第25話
美保の提案を聞いて目を点にしたのは、勝と秀明だった。確か秀明は、美保たちを誘うのに反対していたはずだ。
「お、いいじゃんそれ。いいでしょ?」
「おー!名案だね美保ちゃん!どうかなっ?」
心南と照花も乗ってきて、俺たちに問いかけてくる。俺はチラリと秀明の方を見てから、こう答えた。
「ま、まあ、俺は問題ないが……」
「うん。僕も大丈夫だよ」
俺が出した結論は、俺自身は大丈夫という返答だった。これなら、秀明が嫌なら断ることができる。
俺が問題ないことを告げたからか、桜蘭も俺に続いてきた。そんな俺と桜蘭の方を、秀明がバッと見てくる。
「……まあ、俺もだ」
少し間を空けてから、利光がそう言った。秀明の視線が、利光の方へと移る。その目は、裏切り者!と言っているように見えた。
「え、えーっと……」
残るは勝と秀明だが、勝が秀明の方をチラリと見ながら悩む素振りをみせる。するとそんな勝に、照花が話しかけた。
「ねえ勝君。駄目、かな……」
「うっ……。あ、ああ……。俺も、大丈夫だ」
「おいっ!」
照花の珍しい上目遣いにやられた勝は、大丈夫だと言ってしまった。そんな勝に、秀明はついに声を出してしまう。
「やったぁ!じゃあ、秀明君はどうかな?」
「い、いや、俺は……」
続いて秀明の説得に取り掛かった照花であったが、秀明は答えを渋る。迷っているのだろうか。
「なに?駄目なん?」
「うっ……!そ、その……」
そんな秀明に、心南が少し秀明に近づいてからそう問う。秀明は数歩ほど後ずさるも、答えることはしない。
「え、えっと……。い、嫌なら、断ってくれてもいいよ?」
「い、嫌ってわけじゃ!」
「じゃあ、いいってことだね!?」
「……あ」
美保が渋る秀明に聞くと、秀明は食い気味にそう答える。だが、その答えを聞いた照花が、そう解釈した。
これは、秀明にとって失言だったのだろう。これで、断る理由がなくなってしまったからだ。
「よし。決まりね。嫌じゃないんでしょ?」
「……おう」
心南の念押しの質問に、秀明は諦めたように返事をした。これはもう、逃れないとおもったのだろう。
「よーし!じゃあ、どこで勉強会するの?」
「前はフードコートでしたけど、この人数だとね……」
照花が聞いてきた問いに、桜蘭が眉をひそめながらそう答えた。確かにこれだけの人数になると、フードコートの1席では足りないかもしれない。
「……なら、俺の家でするか?」
俺はそう、皆に提案した。俺の家なら全員で勉強できるだろうし、学校からも近い。この場における最適解ではないだろうか。
すると、俺の周りにいる皆の視線が、俺に集中する。……どうやら、それで決まりのようだ。
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