第5話
旅館に着いた俺たちは荷物を預け、外へ出ていた。これから自由行動で、各自昼食を済ませる予定だ。
旅館には夕食までに戻ってくればいいのだが、それより前でもいい。自分の作品が進んでいないなら、早めに帰るのもありだろう。
かく言う俺も、昼食を済ませて少し観光をすれば、旅館に戻る予定だ。そんなに遊んではいられない。
「では、少なくとも夕食までには旅館に戻ってくるようにな」
そう言い残した生駒先輩は、黒岩先輩と共に進みだした。どこか、行きたいところでもあるのだろうか。
「さて、と。お前らはどうするんだ?」
「あ、私はパスタが食べたいです!一緒に行きませんか?」
俺が残ったメンバーに問いかけると、今野が勢いよくそう言ってきた。そんな今野の案に、細川が賛成する。
「いいね。俺も行くよ」
「やったぁ!先輩たちはどうですか?」
今野が俺たちの方を向いてそう聞いてきた。俺はそんな今野に、首を横に振って断りを入れる。
「いや、俺は止めとく。高山ラーメンを食べておきたくてな」
「えー……。そうですかぁ……」
「私も食べたいから、小田君と一緒に行こうかなぁ~」
俺の返答によって落ち込んでいる今野に、橋本は更なる追い打ちをかける。すると、河合もそれに続いた。
「俺もご当地ラーメンは気になるし、そっちに行く。悪いな」
「河合先輩もですか……」
「仕方ない。僕らだけで行こう」
「そう、だね」
「では、先輩方。また後ほど」
細川は俺たちにそう告げると、今野と共にこの場から去っていった。細川と今野を見送った俺たちもまた、三人で歩き始める。
「結局、学年別になったな」
「ね~。去年もそうだったよね~」
「確かにな。それで、高山ラーメンはどこで食べるんだ?」
河合が俺と橋本の方を向いて、そう聞いてきた。だが、俺は別に店舗を決めているわけではないので、具体的な店を答えることができない。
「いや、何も考えてない。ただ、せっかくだし食べたいなぐらいだな」
「……なら、すぐそこに高山ラーメンと書いてあるが」
「……マジ?」
河合が指差した方を見ると、そこには高山ラーメンと書かれたのぼり旗があった。それを確認した俺は、橋本と河合に話しかける。
「じゃあ、もうそこでいいか?」
「いいんじゃないか?なあ橋本」
「うん。いいよ~」
河合と橋本から了承を得た俺は、そののぼり旗が立つ店に向かって歩いて行く。駐車場を抜けて店の前まで来た俺たちは、のれんをくぐって扉を開き、店の中へと入っていった。
「いらっしゃいませ~!何名様でしょうか?」
「三名です」
「かしこまりました。こちらの席にどうぞ~」
俺たちはテーブル席に案内され、まずは俺から席に着く。そしてその後、俺の隣に橋本が腰かけ、俺の前に河合が座る。
「何にする~?」
「まあ、俺は普通の高山ラーメンを食べようかな」
「俺もだな」
橋本にそう聞かれた俺と河合は、そう答えた。やはり、定番の高山ラーメンを食べてみたいのだ。
「じゃあ、私もそうする~。すいませ~ん」
「はい!ただいまお伺いします」
橋本も俺たちと同じものに決め、店員さんを呼んだ。店員さんに注文を済ませた俺たちは、高山ラーメンが届くのを待つのであった。
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