第1話
一学期が終わって、少し経った。8月になって暑さが更に増したが、30度後半に届いていないだけまだマシだろう。
そんな暑さ真っ只中の日に、俺は岐阜駅に来ていた。文芸部の合宿の集合場所がここだからだ。
集合場所に着いたはいいものの、俺以外の文芸部の部員が見当たらない。どうやら、少し早すぎたようだ。
集合時間までは、まだ30分ほどの時間がある。遅れないようにと早めに来たが、少し早く来過ぎただろうか。
「あ~。やっぱり早めに来てたね~」
「ん?お、橋本か」
俺がそう思ってスマホを見ていると、後ろから橋本が声をかけてきた。俺しか来ていないと思っていたが、まさか橋本がもう来ていたとは。
「おはよ~。小田君。暑いね~」
「おう。おはよう。真夏だし、仕方ねえよ。でもまあ、高山に着いたら多少マシだと思うぞ?」
「だといいけどね~」
橋本はふわりと笑いながら、俺に返事をしてきた。橋本は、いつものんびりとしている印象がある。
ふわふわとしていて天然なところもあり、男子生徒からの人気が高いらしい。可愛くて接しやすいのも、人気が高い理由だろう。
「ねえねえ。まだ時間あるし、ちょっとコンビニ行かない~?飲み物とか買いたいんだけど~」
「ん?コンビニ?そうだな……」
時間は橋本が言ったように、まだ20分強はある。その証拠に、まだ俺たち以外の文芸部員がこの場所にいない。
ここから特急に乗って2時間ほどかけて高山に向かうわけだし、色々と買っておいた方がいいかもしれない。そう思った俺は、橋本に頷きを返す。
「よし。俺も行くよ。飲み物もそうだが、食べ物も何かしら買っておきたいしな」
「おっけ~。じゃあ、コンビニに行こっか~」
俺と橋本は並んで歩き、すぐ近くにあるコンビニの中へと入っていった。まずは二人とも買う予定がある、ドリンクコーナーへと向かう。
「色々あるけど、何にする~?」
「やっぱり、冷たいのが大前提だな。この暑さだし……」
「だね~。私はカルピスかなぁ~」
橋本はそう言いながら、カルピスのペットボトルを指差した。そう言われると、俺もカルピスの気分になってきたので、俺もまた別のカルピスを指差す。
「じゃあ、俺はカルピスソーダかな。食べ物はどうする?なんか買うか?」
「う~ん……。朝ごはんは食べてきたから、食べ物はいらないかなぁ~。飴とかはどう~?」
「飴か……。ありだな」
移動の時間中に舐めることも出来るし、執筆中にも使える。この場で買っておいても損はないだろう。
「でも、1個ずつ買うと多いよね~。2人で1個でいいんじゃないかな~?」
「そうだな。何を買う?無難にミルクとかか?」
「そうだね~。それでいいよ~」
橋本が頷いてくれたので、俺はミルク飴を手に取る。それからドリンクコーナーに戻り、カルピスとカルピスソーダも手に取った。
「え……。それ、私の……」
「ああ。俺が橋本の分もまとめて買うよ。お金も俺が出す」
「で、でも……」
「これぐらい、いいって」
俺はそう言ってからレジへと向かい、パパッと会計を済ませる。買い終えた商品を持った俺は、橋本の元まで戻ってカルピスを手渡す。
「ほら、これ」
「あ、ありがとう……」
カルピスを受け取った橋本は、戸惑いながらもお礼を言ってくれた。ミルク飴は取り合えず俺が持っておけばいいだろう。
「買いたいものは買ったし、そろそろ戻るか?」
「そ、そうだね~。集合時間も近づいて来てるし~」
橋本に言われてスマホで時間を確認すると、集合時間まで後10分程になっていた。そろそろ他の部員も集まってきているのではないだろうか。
俺と橋本はそれぞれコンビニで買ったものを手に持ったまま、集合場所に戻る為にコンビニを出る。するとその場所に、生駒先輩と黒岩先輩以外の文芸部員がすでに集まっているのが見えた。
読んでくださりありがとうございます。
『幼女を拾ったら同級生の妻ができました。(なお、彼氏はいる模様)』の更新を長らく止めてしまい、申し訳ありません。
毎日更新というわけにはいきませんが、第3章に入ってからもよろしくお願いします。