第16話
ボーリングを終えた俺たちは、フードコートで昼食をとっていた。フードコートなので、各々好きな店で食べたいものを食べている。
俺はフードコートの中にあったトンカツ屋で、ヒレカツ定食を買った。ご飯に味噌汁、漬物も付いた定食だ。
俺はヒレカツを箸で挟んで、口へと運ぶ。このヒレカツはサクサクで、とても美味かった。しかも、勝負ごとに勝った後だから、なお。
「……幸せそうだね~」
「おう。勝った後だからな」
俺がそう返すと、むー、と頬を膨らませて不満そうに俺を見て来た。悔しい気持ちを表しているのだとは分かるが、斎藤がそれをやるととても魅力的に見える。
俺は皆に気付かれないように、斎藤からサッと視線を逸らす。照れているのをバレたくなかったからだ。
「はあ……。もうちょっとだったのになぁ……」
斎藤はそう言って、自分で買ったうどんを啜る。実際、スコアは僅差だった。だが、最後の最後で俺がストライクをとって勝ったのだ。
本当にギリギリ勝った、という感じだ。俺としては楽しかったし、またやりたいと思えた。
「斎藤さんもすごかったよ?また、二人のボーリング見てみたいなぁ」
「うんうん!柴田君もなかなかだったけどね!」
「ははっ。あの二人には敵わねえよ」
蕎麦を食べる桜蘭の言葉に、ちゃんぽんを食べる羽木が同意して勝も追加で褒める。褒められた勝は笑ってそう反応した。
勝のスコアは俺と斎藤には及ばないものの、俺と斎藤以外では最も高いスコアだった。そんな勝は、ラーメンを食べている。
「小田も美保も、ボーリング好きなの?」
高畑がヒレカツを食べながら、そう尋ねて来た。高畑は俺と全く同じものを選んでいる。
「ああ。まあ、好きだな」
「うん。好きだね」
「ふーん……。じゃ、また皆で行こ。アタシも楽しかったし」
高畑がそう提案すると、俺たちの間に笑みが広がる。俺も楽しかったし、また皆とやりたい。他の皆も、そう思ってくれているのだろうか。
「ああ。そうだな」
「そうだね。また行きたいよ」
「その時には、また勝負するのかな?信護君と斎藤さん」
俺と斎藤が高畑の言葉に同意すると、桜蘭がそう言った。それに対して、羽木が反応する。
「次は美保ちゃんが勝つ方に賭けるよ!」
「お、じゃあ俺は信護に賭けるぜ?」
羽木が斎藤に賭けるというと、勝が俺に賭けてきた。もちろん、俺は次も負けるつもりはない。
「あはは。照花ちゃんに応援されてるし、次は勝ちたいな」
「俺ももちろん、また勝ちたいさ。……よし。ご馳走様」
俺は手を合わせて、そう言った。見ると、俺以外の人たちはまだ食べ終わっていない。
だが、俺以外の人たちももうすぐ食べ終えそうだ。俺は席を立ち、お盆を持って返しに行く。
席を取った映画の時間まで、後30分ほどだ。移動するには、そろそろいい時間だ。
皆となら、映画を見ても楽しいだろう。俺はそう思いながらお盆を返し、その皆の元へと戻っていった。
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