話せる内容でもないし、ここは話を逸らすことにする。
「ま、まあ、確かに多いかもな……。そ、それより、この服、どうだ?」
「え?服?ま、まあ、似合ってるけど……。っていうか、新しい服だね」
「おう。昨日買ったばっかだ」
俺が今着ているのは、昨日買ったアウターである。桜蘭には似合ってると言ってもらったが、市菜から見ても大丈夫なようだ。
「へー……。これ、お兄ちゃんが選んだの?」
「いや、桜蘭が選んでくれた」
「あー……。なるほど。だから似合ってるんだ」
だから、とはどういう意味だろうか。まるで、普段は似合っていない服を着ているような言い方なんだが……。
「なんだよその言い方は。俺だって、桜蘭に似合ってる服を選んだが?」
「まあ、それは分かるよ」
「……市菜の中で、俺のファッションセンスはどうなってんだよ?」
俺はつい、市菜にそう聞いてしまった。市菜の中での俺のファッションへの評価が、全く分からなかったからだ。
「お兄ちゃん、自分のファッションに関してはそこまでなのに、他人のファッションは出来るんだよね~……」
「ど、どういうことだよ?」
「私やお母さんの服選ぶ時、直感で選んでるんでしょ?その直感がいいんだろうね。でもその直感は、自分の服を選ぶ時は発動しないみたい」
「な、なんだよそれ……」
マジでどうなってるんだろうか、俺の直観は。俺の服を選ぶ時もちゃんとでればいいのに。
「ま、私とお母さんは助かってるけどね!お兄ちゃんの直観!それに、今日のはほんとに似合ってるから、そのままでいいと思う!」
「そ、そうか……。ありがと、な……」
俺は複雑な気持ちになりながら、市菜にそう返すことしか出来なかった。俺は少し肩を落とし、玄関へと向かう。
「じゃあ、行ってくる……。晩御飯までには帰ってくるから」
「うん。りょーかい。行ってらっしゃい。お兄ちゃん」
「ああ。行ってきます」
俺が靴を履いてから市菜にそう言うと、市菜は手を振って俺を見送ってくれる。俺はそんな市菜に手を振り返し、療心学園へと向かいだした。
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