第2話
「あ、もう結構来てるね~」
「そうだな。俺たちも行こう」
俺と橋本は並んで歩き、集合場所へと戻っていく。それに気づいたのか、今野が俺たちに手を振ってきた。
「おはようございまーす!小田先輩に、橋本先輩!」
「おう。おはよう今野」
「おはよ~」
今野が挨拶をしてきたので、俺と橋本もきちんと返す。すると今野が、俺と橋本に問いかけてきた。
「二人でどこに行ってたんですか?」
「ああ。ちょっとコンビニにな」
「そうだよ~。これ、小田君に買って貰っちゃったんだ~」
「へ、へー……。そうなんですね……」
橋本がそう返事をすると、今野は俺と橋本を何度か見比べた。俺は今野のその行動の意味が分からなかったので、首を傾げる。
「どうした?今野?」
「い、いえ!なんでもないです!」
「そ、そうか……?」
今野がそう言うので、俺は気にしないことにした。そうやって話していると、河合が俺たちに話しかけてきた。
「おはよう。橋本に小田」
「おはよう河合」
「河合君おはよ~」
「ああ。それ、買ってきたのか?」
河合はそう言って、俺と橋本が持つカルピスとミルク飴を指で差してきた。俺はカルピスソーダとミルク飴を一度見てから、河合に頷きを返す。
「おう。買っといたほうがいいかと思ってな」
「私の分も小田君が買ってくれたの~」
橋本はそう言うと、俺との距離を少し縮めてきた。そんな橋本に驚いた俺は、視線を橋本の方へと向ける。
「そ、そうなの、か……」
「おはよう諸君」
河合も驚いたような顔をして俺と橋本を見ていたが、そんな俺たちに生駒先輩が声をかけてきた。声が聞こえてきた方を見ると、そこには車椅子に座った生駒先輩とそれを押す黒岩先輩の姿があった。
「あ、おはようございます。生駒先輩、黒岩先輩」
俺が挨拶したのを合図に、他の文芸部員が続いていく。全員が挨拶をし終えると、生駒先輩が頷いた。
「よし。全員揃っているな。これから、特急ひだに乗る。指定席の切符を配るから、確認してくれ」
生駒先輩がそう言うと、黒岩先輩が切符を取り出す。だが、黒岩先輩が切符を配る前に、橋本が声をあげた。
「すいませ~ん。一つお願いがあるんですけど~」
「ん?なんだ?」
「実は、小田君と隣の席にしてほしいんですよ~」
「「「……え?」」」
橋本のそんな言葉に、俺と今野と河合がそう声を漏らした。なぜ橋本がそんなことを言ったのか、分からなかったからだ。
「……ふむ。なぜ小田後輩と?」
「それは、ですね~。その方が楽だからなんですよ~」
「……ん?ああ。そういう事か」
橋本の言葉を聞いて、橋本が俺を隣の席にと言った理由が分かった。ミルク飴を二人分として買ったので、隣にいた方が都合がいいと考えたのだろう。
だが正直、別に隣でなくてもいい気がするんだが……。ただ、橋本が隣がいいというのなら、俺が断る理由もない。
「小田後輩からしても、その方が?」
「ま、まあ、そうですね。確かに楽ではあります」
「……なら、そうすればいい。黒岩」
「ああ。分かった」
生駒先輩がそう黒岩先輩に声をかけると、黒岩先輩が俺と橋本に切符を渡してきた。そこに書かれている座席は確かに、隣同士である。
「……よし。これで配り終えたな。では、向かうとしよう」
生駒先輩がそう言うと、黒岩先輩が車椅子を押して改札に向かって行く。俺たちもそれに続いたが、歩き始めると橋本が俺のすぐそばまで寄ってきた。
俺は驚きつつも、指摘するほどの事でもないのでそのまま歩く。それによって鋭い視線を二人分ほど感じたが、俺はそれに気づかぬふりをしながら改札を通った。
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