第19話
美保の反応を待つ俺であったが、全く喋ろうとしない。その間にも、まるちゃんが俺の手を引っ張って美保へと向かわせていく。
「もしかしてパパ、ママを撫でたくないの……?」
俺が渋っていると、まるちゃんが突然涙目になった。そう言われると、俺としてはもう撫でるしかない。
「い、いや、そんなことないぞ?でも、ママがどう思うか……」
一縷の望みをかけて、俺はまるちゃんにそう告げる。そして、美保の方に視線を向けた。
そんな俺の言葉を聞いていた美保は、体をピクリとさせた。だが、俺とは未だ視線を合わせてくれない。
「……いいよ」
「……え?な、なんて?」
視線を合わせてくれない美保であったが、小さい声が聞こえた。俺はきちんと聞き取れなくて、美保に聞き返す。
「いいよって、言ったの。まるちゃんが言ってるんだし……」
「ま、マジか……?」
美保の言葉が信じられなかった俺は、もう一度聞き返してしまう。美保はそんな俺の問いに、頷いて肯定した。
「ほら、ママもこう言ってるよ!」
「あ、ああ……。そう、だな……」
こうなってしまっては、もはや逃げ道などありはしない。俺は少しずつ、右手を美保の頭へと伸ばしていく。
妃奈子ちゃんとまるちゃんの時と違って、そんなすぐに撫でることはできない。俺は手を少し震わせながらも、ついに美保の頭を触る。
「んっ……」
俺が美保の頭に触れた瞬間、美保がそんな声を上げた。美保のなまめかしい声を聞いた俺は、すぐに顔を赤くする。
だが、ここまできたらもう引き返せない。俺はそのまま、美保の頭を撫でた。
「あっ……!す、すごい……!気持ちいい……!」
「そ、そんなこと言わないでくれ……!」
美保がそう言って顔をとろけさせる。その言葉と顔だけを見ると、R18指定が入ってもおかしくない……のかもしれない。
ま、まだ18歳になってないので、だろうとしか言えないが、それほどのものなのだ。それによって、俺の顔がもっと赤くなる。
「で、でも、ほんとに気持ちよくて……!あうっ……!」
「うっ……!だ、だからさ……!」
美保は続けてそう言って、またも変な声を上げる。だが、気持ちいいのは美保だけではない。
俺も美保の頭を撫でていて、とても気持ちいいのだ。まるちゃんと妃奈子ちゃんとは、違うところがある。
美保の髪は、とてもサラサラで気持ちいい。しっかりと手入れされているからか、触り心地がとてもいいのだ。
髪質もあるだろうが、触っていてここまで心地いいのは初めてだ。自分の髪とは雲泥の差である。
「し、信護君……」
「っ……!み、美保……」
美保が俺の名前を呼びながら、上目遣いで見てくる。そんな美保を見て、俺も顔を赤くさせて名前を呼んだ。
「……は?」
すると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。俺が声の聞こえた方を見ると、そこには純也君がいた。
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