20話目
20話目
アルべノード
天落が東京スカイツリーに向かってから少したった頃、保安庁に陣取っていたアトラス教の所に、待ちに待っていた援軍が到達した。
吉村と有紗は食料の量に冷や汗をかきながらも、向かい入れるのであった。
「今回は来てくれてありがとう。これだけに軍が来てくれるなんて思ってもいなかったよ」
「王の命令だからな! 今回の戦争は気合を入れさせてもらっているぜ!」
その様子を横目に見ながら、アルべノートは整備した部屋と、残っている食料が足りるのか計算をしている。食料であれば占拠した市から分けてもらえればいいから、そこまで深刻問題ではない。
しかし、部屋の数は大きな問題だ。
ぱっと見1万人はいないだろうが、それに近しい程人がおり、それだけの人たちを野宿にさせてし合ったらどれだけの体調不良者が出るか分からない。
治療道具は限られているため、戦い前の今はあまり使いたくはないのだ。
すると吉村がこちらにアイコンタクトを取ってきた。多分部屋の事が気になるのだろう。
「保安庁には300人は入れる部屋が4部屋、50人が入れる大部屋が24部屋あり、2人用の個室が30部屋あります。少し歩きますが、近くには宿泊施設があるためそちらと併用する事で全員入れると思います」
「それなら良かった。有紗案内をお願いできるかな?」
「分かりました。それでは案内をしますね」
「お! 部屋までくれるのかありがたいな!」
ギリギリだった。
元々信者たちでそれなりの部屋の数を使っていたから、残っていたのは少なかった。ただ、全員は入れそうで良かった。
「じゃあアルべノートくん、食料の確認をお願いしていいかな。 一野も八神も倒れてて手伝える人が少ないから任せてしまう事が多いけど大丈夫かな?」
「はい! 大丈夫ですよ! バリバリやらせて貰います!」
「ありがとう。お願いね」
「はい!」
アルべノートは肉体的には疲れているが、精神的には絶好調であった。それは、教祖様の手伝いを出来るという名誉があるからである。
★
しかし、そんな状態もすぐに終わってしまう。
原因は軍人たちの乱暴さだ。
「おい、これじゃすくねぇよ!」
「酒はねぇのか!」
「布と水もってこい! 武器の手入れをしなきゃいけないんだ!」
「・・・」
軍人たちは1日立ってこの環境に慣れたのか、要求が増えてきた。それはアルべノートが思わず絶句してしまうほど。しかし、吉村様のために出来る限りの事はしなければいけない。
言われた通り、食料を持ってきたり、酒を渡したり、布と水を渡したりした。
あまりの要求の多さに、精神が疲弊してしまう。
そして、その精神が完全に折れたのが、次の日だ。
「肉が食いてぇ! もってこい!」
「酒もってこい! 女ももってこい!」
訓練されていないのではないのかと疑ってしまうほどの横暴さに、アルべノートは完全に切れた。
もしここに一野がいれば、元軍人の経験を生かして統制出来たのかも知れないが、アルべノートに出来るのは単純な暴力だ。
それも秘宝 ボックスによる質量の押し付け。
しかしボックスは本来秘匿しなければいけないんだ。だが、アルべノートは我を忘れていた。思わず、ボックスに手を差し向けるほどに。
だが、その手は寸前のところでとまる。
「アルべノートくん早く来な!」
耳にしているイヤホンから吉村の声が聞こえたからだ。我を忘れていたが、すぐに正気に戻り、走って転移門をくぐりに行くのであった。
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毎日投稿です
※援軍の数を、2000はいない→1万はいない、へ変更いたしました。それに伴い保安庁周辺の宿泊施設を使用することとなりました。




