第61話
「何をしてるんだ?お前ら?」
俺がそうクラスメートに問いかけると、クラスメートはバッ、と俺の方を一斉に見てきた。俺はそんなクラスメートに、驚いて何も言えなくなる。
「ああ。いや、何でもない」
「そうだな。なんでもないな」
「うんうん。心南ちゃんを尋問何てしてないから~」
「お、おう……?」
よく分からないが、心南と話していたことに違いはないようだ。俺が戻ってきたことを皮切りに、心南からクラスメートが離れていく。
俺はそんな心南の隣に座った。そして小声で、謝罪の言葉を告げる。
「さ、さっきはごめん。心南」
「……ん。後で聞くから、今はいい」
「そうか……。ありがとな」
そう言ってくれた心南に、俺はきちんと礼を告げる。気になっているのに黙っていてくれるのは、本当にありがたいことだ。
「……午前の部も、あとちょっとか」
「そうだね~!もう少しって感じだね!」
俺の呟きに、照花が反応してくれた。昼休憩を挟んだ午後の部の最初の競技は、クラブ対抗リレーだ。
そう、まさに俺がリベンジに燃える競技である。文化部同士のリレーではあるが、負けられないものがあるのだ。
「早えなぁ……。昼休憩終わったら、俺らも準備しねえとな。午後の部に出場するやつ固まってるからよ」
「ああ。お互い頑張ろうな。勝」
俺と勝はそう言って、笑い合った。そんなことをしていると、美保が戻ってきた。
「ただいま。皆」
「おー!美保ちゃん!遅かったね!そんなに混んでたの?」
「う、うん。まあ、ね。それより、今体育祭の方はどんな感じなの?」
美保にそう言われて得点の方を見ると、赤組が1位に躍り出ている。先程まで1位だった青組を抜いて、だ。
「お、1位じゃん」
「ほんとだ!これは私たちも頑張って、この順位を死守しなきゃね!」
俺が1位であることを告げると、照花がやる気の出る一言を言ってくれる。そんな照花の言葉で、クラスメートの皆の士気が更に上がった気がした。
「おっしゃ!後半戦も頑張っていかねえとな!」
「そうだね。せっかく、今1位なんだもん。このまま終わりたいよね」
確かに今現在、我らが赤組は1位ではあるのだが、2位である青組とそこまでの差はない。さらに言えば、3位である黄色組と、最下位の緑組とも、そこまでの差はないのだ。
この体育祭はまさに今、大接戦と言えるだろう。午前の部終了間際でこれなのだから、午後の部は更に熾烈極まる戦いになることは間違いない。
ここまできたら、俺だって優勝したい。誰でも、簡単には負けたくないのだ。
そう思った俺は、応援に熱を更に入れる。そして改めて、午後の部で頑張って戦うことを誓ったのだった。
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