第14話
療心学園に着いた俺は、いつも通りインターホンを鳴らす。すると、これまたいつも通り長井さんの声が聞こえてきた。
『はい。児童養護施設療心学園です』
「あ、すいません。小田信護です」
『あら、小田君?ちょっと待ってて。美保ちゃんとまるちゃんを呼んでくるから』
長井さんはそう言ってから、インターホンを切った。最近はこのパターンが多く、美保とまるちゃんが扉を開けてくれるのだ。
俺は療心学園の前で、その扉が開くのを待つ。しばらく待っていると、その扉が開かれた。
「パパ~!」
「おう、まるちゃん。来たぞ~」
その扉の向こうからまるちゃんが現れて、俺に抱き着いてきた。俺はそんなまるちゃんを受け止めて、その頭を撫でる。
「えへへ!久しぶり~!」
まるちゃんは毎回、そう言ってくる。2週間ごとに会っているので、俺からすればそこまでの長さではない。
だがまるちゃんからすると、ママである美保とは毎日会っているのに、パパである俺とは会えていないのだ。2週間も長く感じるのかもしれない。
「ふふっ。来てくれてありがとう。信護君」
「礼なんかいらないぞ、美保。俺が会いたくて来てるんだから」
「ねえねえ!早く中に入ろ~!」
俺が美保の礼にそう答えると、まるちゃんが声をかけてきた。確かに、このまま外にいるのはよろしくないだろう。
「そうだな。行こうか」
「パパ~!ママ~!一緒に行こ!」
まるちゃんはそう言って、俺と美保それぞれに手を差し出してきた。手を繋いで行こうということだろうか。
「手を繋ぎたいの?だったら、中に戻ったら手洗いうがいしようね?」
「うん!ちゃんと洗うから、繋いで~!」
「信護君。いいかな?」
まるちゃんの返答を聞いた美保は、俺にそう聞いてきた。俺はすぐに頷いて、了承する。
「もちろんだ。ほら、まるちゃん」
俺はそう言って、まるちゃんが差し出してきた手を握る。それを見てから、美保もまるちゃんの手を握った。
「じゃあ行こっか。まるちゃん、信護君」
「うん!」
「ああ」
俺とまるちゃんは美保の言葉に頷いた。それから、歩幅を合わせて歩いて行く。
療心学園の中に入った俺たちは、玄関に着いた。そこで一旦手を離して、それぞれ靴を脱いでいく。
靴を脱ぎ終えた俺たちは、また手を繋いで歩き始める。今度は、洗面所に向かってだ。
するとその道中、2人の子供が目に入った。そのうちの1人は、純也君だった。
「あ……」
「っ!」
俺と純也君は目が合ったが、その後すぐに純也君が目線を逸らしてどこかへ走っていってしまった。俺は声をかけかけたが、何と言えばいいか分からず言えずじまいだ。
「ちょ、ちょっと!もう……」
「純也君、どうしたんだろう……」
もう1人の子供が純也君に声をかけたが、純也君は意に介さずに走り去ってしまう。そんな純也君を見て、美保は首を傾げていた。
「はぁ……。あ、あの。久しぶり。お兄さん。話すのは、鬼ごっこの時以来、かな?」
その女の子はため息を吐いてから、俺に声をかけてきた。俺はその言葉で、その女の子が誰なのか思い出す。
「ああ!君は、あの時の……」
「う、うん」
その女の子は、俺が鬼ごっこの時に捕まえた足が速い女の子だった。
読んでくださりありがとうございます!




