第37話
次の日の日曜日。俺はまた、療心学園に向かって歩いていた。約束通り、まるちゃんたちに会いに行くためである。
今日から、純也君のことも見ていかないといけない。じゃないと、純也君のお母さんに何も伝えることができないからだ。
俺がそう思いながら歩いていると、昨日すれ違った男と似たような恰好をしている男とすれ違った。俺はまた、その男をチラリと見てしまう。
昨日も今日も顔を確認できていないので言い切ることはできないが、恐らく同一人物ではないだろうか。何か怪しい素振りをみせているわけでもないので、俺はそのまま通り過ぎた。
この男の事は、長井さんに報告するだけで充分だろう。それ以上、俺に出来ることはないだろう。
俺はそのまま順調に足を進め、療心学園の前までたどり着いた。俺は慣れた手つきで、インターホンを鳴らす。
『はい。児童養護施設療心学園です』
「すいません。小田です」
『あ、はいはーい。ちょっと待っててね~』
長井さんのそんな声が聞こえて、インターホンが切れる。俺はいつも通り、療心学園の扉が開かれるのを待った。
しばらく待っていたら、療心学園の扉が開かれる。そこから出てきたのは、インターホンから聞こえてきた声の主である長井さんだった。
「どうぞ、入って」
「ありがとうございます。失礼します」
俺は長井さんに礼を言って、療心学園の中へと入っていく。玄関に着いた俺は靴を脱ぎ、長井さんと共に洗面所へと向かう。
「そういえば長井さん。昨日と今さっき、不審者らしき人とすれ違いました。一応、気をつけておいてください」
「そうなの?警察からは何もなかったけど……。分かったわ。気を付けておくわね」
「そうしておいてください。それと、美保とまるちゃんは?」
俺は不審者のことについて話した後、美保たちがどこにいるのかを聞いた。今日は玄関での出迎えがなかったので、どこにいるのか気になったのである。
「二人なら、部屋で遊んでるわ。手を洗ってから、その部屋まで案内するわね」
「お願いします。……他の子供たちも、そこに?」
「え?いえ、皆バラバラに遊んでいるから分からないけれど……。そこにいるのは妃奈子ちゃんぐらいかしら?」
「そ、そうですか……」
出来れば純也君もいてほしかったが、いないなら仕方がない。この療心学園の中にいるのなら、様子を見ることぐらいならできるだろう。
それにしても、妃奈子ちゃんがいてくれているとは。まるちゃんと一緒に遊んでくれていることを、とても嬉しく思う。
早く、美保とまるちゃんに会いに行くとしよう。俺はそのために、素早くもしっかりと手を洗った。
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