表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/170

第42話

 放課後のホームルームを終えた俺は、勝の元へと歩みを進めた。高畑は用事があるので、もうすでに別れを済ませている。


「よう勝。お疲れ」


「おう。信護もな」


 俺たちがそう言い合っていると、美保と羽木も俺たちの所へと歩いて来た。二人は俺と勝にねぎらいの言葉をかけてから、本題に入る。


「お疲れ様。二人とも」


「お疲れー!それで、どこ行こっか?」


「そうだな……」


 昼食を取りたいが、個室で食べれるところは高校生である俺たちには厳しい。どこかチェーン店に入って、先に昼食を取った方がよさそうだ。


 ならまず、何を食べたいのか各々に聞いてみなければ。それによって、行く店が変わってくる。


「なんか、食べたいものないか?それがある店に行こうぜ。話す場所は、そっから考えよう」


「そうだな。そうしようぜ」


「なら私、ラーメン食べたい!」


「私も、中華料理を食べたいかな」


 美保と羽木の食べたいものが一致した。こうなれば、もう中華料理店一択だろう。


 ラーメン屋ではなく、中華のチェーン店に行こう。その方が注文の幅も広がるし、何より学校から近い。


「じゃあ取り合えず、学校の近くのあそこ行くか」


「おう。いいと思うぜ」


 そうと決まった俺たちは、そろって教室から出ていった。廊下で4人並んで歩くわけにもいかないので、俺と勝、美保と羽木のペアに分かれて歩く。


「……そういえば、勝は体育祭のクラブ対抗リレー走るのか?」


「ん?おう!今年も走ると思うぜ。また、信護と勝負かもな!」


 俺は、体育祭のことを口に出してしまう。考えないようにしていたのに、だ。だが、勝は特に違和感を持つことなく、俺の質問に答えた。


 俺と勝は所属しているクラブは違うものの文化部なので、クラブ対抗リレーでは敵になる。去年は互いに第一走者で、タッチの差で負けた。


「……そうだな。負けねえぞ」


「ははっ!文化部では今年も俺たちが貰うぜ?運動部には敵わないけどな!」


「運動部と言えば、桜蘭たちも走るんだろうな」


「つーか、運動部はこれから走るだろ。ウォーミングアップで」


「確かに」


 桜蘭たちと言ったのは、利光と秀明も運動部に所属している。だから、放課後遊びに行くのが難しいのだが。


「そういえば二人とも、文化部だけど足早かったもんね」


「そうだね!頑張って~!」


「まだ早えよ。頑張りはするけどな!」


 羽木の応援に、勝がそう力強く答える。俺も足には少しだけ自信があるので、頑張りたい。


 去年、部長に応援してもらったのに、勝に勝てなかった。俺の力が足りなかったからだ。


 今年は負けない。負けっぱなしは、性に合わないのだ。


「2度も負けてたまるかよ」


「へっ……!上等だ……!」


 俺と勝は獰猛な笑みを浮かべながら、睨み合う。そんな俺と勝に、美保と羽木が声をかけてきた。


「お~!二人の戦い、楽しみにしてるよ!」


「ふふっ。そうだね。ほら、靴に履き替えよ?」


 美保の言葉に頷いた俺たちは、靴箱から靴を取り出す。そして、履き替えようとしたが、俺のスマホから音が鳴った。


「悪い。俺だ」


「おう。今確認して大丈夫だぞ」


「ああ。ありがとう」


 勝に礼を言い、俺は自分のスマホを開く。すると、俺が所属するクラブの部長から連絡が来ていた。


 その内容は、クラブ対抗リレーの打ち合わせの日程についてだった。予想通りだったので、了解です、と返そうとしたが、その前に新しく連絡がくる。


【今年も、期待しているよ。小田後輩】


 そのメッセージを見た俺は、ドキリとしてしまう。だがすぐに、その心を落ち着かせた。


 ……この思いは、もう諦めたんだ。これ以上、何も望むな。


 俺は一度息を吐き、了解ですと打った後に頑張りますを付け加え、部長に返信する。その後すぐにスマホをポケットに戻し、靴を履いてそのひもをきつく締めた。


読んでくださりありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ