25話目
25話目 軍人さん
圧倒的暴力。日々訓練されてきた俺たちがなぜここまで蹂躙されているのか。疑問に思えるほどの圧倒さに文句すら出てくる。
しかし、やるべきことは理不尽を漏らすことではない。
首にかけている笛をくわえ、使おうとする。
スッと息をすい、思いっきり吐き出す。
「秘宝 錯乱」
笛から出てくる音により、強制的に酔わせる事ができる秘宝だ。これによってある程度は鎮圧できるはず。
支払われる代償を感じながら、目の前の理不尽から目を離さない。
「な! なんで倒れない!」
隙を見逃さぬよう、凝視していたが、なぜか酔っていない。秘宝が不発に終わったのかと思ったが、代償が支払われているので、そんなことはないだろう。
「はぁ? ……もしかしてお前秘宝使いやがったな。さっきから目の前が揺れてうざったいんだよ」
俺の声が聞こえたようで、敵である、どす黒い角が生えいる人間が言葉を返してきた。
目をつけられた。
秘宝を使った相手に情けを与えるほどの人はいないだろう。俺はそのことがわかっていたから、思いきり走って逃げようとした。
これでも、軍の中では一番脚が速いんだ。逃げることには自身がある。
だが、駄目だった。追いつかれた。
走り始めて2秒、目の前にはそいつがいた。元々5メートルは離れていた上に、俺はそいつから離れるように走ったはずだなのに一瞬で抜かされ真ん前で立っている。
体が震え、今この状況が夢であればと本気で思う。もし秘宝を使っていなかったら、目を付けられることなんてなかったのかなって後悔もした。
「テメーは駄目な領域を超えた。死に晒せ」
ゆっくりと顔面を持たれ持ち上げられる。
足は地面から離れ、逃げることはできない。もし、逃げようとしたら覚悟を決める暇もなく殺されるんじゃないかと思うと、ピクリとも動けなくなる。
だが、そんなとき助け舟が来てくれた。
「一回やめてくれないか!」
最高責任者だ。
最高責任者が声を上げてくれたおかげで、俺のことは興味なくなったのか、手を離してくれた。
尻餅をついた俺は、その後の寸劇を呆然としながら守ることしかできないのだった。
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