第1話
5月が終わって、6月に入って少したった。一学期の期末テストが少しずつ近づいてきたこの頃であるが、勉強しているかどうかは人それぞれだ。
「「全然勉強してねー!」」
俺のすぐそばで、勝と秀明がそう叫んだ。そう。勝と秀明は、勉強してない勢なのだ。
「ま、まあ、まだ試験まで時間はあるし……。これから勉強していこうよ」
勉強していないことを嘆く勝と秀明に、桜蘭が苦笑いをしながら二人を慰めた。俺はそんな勝と秀明に対してため息を吐く。
「はぁ……。でもまあ、今までもなんだかんだ赤点は免れてるし、何とかなるだろ」
「というか、普通にやってれば赤点はないだろ」
「「お前と一緒にすんな!」」
利光が言った言葉に、勝と秀明がかみついた。利光は勉強をしている勢であり、勉強ができる。
毎回、利光の点数は高い。正直、赤点など眼中にないと言っていいだろう。
「あ。じゃあ、勉強会しない?」
「勉強会?でも、期末までまだ時間があるが……」
「だから、だよ。この頃から始めていかないと。継続は力なり、だからね」
桜蘭の言っていることはもっともだ。つまり勉強会を、定期的にやっていくということだろうか。
「じゃあ、これから1週間ごとぐらいにやっていくって感じか?」
「うん。そうだね。それでいいかな?」
俺の質問に頷いた桜蘭は、利光と勝と秀明に確認をとった。そんな桜蘭の問いに、利光がいの一番に頷く。
「ああ。俺は別に構わない。教えたら、俺の勉強にもなるしな。日程は確認しないといけないが……」
利光は彼女のこともあるので、そことの兼ね合いもあるのだろう。それでいうと、俺も美保とまるちゃんと会う日もあるので、そこは考えなければ。
だが、当の本人たちである勝と秀明は、嫌そうな顔をしていた。勉強してない、と言っておきながら、進んで勉強したくないのだろう。
「えー……。今週からか?」
「今週からじゃなくてもよくね?来週からでも……」
「そうやって先延ばしにするから、ピンチになるんだぞ。桜蘭も言ってるだろ。継続は力なりって」
「「うっ……!」」
勝と秀明は図星をつかれたような反応を見せる。そして、勝が先に息を吐いて納得した。
「……分かった分かった。やるよ」
「はぁ……。しょうがねえか」
勝が納得してから、秀明も頷いた。二人とも、このままだとまずいということになったのだろう。
「じゃあ、土曜日の放課後にしよっか。皆、大丈夫?」
「おう。土曜日なら、大丈夫だぞ」
俺が美保とまるちゃんに会いに療心学園に行くのは、その多くが日曜日だ。土曜日ならば、何の問題もないだろう。
「俺も問題ない。二人は?」
「おう!大丈夫だぜ!」
「俺もだ」
利光が頷いてから、秀明と勝に確認をとる。秀明と勝もそれぞれ頷き、問題がないことを示す。
「よし。じゃあそれでいこう。美保たちも誘うか?」
「いや、それは止めておこう。そうしよう」
俺がそう提案すると、秀明が食い気味に否定してきた。なぜそこまで嫌なのだろうか。
「勉強教えられるところを見られたくないんだろ?」
「バ、バッカ!そんなんじゃねえよ!」
「あーはいはい。もういいから。誘わない方向でな」
秀明の否定に利光がそう言うと、秀明はうろたえて更に否定した。そんな秀明をなだめるように、勝がそう言う。
俺は分からなかったが、取り合えず美保たちを誘わないことは分かった。俺が首を傾げながら3人を見ていると、桜蘭が俺に話しかけてきた。
「勉強会、楽しみだねっ」
「……ああ。そうだな」
桜蘭が可愛い笑顔を浮かべてそう言ってきたので、俺も微笑みながら返事をする。こうして、主に勝と秀明のための勉強会が、男子のみで行われることになった。
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