第47話
「夏合宿の全てが、このしおりに書いてある。確認してくれ」
俺は生駒先輩からもらったしおりを見て、夏合宿の内容を確認する。もちろん把握はしていたが、まとめて見るのは初めてだ。
行き先は飛騨高山だ。岐阜県内ではあるが、合宿の行き先としていい場所だと思う。
日程は2泊3日。この合宿で、文化祭で販売予定の部誌に載せる作品を完成させる予定なのだ。
「しおりに問題があれば、すぐに言ってくれ。訂正する」
「……俺は大丈夫だと思います」
俺は真っ先に、このしおりに問題がないことを生駒先輩に告げる。一通り見たが、ミスはなかったように思う。
すると次々に、他の部員たちも生駒先輩に問題ないことを言い始めた。この場にいる全員が言い終えると、生駒先輩が頷く。
「よし。ならば、黒岩にも確認をとって、これで決定としよう。黒岩も、そろそろ来ると思うのだが……」
生駒先輩がそう言って扉の方に視線を向けると同時に、部室の扉が開いた。そこに立っていたのは、四角系の眼鏡をかけた男子生徒だった。
「……そう言っていれば、来たな。黒岩」
「遅くなって悪い。もう始まっていたか?」
入ってきた男子生徒は、生駒先輩の同級生である黒岩士郎先輩だった。黒岩先輩は謝罪をしてから、空いていた席に座る。
「遅かったからな。ほら、しおりを確認してくれ」
生駒先輩は黒岩先輩にもしおりを渡し、確認を求める。黒岩先輩はそのしおりをスラスラと読んでいき、1つ頷いた。
「ああ。問題ないだろう」
「よし。なら、これで完成だ。各自、夏合宿に向けて準備しておくように」
「……その前に、テストありますけどね」
生駒先輩の言葉に、俺はそう反応した。すると、生駒先輩と黒岩先輩と細川以外の顔が、渋くなってしまった。
しかし、先程上げた3人は首を傾げていた。特に、生駒先輩はそれが顕著だ。
「……テスト?そんなもの、勉強などしなくても満点だろう?」
「テストは不安ですよ、やっぱり……」
「ふむ。そういうものなのか」
生駒先輩が言った言葉に、俺は不安を吐露する。生駒先輩は俺と皆が同じような反応なのを見て、納得の言葉をこぼした。
「……じゃあ、もう解散か?」
黒岩先輩がしおりを鞄に仕舞ってから、生駒先輩にそう問いかけた。生駒先輩はすぐに、黒岩先輩に頷きを返す。
「ああ。それでいい」
その言葉を合図に、部員の人たちが部室から去っていく。俺もまた、試験勉強をしたいこともあって、席をたった。
「じゃあ、俺も帰ります。テスト勉強をしたいので……」
「む、そうか。気をつけてな」
俺は生駒先輩に挨拶をして、部室から出る。ほとんどの部員は俺と一緒に部室から出て、部室に残ったのは生駒先輩と黒岩先輩のみだった。
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