第65話
俺たちはそのまま玄関へと向かうが、このままでは追い付かれてしまう。最後尾にいる俺が、時間稼ぎをするしかない。
少しでも時間稼ぎすれば、警察が来てくれるはずだ。今この場で、皆を守れるのは、俺しかいない。
俺がそう思って男の方に向き直ると、男は手に持っていたものを突き出してきた。その瞬間、俺はその正体に気付く。
「なっ!?スタンガ――!」
「おせえ……よ!」
俺は避けようとするが間に合わず、俺の腹にスタンガンが当たる。そのスタンガンによって、俺に電撃が浴びせられた。
「ガッ……!」
ビリビリと、俺の体に電気が流れる。気絶するほどの威力ではなかったが、体から力が抜けていき、思ったように動かない。
そんな俺に、男は容赦なく拳を食らわせてきた。スタンガンの電流によってまともに動けなかった俺は、その拳を避けることなど出来ない。
顔面にまともに拳が入った俺は、その場に倒れる。スタンガンの電気も相まって、俺は立ち上がることができなかった。
「ク、ソッ……!」
「し、信護君!!」
倒れた俺に気付いた美保が、そんな大声を上げてくれる。だが、俺が倒れたことを確認した男は、美保たちの方へと向かっていった。
駄目だ。行かせてはいけない。そう思っているのに、俺の体は動いてくれない。
動け……。動け。動けよ!じゃないと、皆がっ……!
「さて、と。邪魔者は片付いたことだしぃ……?戻ってきてもらおうかぁ。まさか、こんなに女が増えるとはなぁ……!楽しめそうだ……!」
「「っ……!」」
そんな男の言葉を聞いた長井さんと純也君のお母さんは、美保と妃奈子ちゃんを守るように2人を抱きしめる。だがその更に前に立ちふさがる子供がいた。
「ああ?おいおい。邪魔すんなよ、ガキぃ。あいつみたいになりてえのかぁ!?」
男の前で両手を広げて皆の前に立ったのは、純也君だった。純也君は何も返さずに、震えて男の前に立ちふさがっている。
皆を、守ろうとしてくれているのだろう。怖くて仕方がないだろうに、皆を守るために立ってくれているのだ。
……ここで、俺が立たなくてどうするんだ。純也君だって、まだ子供なのだ。俺が守らなくて、どうする!
「……待、て」
「はあ?」
「まだ、だっ……!」
俺は力を振り絞って、その場から立ち上がる。まだ、体に痺れは残っているが、そんなことは気にする必要などない。
「……しつけえなぁ。まだ食らい足りないのかぁ?」
「……うるせえ、よ。お前の相手は、俺だっ……!」
男は俺が立ち上がったのを見て、俺の方へと体を向ける。これで男の注意を、皆から一時的に俺の方に移せた。
正直、まだ体が思うように動かないところはあるが、動けないわけじゃない。俺が、皆を、守るんだっ……!
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