第68話
目を覚ますと、目の前には全く知らない天井があった。俺は辺りを見渡して、ここがどこなのかを確認しようとする。
だが、ここがどこかどうかが分かる前に、美保の姿が目に入った。俺は美保がいる右側に顔を向けて、美保の名前を呼ぶ。
「美、保……?」
「信護、君……?起きた、の……?」
「あ、ああ……。それよりここは……。痛っ!」
俺が起き上がろうとすると、俺の体に痛みが走った。そんな俺を見て、美保が慌てて止めてくる。
「だ、駄目だよ!まだ、安静にしてなきゃ……!」
「わ、悪い……。そ、それで、ここは?」
「大学付属病院、だよ……。目が覚めて、本当によかった……!」
美保が涙目になりながら、俺にそう伝えてくる。あれから、俺はどれぐらい眠っていたのだろうか。
「今、何時だ……?あれから、どれぐらいたった?」
「……もう、夜が明けてるよ。今は、朝の8時ぐらい、かな……」
「なっ!?そ、そんなに……!?」
俺は自分が思ったよりも寝ていたことに、驚いてしまう。俺はそんなに長い時間、寝てしまっていたのか。
「うん……。本当に、心配したよ……!」
「……悪い。心配かけて、ごめんな」
「……ううん。謝るのは、私の方だよ……」
「……え?」
俺が美保に謝罪をすると、そんな答えが返ってきた。俺は美保のその答えの意図が分からず、聞き返してしまう。
「私――」
「失礼します。……あ、目が覚めたんですね!」
美保が話そうとした瞬間、看護師さんが入ってきた。俺が美保から看護師さんの方に視線を向けると、美保もまた看護師さんの方を見る。
「というか、目が覚めたのならナースコールをしてください!お願いしましたよね!」
「す、すいません……。つい、忘れてしまって……」
看護師さんが美保にそう告げると、美保は座ったまま頭を下げて、視線を下に向けた。看護師さんはそのまま俺へと近づいてきて、俺に話しかけてくる。
「どうですか?どこか異常は?」
「か、体が痛いぐらいです……。他は、何も……」
「そうですか。それならよかった」
俺の返答を聞いた看護師さんは、笑みを浮かべてそう言った。すると、その看護師は笑みを浮かべたまま俺から離れる。
「じゃあ、私は先生に知らせてきますね。くれぐれも、安静にしておいてください」
「は、はい。分かりました」
看護師さんはそう言い終えると、病室から出るために扉に向かって行く。そして、看護師さんが扉を開けると、そこには父さんと長井さん、そしてまるちゃんが、扉の前に立っていた。
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